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第四話
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《side 魔神メイギス》
魔力媒体の一部を失ったことが、こんなにも心地いいとは思わなかった。
「はは! 凄いなぁ~凄いよ。フライ!」
ボクは身震いするほどの歓喜を覚えていた。
「千年生きていると、たまにこんなにもボクを楽しませてくれる子が現れる。あぁ~フライ。君が欲しくなっちゃったな」
フライ・エルトール。
彼は確かにただの人間だが、こちらの手の内を読んでいるように、状況を操り、こちらの計画を逆手に取ってきた。
魔塔の調査員を囮にして、誘導したつもりが、彼の仕掛けた罠に絡め取られたの。
「ふふ、フライ君は本当に面白いね。うわ~今度はどうやって遊ぼうかな?」
ボクは薄暗い倉庫の一角で、媒体の一部が奪われた事実を反芻しながら微笑む。それが悔しいかと問われれば、答えは否だ。むしろ、彼の機転に心が踊る。
「おい、メイギス! 笑ってる場合かよ!」
バーサクが苛立ちを隠さずに叫ぶ。その姿はいつも以上に険しく、魔力が無駄に漏れ出している。
「なんでそんな余裕でいられるんだ!? 媒体の一部を奪われたんだぞ! これじゃ、次の計画が全部台無しだ!」
「台無し? ふふ、それは違うよ、バーサク。むしろ、これで次がもっと楽しくなるじゃないか」
ボクは飄々とした口調で答える。彼の怒りが爆発するのを感じながらも、どうでもいい。だって、彼はいつも怒っているから、普段通りだ。
「ふざけんな! お前が飄々としてるせいで、俺たちの計画がどんどんズレてるんだ! どうやって責任を取るつもりだ?」
「責任? ズレてる? 違うよ、バーサク。それは君が結果だけを求めすぎてるからだ。ボクにとって、計画が思い通りに進まないことも、一つの楽しみなんだよ。それに魔術の実験なんていつでも可能だ。何よりも世界を滅ぼすことなんて、いつでもできる。だけど、世界の中で宝物を見つけることはなかなかできることじゃないんだよ」
ボクの言葉が理解できない様子で、バーサクの顔がさらに険しくなる。拳を震わせながら、彼はボクを睨みつけた。
「もういい。お前には付き合いきれねぇ。俺は別行動を取る!」
「別行動?」
「そうだ。奴らを叩き潰すために、俺は俺のやり方でやる。お前ののんびりした遊びにはついていけねぇよ」
バーサクの目には怒りだけでなく、どこか諦めの色が見え隠れしていた。それがまた可笑しくて、ボクは思わず肩をすくめる。
「いいよ、バーサク。好きにしたらいい。でも、その大雑把なやり方が君を追い詰めることになるかもしれないね」
「黙れ!」
バーサクは吐き捨てるように言い、倉庫を出て行った。その背中には焦燥感と苛立ちが滲んでいた。彼はまだまだ若いね。研究にばかり没頭していると、世界が狭くなる一方だ。
「メイギス様……私、どうすれば……」
次に声をかけてきたのは、エフェミアだった。彼女の目には不安が映り、落ち着きのない手つきがその動揺を物語っている。
「私、こんな状況には耐えられません。ほとぼりが冷めるまで、身を隠してもいいですか?」
「もちろんだよ、エフェミア。君が無理をする必要はない。むしろ、今は身を潜めて、状況が落ち着くのを待つのが賢明だね」
彼女がそう言い出すのは予想していた。
エフェミアは力を持ちながらも、戦いを好むタイプではない。臆病な性格で彼女はその力を隠しながら静かに生きる方が得意だ。
今回はボクの弟子として協力してくれたが、本来の彼女はひっそりと森の端で小屋を建てて暮らすような物静かな女の子だ。
「ありがとうございます、メイギス様……私、しばらくどこかで身を隠します」
そう言って、エフェミアも姿を消す。これで、ボクたち三人は完全に別行動を取ることになった。
「さて、これでボク一人か、だけど、本来は元々ボク一人だった。ふふ、バーサクの計画が面白そうだから乗ったけど、フライ君を見つけてしまったからね。バーサクなんてどうでもいいや」
静かになった倉庫の中で、ボクはぽつりと呟く。
「でも、フライ君と遊ぶためにどうすればいいかな? うーん、ずっとウザ絡みしていても彼に嫌われてしまうね」
ボクは薄く笑いながら、頭の中で次の一手を練る。
今回の中心はバーサクだ。
彼が単独行動を行えば、その破壊力は計り知れない。暴走が引き起こす混乱を利用しない手はない。
「バーサクが街中で暴れれば、フライ君たちの注意はそちらに向くだろう。そうなれば、ボクはもっとフライ君の活躍が見れるわけだ。ふふ、いいねぇ~これで行こう」
ボクは台座の残骸に手を触れ、奪われなかった媒体の一部を確認する。それを使えば、まだ多くのことができる。
「フライ君……君がどれだけ賢くても、ボクを止めるのは簡単じゃないよ。でも、君がボクをどうやって楽しませてくれるか、それだけが今の興味の対象だよ」
ボクは倉庫を後にし、静かに街の中へと溶け込んだ。
バーサクの暴走。
