お気楽公爵家の次男に転生したので、適当なことを言っていたら英雄扱いされてしまった。

イコ

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第四話

異端者たちの観察

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《side 魔神メイギス》

 広場に集まった人々の歓声が耳に心地いい。

 一番高い建物の一番高い場所で、ボクはとても楽しい光景を目の当たりにしている。

 たくさんの人々が、少年の言葉に耳を傾ける光景はとても素晴らしい。

 その光景を悠然と眺めているのは本当に楽しいことだ。

 学園都市の住民たちが、フライ・エルトールと名乗った少年の言葉に心を動かされ、彼らの熱気が、一つの塊になり結束を生み出す。

 全て美しくて、そして滑稽でたまらない。

「これが『絆』ってやつか……面白いものだね」

 ボクは軽く笑いながら呟く。少年の演説は、とても耳障りがいい。言葉の裏に真摯さがありながらも、どこか軽やかで、それが人々を惹きつけるのだろう。

「おい、メイギス。何を笑っていやがる? あの連中は俺たちを見つけようとしているんだぞ!」
「うるさいよ。バーサク」

 苛立った声が背後から聞こえて、ボクはうんざりして振り返る。

 今回の一件で、協力者と同行している魔術師であるバーサクが腕を組んでボクを睨んでいる。その目は怒りに燃えているようだった。

「そんな余裕ぶっこいてる場合じゃねえだろう。奴らが動き出したらどうするんだ?」

 彼が常に怒りを表しているのは、不安を隠すためなのだろう。バーサクなんて大層な名前を持っているくせにとても臆病な男だ。

「ふふ、バーサク。焦らなくてもいいんだよ。あのフライとかいう少年は確かに面白いけど、ボクたちに直接危害を加えるほどの力はない。むしろ、ああいう連中を観察するのは楽しいじゃないか」

 ボクは微笑みながら答えたが、バーサクは眉間に皺を寄せるばかりだ。

「お前は常に遊び感覚でやってるんじゃないだろうな?」
「遊び……か。まあ、そう思われても仕方ないかもね。でも、ボクにとってはこれが『日常』なんだよ。千年も生きているとさ、楽しいことを見つけるのも一苦労なんだよ」
「けっ! 何が魔神メイギスだ! 眉唾もんだぜ」
「君に信じてもらえなくても痛くも痒くもないけどね」

 ボクはバーサクから視線を外して、フライ少年を見る。

 聖痕も、魔術も持たない何もない少年。だけど、不思議な魅力を秘めた少年に、どこか心惹かれてしまう。

「メイギスさん……でも、本当に大丈夫なんでしょうか?」

 今度は、不安そうな声で少女が話しかけてきた。彼女の名はエフェミア。ボクたちの仲間だが、バーサクとは対照的に臆病で可愛らしい性格をしている。

「大丈夫だよ。君が心配する必要はないよ」

 ボクは彼女に優しく微笑みかけた。

「でも……学園都市の人たち、あんなに団結していて……もし私たちを見つけたら……」
「見つけられないさ。彼らには『見えないもの』を感じ取る力なんてない。ボクたちの存在は、あのフライ君にだって気づけないよ」

 そう言いながら、ボクは再び広場に目を向けた。フライ少年が手を挙げ、人々の歓声を受けながら微笑んでいる。

 彼は、まるで英雄のようだ。

「……けど、ああいう奴がいるからこそ、時代は動く。ふふ、本当に何度見ても面白いんだ」
「何が面白いんだよ? あいつらは俺たちの邪魔をするだけのガキだろうが!」

 バーサクが苛立たしげに声を上げるが、ボクは気にも留めない。むしろ、その苛立ちが可笑しくて、つい笑ってしまう。

「ガキ……ね。確かに若いけど、フライ君には何か特別なものを感じるんだよね。ボクと同じで『千年』を生きることはないだろうけど、それでも彼の輝きは一瞬でも強烈だ。眩しいよね、ああいう存在って」
「メイギスさん、それって……」

 エフェミアが不安そうに問いかけてくる。彼女は、フライ君も、聖痕や魔術に選ばれた者ではないかと不安に思っているんだろうね。

 だけど、それは違う。彼は至って平凡で、普通の人だ。

「違うよ。ボクたちはとは違う。平凡で、普通の子供だよ。ただの興味だよ、エフェミア。それに、彼らがどうやってこの街を守ろうとするのか、それを見届けるのは悪くない。魔導士では、魔術師を止めることはできない。それは君たちがよくわかっているんじゃないかな? 暴走のバーサク。短命のエフェミア」

 ボクは二人の魔術名を口にしながら、再び笑みを浮かべる。

 広場では、フライが演説を終えて、立ち去っていくところだった。彼の周囲に集まった人々の顔には、不安と希望が入り混じっている。

 だが、フライという少年の言葉が希望を生み出していることは間違いない。

「さあ、僕たちもそろそろ次の計画を進めようか?」

 そう言うと、バーサクは舌打ちをしながら立ち上がり、エフェミアは小さく頷いた。

 二人は空へと姿を消して、存在がなくなる。最後にボクも空へと溶け込む。

「フライ・エルトール……君がどれだけ輝こうとも、それを打ち消す力がボクたちにはあるんだよ。だから、楽しませておくれ。どうか、ボクたちを退屈させないでね」

 ボクはそう呟きながら、静かにその場を後にした。

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