お気楽公爵家の次男に転生したので、適当なことを言っていたら英雄扱いされてしまった。

イコ

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第四話

兄にしてやられた!

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《side フライ・エルトール》

 破壊と混乱に見舞われた街が、住民たちの手で復興して、元の賑やかな姿を取り戻した。建物の被害は少なかったことや、魔法の力が大きいことを物語っている。

 魔法はやっぱり凄い。自分でも使えるのだが、やっぱり前世の記憶がある私からすると奇跡のようなことだった。

 広場の噴水は再びその優雅な姿を見せ、通りには笑顔を取り戻した人々が溢れている。

 そして今日、フェスティバルの最終日を迎えていた。

 私も特別審査員として表彰式に参加することになっている。

「さぁ、皆さん! こんにちは! 実況ちゃんです! これからフェスティバルで最も活躍した選手たちを表彰していきます!」

 実況ちゃんの声が響き渡る中、広場には多くの人々が集まっていた。復興の感謝と共に、フェスティバルを盛り上げた者たちへの祝福の時間だ。

「まずは、今回の大変な状況に街を復興した人たちを讃えたいと思います!」

 特別賞として選ばれたのは、街を支えた人々だった。

「まず、鍛冶屋ローさん! 彼の武器と防具は、多くの人々の命を守りました! また復興の際にはみんなを鼓舞していただきました」

 私の声を聞いてくれたおじさんは、ローさんなんだね。

 ローおじいさんが大きな手で帽子を取り、照れくさそうに頭を掻いている。

「次に、リズさん! 彼女の料理は多くの人々の心を癒しました!」

 おばちゃんはリズっていうんだね。明るい笑顔で手を振りながら、広場の人々に応える。

「自由同盟のリーダー、フリーダムさん! 彼は竜騎士として率先して瓦礫の撤去や人々の救済を行ってくれました。彼の大胆な行動と仲間たちの支援が、この都市の復興に大きく貢献しました!」

 フリーダムは得意げに胸を張り、仲間たちと肩を組んで笑っている。

 そこからは各競技の優秀者が表彰されていく。

 バクザンやロガン王子。アクアリス王女などが表彰されて終わりを迎えた。

 フェスティバルの幕が静かに閉じる頃、私はエリック兄上を魔塔へ送り出すために、学園都市の門まで見送りに行った。

「フライ、色々と世話をかけたな」
「ううん、僕も今回は色々と考えさせる出来事だったよ」

 魔塔から盗まれた媒体は数を減らしながらも戻ってきたために、エリック兄上の調査は終わりを迎えた。

 メイギスの行方は完全に分からなくなり、一方で眠っているバーサクが今回の実行犯として捕らえられた。後の始末はエリック兄上に委ねる。

「フライ、よくやってくれたな」

 兄上はいつもの厳格な表情を崩さずに言ったが、その言葉の端々には優しさが滲んでいる。

「兄上も本当にありがとう。魔塔での研究、頑張ってね」
「ふむ、そのことでお前に話がある」
「話?」
「そうだ。私は魔塔に一生を捧げたいと思っている」
「えっ?」
「だから、公爵家をフライに譲りたい。すでに父上には伝えてある」
「エリザベートは?! 彼女は兄上の婚約者だよ?」

 兄上は、イタズラが成功したような顔で笑った。

「昔から、エリザベート嬢はお前のことを想っていたぞ。気づかなかったのか? 私もフライならば公爵家を任せられる。改めてエリザベート嬢の婚約者として、公爵家のことを頼む」
「なっ!? 僕はエリック兄上の代替品じゃ!」
「昔から、言っているだろ。お前は凄いやつ。今回の一件でもフライがほとんど解決したようなものだ。それで確信が持てた。フライよ。エルトール公爵家当主になるのはお前に任せる!」

 エリック兄上は清々しい顔をしていた。いや、公爵家の当主になれって突然すぎない? 私は道楽お気楽貴族だってしていたのに、領民だって不安に思っちゃうよ!

「お前が何を心配しているのか知らないが、お前は昔から私の中で一番優秀で大切な弟だ。エリザベート嬢のこと、エルトール公爵家のこと頼んだぞ。弟よ」
「エリック兄さん!」
「ははははは! 私がフライにしてやったのは初めてだな。こんなにも痛快なのか、また何か考えておこう」

 そう言ってこちらの言葉を聞く気もないまま、エリック兄上は学園都市を後にした。背中を見送りながら、私は軽く手を振って苦笑いを浮かべた。

「大人になって性格が変わりすぎじゃないかい? 兄上」

 本当に公爵を継ぐか分からないが、とりあえず大きな騒動は終わり、フェスティバルも完全に終わりを迎えた。

 学園都市は冬休みに入る。道楽貴族としては、そのまま学園都市で過ごすつもりだったけど、兄上の言葉を聞いて、私は領地に帰る準備を整えた。

 学園都市の屋敷は、そのまま維持することにした。屋敷には、トアや鼠人族のミミたちに管理を任せることにする。

「トア、屋敷をよろしく頼むよ。研究は続けていいから、何か困ったことがあればすぐに連絡して」
「かしこまりました、フライ様。屋敷は私にお任せください」

 私はミミに視線を向けた。

「ミミ、仲間たちは大丈夫かい?」
「フライ様が奇跡みたいな回復魔法を使ってくれたから大大丈夫っちゅ」
「そうか」

 私は地下迷宮の魔物たちをみて、鼠人族の安否を最優先したが、彼らは迷宮で生活しているだけあり、ちゃんと生き残っていた。


 学園都市を離れるにあたって、バクザンやノクスもまた、新たな道を選んだ。

「フライさん、俺はバクザンさんの元で修行をしたいと思います。まだまだ力不足ですから」
「そうか、ノクス。それなら君の好きな道を進むといい。ただ、あまり無茶はするなよ」
「はい、必ず強くなって戻ってきます!」

 ノクスと別れた私とエリザベート、アイリーン、ジュリア、レンナの四人は、エルトール領地への帰還の旅が始まった。

 馬車の中で、ジュリアが窓の外を見ながらぽつりと呟く。

「学園都市、賑やかで楽しかったのす」
「来年にはまた戻ってくるわ」
「そうだね。また戻ってくるよ。あそこは僕たちの大事な場所だから」

 エリザベートが笑みを浮かべながら答える。

「フライ様、これからも色々な場所で色々な経験を積みましょう。学園都市も、また来年にはさらに素晴らしい場所になるはずですわ」
「そうだね」

 馬車が揺れる中、私はふと学園都市での半年間を振り返った。

「あっという間だったな……」

 同級生たちとの出会い、異端者との戦い、住民たちとの交流、フェスティバルの喧騒。すべてが目まぐるしく過ぎ去ったけれど、どれもかけがえのない経験だった。

 学園都市で出会った人々や出来事が、私の中にしっかりと刻まれている。

「フライ様、どうなさいました?」

 隣に座るアイリーンが、心配そうに尋ねてくる。

「いや、ちょっと考え事をしていただけさ。学園都市での半年間って、思った以上に充実してたなって」
「本当に、そうですね」

 彼女の言葉に頷きながら、私は馬車の窓から広がる風景を眺めた。

「さぁ、領地に帰ったらまた新しいことが始まるね」

 そう呟いた私の胸には、新たな冒険への期待が膨らんでいた。
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