それを利用して、ボクは、フライ君との次なるゲームをさらに面白くするつもりだ。
魔力媒体の一部を失ったことが、こんなにも心地いいとは思わなかった。
「はは! 凄いなぁ~凄いよ。フライ!」
ボクは身震いするほどの歓喜を覚えていた。
「千年生きていると、たまにこんなにもボクを楽しませてくれる子が現れる。あぁ~フライ。君が欲しくなっちゃったな」
フライ・エルトール。
彼は確かにただの人間だが、こちらの手の内を読んでいるように、状況を操り、こちらの計画を逆手に取ってきた。
魔塔の調査員を囮にして、誘導したつもりが、彼の仕掛けた罠に絡め取られたの。
「ふふ、フライ君は本当に面白いね。うわ~今度はどうやって遊ぼうかな?」
ボクは薄暗い倉庫の一角で、媒体の一部が奪われた事実を反芻しながら微笑む。それが悔しいかと問われれば、答えは否だ。むしろ、彼の機転に心が踊る。
「おい、メイギス! 笑ってる場合かよ!」
バーサクが苛立ちを隠さずに叫ぶ。その姿はいつも以上に険しく、魔力が無駄に漏れ出している。
「なんでそんな余裕でいられるんだ!? 媒体の一部を奪われたんだぞ! これじゃ、次の計画が全部台無しだ!」
「台無し? ふふ、それは違うよ、バーサク。むしろ、これで次がもっと楽しくなるじゃないか」
ボクは飄々とした口調で答える。彼の怒りが爆発するのを感じながらも、どうでもいい。だって、彼はいつも怒っているから、普段通りだ。
「ふざけんな! お前が飄々としてるせいで、俺たちの計画がどんどんズレてるんだ! どうやって責任を取るつもりだ?」
「責任? ズレてる? 違うよ、バーサク。それは君が結果だけを求めすぎてるからだ。ボクにとって、計画が思い通りに進まないことも、一つの楽しみなんだよ。それに魔術の実験なんていつでも可能だ。何よりも世界を滅ぼすことなんて、いつでもできる。だけど、世界の中で宝物を見つけることはなかなかできることじゃないんだよ」
ボクの言葉が理解できない様子で、バーサクの顔がさらに険しくなる。拳を震わせながら、彼はボクを睨みつけた。
「もういい。お前には付き合いきれねぇ。俺は別行動を取る!」
「別行動?」
「そうだ。奴らを叩き潰すために、俺は俺のやり方でやる。お前ののんびりした遊びにはついていけねぇよ」
バーサクの目には怒りだけでなく、どこか諦めの色が見え隠れしていた。それがまた可笑しくて、ボクは思わず肩をすくめる。
「いいよ、バーサク。好きにしたらいい。でも、その大雑把なやり方が君を追い詰めることになるかもしれないね」
「黙れ!」
バーサクは吐き捨てるように言い、倉庫を出て行った。その背中には焦燥感と苛立ちが滲んでいた。彼はまだまだ若いね。研究にばかり没頭していると、世界が狭くなる一方だ。
「メイギス様……私、どうすれば……」
次に声をかけてきたのは、エフェミアだった。彼女の目には不安が映り、落ち着きのない手つきがその動揺を物語っている。
「私、こんな状況には耐えられません。ほとぼりが冷めるまで、身を隠してもいいですか?」
「もちろんだよ、エフェミア。君が無理をする必要はない。むしろ、今は身を潜めて、状況が落ち着くのを待つのが賢明だね」
彼女がそう言い出すのは予想していた。
エフェミアは力を持ちながらも、戦いを好むタイプではない。臆病な性格で彼女はその力を隠しながら静かに生きる方が得意だ。
今回はボクの弟子として協力してくれたが、本来の彼女はひっそりと森の端で小屋を建てて暮らすような物静かな女の子だ。
「ありがとうございます、メイギス様……私、しばらくどこかで身を隠します」
そう言って、エフェミアも姿を消す。これで、ボクたち三人は完全に別行動を取ることになった。
「さて、これでボク一人か、だけど、本来は元々ボク一人だった。ふふ、バーサクの計画が面白そうだから乗ったけど、フライ君を見つけてしまったからね。バーサクなんてどうでもいいや」
静かになった倉庫の中で、ボクはぽつりと呟く。
「でも、フライ君と遊ぶためにどうすればいいかな? うーん、ずっとウザ絡みしていても彼に嫌われてしまうね」
ボクは薄く笑いながら、頭の中で次の一手を練る。
今回の中心はバーサクだ。
彼が単独行動を行えば、その破壊力は計り知れない。暴走が引き起こす混乱を利用しない手はない。
「バーサクが街中で暴れれば、フライ君たちの注意はそちらに向くだろう。そうなれば、ボクはもっとフライ君の活躍が見れるわけだ。ふふ、いいねぇ~これで行こう」
ボクは台座の残骸に手を触れ、奪われなかった媒体の一部を確認する。それを使えば、まだ多くのことができる。
「フライ君……君がどれだけ賢くても、ボクを止めるのは簡単じゃないよ。でも、君がボクをどうやって楽しませてくれるか、それだけが今の興味の対象だよ」
ボクは倉庫を後にし、静かに街の中へと溶け込んだ。
バーサクの暴走。
それを利用して、ボクは、フライ君との次なるゲームをさらに面白くするつもりだ。
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