お気楽公爵家の次男に転生したので、適当なことを言っていたら英雄扱いされてしまった。

イコ

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第五章

血の宴

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《side ブライド・スレイヤー・ハーケンス》

 脳裏に、何度も父上や兄上の顔が浮かんでは、我を恨むような声をあげる。

「お前が皇帝など向いていない!」
「お前は反逆者だ!」

 だが、そんなことは関係ない。皇帝とは、ただ座するだけの存在ではない。
 

 凡庸、いや、無能であった兄ではこれから訪れる乱世に帝国を導くことはできない。

 支配し、導き、そして、世界を正しき形に作り変える存在でなくてはならない。

 王座の間の天井に吊るされた巨大なシャンデリアが、冷たい光を放つ。
 
 その下には、今宵の客人たちが揃っていた。

 帝国の公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵。全ての貴族が、この場に集められている。

 ……いや、正確には、「集めさせた」のだ。

 この宴が、ただの祝宴でないことは、誰の目にも明らかだった。

 会場の重苦しい沈黙。貴族たちの硬直した表情。恐怖に満ちた瞳。

 そうだ、恐れるがいい。

 我は王座に深く腰掛け、目の前の貴族たちを眺めた。

 何人が今夜生き延びるだろうか?
 何人が、処刑されるだろうか?

 この宴が、帝国に巣食うゴミを一掃する場になることは、最初から決まっていたのだから。

 長く貴族として在籍していた事で、貴族としてのプライドばかりが高くなり、実力のない者まで貴族として蔓延るようになる。

 我はゆっくりと立ち上がる。

 貴族たちが固唾を飲んだのが分かった。

 無理もない。ここにいる者たちの多くは、帝位簒奪を「反逆」と思っているのだから。

 だが、それは違う。

 我は帝国を「正しき形」に導いただけだ。

 腐敗した王族を排除し、無能な貴族たちを清算し、帝国を本来あるべき姿へと再構築する。

 それを「反逆」と呼ぶならば、好きに呼べばいい。

 だが、その言葉を口にする者は、この場から一人も生きて帰れまいがな。

「皆の者、よく集まったな」

 我はゆっくりと口を開く。

 会場に張り詰めた空気が、さらに重くなる。

「本日、我が帝国を導く者となったことを、正式にここに宣言する」

 貴族たちは、誰一人として言葉を発しない。
 ただ、沈黙のまま、我の言葉を聞いている。

「我が帝国に仕える者たちよ。我は貴様らに選択の機会を与えよう」

 我は片手を掲げると、ゆっくりと指を折った。

「我に忠誠を誓い、この帝国の礎となるか」

 指が一本折れた。

「あるいは、愚かにも反逆を試み、ここで血を流して果てるか」

 もう一本折れた。

「我に従う者は、右へ」

 そう告げると、数名の貴族たちが恐る恐る右へと歩み寄った。
 その表情は恐怖と絶望に満ちていたが、彼らの選択は正しい。
 従う者には、未来がある。

「そして……我に背く愚か者どもは、左へ」

 誰も動かない。

 だが、我はすでに知っている。誰が「裏切り者」なのかを、我は手を振り上げ、近衛兵に合図を送る。

 瞬間、会場の扉が開き、拘束された貴族たちが引きずり込まれてきた。
 彼らは悲鳴を上げ、絶望的な表情を浮かべながら、床に膝をついた。

「そ、そんな……っ! 陛下、お待ちください! 私は、決して……!」

 叫ぶ男の声を遮るように、我の手が振り下ろされる。

 瞬間――近衛兵の剣が振り抜かれ、男の首が宙を舞った。

 血飛沫が床に広がり、宴会場の赤い絨毯をさらに鮮やかに染める。

「反逆の罪は、死をもって償え」

 我の冷たい声が響く。

 処刑が始まった。

 次々と貴族たちが、処刑台へと引きずり出される。

「嫌だ、嫌だああああ!!」
「助けてくれ! 私は……!」
「私の家族だけは! どうかお慈悲を……!」

 無駄だ。我は、そう決めたのだから。

 貴族の断末魔の悲鳴が響き渡る。会場の空気が、狂気と死の臭いに満ちていく。

 我は、その様子を静かに見つめていた。

「……帝国に無能は不要」

 そう呟いた瞬間、残る者たちは、膝をつき、我に忠誠を誓った。

「……陛下に忠誠を誓います」
「どうか、我らをお許しください」
「陛下のために、この身を捧げます……!」

 この瞬間、帝国の支配は、完全なものとなった。

 ♢

 処刑が終わると、我は静かに立ち上がり、貴族たちを見渡す。

「さて、帝国は、次なる段階へ進む」

 我は冷たく、しかし力強い声で告げる。

「帝国は、大陸を統一する」

 会場が静まり返った。

 何人かの貴族が驚愕し、何人かが愕然とし、何人かが息を呑んだ。

「帝国は、もはや狭い国ではない。我の手によって、腐敗を取り除き、純粋なる強者たちのみが残った」

 我は鋭い目で彼らを見据える。

「この力を、帝国だけに留める理由があるか?」

 誰も答えない。

 我はゆっくりと玉座に戻り、座る。

「この帝国を、大陸の頂点へと導く」

 我の言葉が、重く響く。

「異を唱える者はいるか?」

 沈黙。

 だが、一人の貴族が、震える声で立ち上がった。

「陛下、それは……無謀では……」

 瞬間。

 我は剣を抜き、男の喉元に突きつけた。

「無謀か?」

 貴族は息を呑み、青ざめながら首を振る。

「そ、そんなことは……」
「ならば、口を閉じろ」

 我は剣を振り下ろす。男の首が落ち、貴族たちが息を呑む。

「帝国の意志は、我の意志だ」

 我は冷たく言い放つ。

「この世界の覇権は、帝国が握る。異論は認めん」

 そう言い放った瞬間、貴族たちは、一斉に頭を垂れた。

 この日、帝国は大陸統一への第一歩を踏み出した。

 そして、我はそれを導く皇帝となる。

「さあ、宴を続けよう」

 狂気の宴は、まだ終わらない。

 だが、そんな我の前に一番最初に挨拶にやってきたのは、フライ・エルトールだった。

「ブライド皇帝に、ご挨拶申し上げます。帝国が公爵フライ・エルトールが皇帝即位をお祝い申し上げます!」

 真っ先にやってきたフライは、我の即位を声高々に宣言した。
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