お気楽公爵家の次男に転生したので、適当なことを言っていたら英雄扱いされてしまった。

イコ

文字の大きさ
115 / 153
第四話

暴走を見ると思うよね。

しおりを挟む
 剣闘場の地下は、静寂と緊張が入り混じっていた。

 フェスティバルの喧騒が遠ざかる中、地下闘技場の薄暗い廊下を進むと、遠くから怒号と咆哮が聞こえてきた。それはまるで、猛獣が檻の中で暴れているかのようだった。

「こりゃまた騒がしいね。バーサーカー状態ってのが、どれほど厄介なものか見せてもらおうか」

 私は軽い調子で呟きながらも、心の中では少しだけ警戒していた。一方、隣を歩くエリック兄上とバクザンは、それぞれ戦闘の準備を整えている。

「フライの兄貴、俺が先に突っ込むぜ! この拳で止めてやらぁ!」

 バクザンが拳を鳴らしながら、闘技場の扉を一気に開け放った。その先に広がっていたのは、荒れ狂う剣闘士たちの姿だった。

 バーサーカー状態とやらになった剣闘士たちは、まさに暴れ牛のようだった。目が血走り、全身が異様な赤い光を帯びている。

 全身の筋肉が盛り上がって、力が異常に増幅されているのが一目でわかる。

「おいおい、普通じゃねぇな!」

 バクザンが目の前の剣闘士の拳を受け止めると、鈍い衝撃音が地下全体に響き渡る。その衝撃だけで床がひび割れるほどだった。

「くそっ、こいつら、見かけによらず重てぇ拳だ!」

 バクザンが叫びながらも反撃に転じる。鍛え上げられた鬼人族の拳が、剣闘士の腹に叩き込まれる。だが、その一撃を受けても剣闘士はびくともしない。

「……これは予想以上だな。エリック兄上、何か手はある?」

 私が振り返ると、エリック兄上は冷静に魔法の詠唱を始めていた。

「風の刃よ、敵を切り裂け。『エア・ブレード』!」

 エリック兄上の放った風の刃が、剣闘士の周囲を切り裂き始める。だが、それでも彼らの勢いは止まらなかった。むしろ傷ついたことでさらに興奮し、暴れ方が激しくなっている。

「エリック兄上、もう少し強力な魔法はないのかい?」
「無茶を言うな、フライ! 相手は異常な力を得ている。こちらの魔力消費も計算しないと、次が続かなくなる」

 エリック兄上の魔法とバクザンの拳が奮闘するものの、剣闘士たちの力には歯が立たない。

 バクザンが吹き飛ばされ、エリック兄上の魔法が空振りに終わるたび、彼らの暴走はますます手がつけられなくなっていく。

「やれやれ……仕方ないね」

 私は軽くため息をつきながら、一歩前に出た。二人の背後で戦況を観察していたが、どうやら出番のようだ。

「ひれ伏せ!」

 無属性の重力魔法を発動させると、周囲の空気が一気に重くなり、剣闘士たちの動きが鈍くなる。空間そのものが圧縮されたかのように、彼らの体が地面に引き寄せられた。

「ぐっ……ぐおおおお!」

 剣闘士たちが苦悶の声を上げながら地面に這いつくばる。赤い光に包まれた彼らの体は、徐々に力を失っていく。

「ふぅ、やっぱりこうなると大変だね。二人とも、もう少し早く頼むよ」
「……フライ、あんな魔法を使えるなら、最初からやれと言いたいところだが……助かったよ」
「フライの兄貴、やっぱりすげぇ! 俺ももう少し頑張れたらよかったんだが……」
「いやいや、バクザン、鎖で縛ってくれ」
「はいよ!」

 私は二人に軽く微笑みかけ、剣闘士たちの様子を確認した。

「どうやら完全に捕まえたようだね」

 バーサーカー状態だった剣闘士たちは、ようやく暴走を止めた。暴れている奴らもいるが、もう眠らせるしかないよね。

 無意識のまま地面に倒れ込む姿に、私は胸をなで下ろした。

「さて、これで少しは状況が落ち着いたかな。フェル爺さんに報告しに戻ろうか」

 私がそう提案すると、エリック兄上とバクザンはそれぞれ息を整えながら頷いた。

「だが、これで終わりじゃない気がするぞ。次はもっと厄介な相手が待っているかもしれない」
「うん、それは間違いないね。でも、次の手を考えるのはその時さ。それにエリック兄さん。相手はやっちゃいけないことをしたみたいだ」
「どういうことだ?」
「僕のテリトリーを犯してきた。彼らは普通の生活ができるように元に戻るだろうか?」
「それは……」

 エリック兄上は、言葉を詰まらせる。

 異端者がしたことを、エリック兄上はただ調査をしていれば良いと思っているだけかもしれない。

 だけど、ここで生活している者たちを傷つけた。

 それはフェル爺さんが管理する者たちであり、そして、僕が楽しく過ごしているナワバリを犯したことになる。

「ハァ~僕はね。自分が罵られて、馬鹿にされてもあまり怒らないようにしているんだ。だけど、どうしても許せないことがあってね。僕の友人や知人、彼らが傷つけられたり、彼らが大切にしている物を傷つけられたら、どうしても許せないんだよ」
「フライ?」
「エリック兄上、もうこれは異端者の捜索じゃ無くなったよ」

 私は初めてここまで本気で怒っています。

「バクザン、人を集めてくれるかな?」
「おうよ!」
「異端者狩りと行こうか!」

 私はこれまで学園都市で培った人脈を使うことにした。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

転生したら遊び人だったが遊ばず修行をしていたら何故か最強の遊び人になっていた

ぐうのすけ
ファンタジー
カクヨムで先行投稿中。 遊戯遊太(25)は会社帰りにふらっとゲームセンターに入った。昔遊んだユーフォーキャッチャーを見つめながらつぶやく。 「遊んで暮らしたい」その瞬間に頭に声が響き時間が止まる。 「異世界転生に興味はありますか?」 こうして遊太は異世界転生を選択する。 異世界に転生すると最弱と言われるジョブ、遊び人に転生していた。 「最弱なんだから努力は必要だよな!」 こうして雄太は修行を開始するのだが……

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

処理中です...