幸せの在処

紅子

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お父様たちが国王陛下に謁見して間もなく、この国に各国の国王や代表が召集された。それよりも早く、お母様が伯父様聖王陛下に小説かというくらい分厚い手紙を認め送っていたから、これを好機と入城前に、伯父様は非公式で我が家を訪れた。お目当ては、私とハルクである。

「パーレンヴィアよ。久しいなぁ。身体はよくなったのか?」

「ご無沙汰しております、伯父様。身体は、ご覧の通りですわ」

私は、その場でクルリと回って見せた。

「こちらのハルクールと魔力を交換することで、お互いに健康を保っております」

「お初にお目にかかります、ハルクール・ザカルヴィアと申します。お見知りおきください」

「よきよき。ハルクールと言ったな。私のことは伯父様と呼ぶといい。パーレンヴィアのことを頼むぞ」

「はい。ありがとうございます。パールのことは必ず守ります、伯父上」

「よきよき。ところで、パールよ。ハルシオンルー様に拝謁いたしたとか。どのようなお方であった?」

興味津々なようだ。目が輝いている。

「お優しそうな美青年であらせられましたわ。神殿にあるご神体よりも素敵な方でしてよ」

「そうかそうか。では、ご神体を改めねばならんな」

作り直すってこと?

「無駄ですわ、伯父様。だって、あの神々しさを表現しきるのは無理ですもの。今のままで充分」

「それもそうであるな。しかし、ルオンお母様から本のような手紙が届いたのには驚いたぞ。あのように分厚いのに、父上と母上以外には見せてはならぬとあったから、難儀したわ。余りに突飛ゆえ、如何したものかと思案しておったら、此度の召集。疑ってはおらんが、誠なのだな?」

「あのような罰当たりな嘘は申しませんわ、お兄様」

「そうよな。お前たちは、強制的に再構築されると考えているのだな?」

「はい。試金石となる娘の言動から、知らぬ間に再構築が為されるとは思えません」

「そうか。・・・・その娘が、明日居なくなるならどうだ?」

ハルクが手を挙げた。みんなの視線がハルクへと向く。

「発言をお許しください」

「許す。今は、家族の団らん故、自由に発言するがよい」

「ありがとうございます。試金石となるその娘が居る居ないは既に関係ありません。『聖なる力を宿す者』が存在した事実が重要なのです。その娘が明日消えて、その事実が周知されても、疑心暗鬼に囚われ、或いは、不信感が募り、或いは、彼女を手に入れたかった者たちの憤懣が寄せ集まり、争いへと発展するとハルシオンルー様はおっしゃいました」

「賽は投げられてしまったのですわ、伯父様」

私は目を伏せた。ハルシオンルー様のお心遣いを無にした私たちに、選択肢など既にないのだ。

「うぅむ。ハァ。ハルシオンルー様が娘を排除せぬのに、我々が手出しをすることは許されぬ。この世界の再構築は、覆ることはないのだな。それにしても、相応しい世界へと送るとは言うが、とどのつまりは、この世界からの追放・放逐であろう?一体何がハルシオンルー様のお心をそこまで追い詰めたのか」

ああ、うん。はっきり言えば、その通り。追放なんだよね。理由を知ってる私とハルクですら、理不尽だなって思うのだから、困惑や憤りを感じる人も多いはずだ。でも、それは自業自得というもの。

「近隣諸国ではありませんが、軍備を増強して、虎視眈々と機会を覗っている国も幾つかあるようですから、そういったことの積み重ねの結果なのでしょう」

こういう者たちを放置したのは私たち自身。逆らえないからと見て見ぬふりをしたのは私たち自身。ハルシオンルー様の世界を蔑ろにしたのは私たち自身なのだ。消滅ではなく、再構築してもらえるだけ有り難いのだと肝に銘じるべきだ。

「ハルシオンルー様は、この世界を本当に愛おしく思ってくださっていますから。人だけでなく、この世界の全てを。それが踏み躙られ、蹂躙されるのは、我が身を削られる思いなのでしょうね」

何となくしんみりとしてしまった。








「ところで、伯父様のスキルは何ですか?」

「そう言えば、スキルのことも記してあったな。私のスキルは、執筆と平定だ。カランコッド王太子は、たしか声楽と交渉であったな」

うわ~。前世なら、カラン兄様売れっ子歌手間違いなしだわ。王子様然とした外見だけでもモデルとして活躍するでしょうねぇ。

「伯父様、折角ですし、このことを執筆して、出版社に売り込んだら如何です?周知にも役立ちますし、きっと儲かりますわよ」

「はは。パールは突拍子もないことを言う。ルオンお母様にそっくりだ。しかし、いい案だな。聖王などしておっても、あと何年かすれば平民なのだ。みながスキルを研鑽出来るように整えながら、私も自身のスキルを磨くとしよう」

「あら、お兄様。わたくしはパールのようなびっくり箱ではありませんわよ。一緒に料理を習っているのですが、料理長も驚く手法を用いますのよ。それがまた美味しいのですから不思議なのですわ」

「なんと!その方らが料理とな」

これを機に、重たかった空気が一転した。さすがに人を従える者というべきか。

「ええ。掃除もメイドに教えて貰っておりますわ。新たな魔法の使い方をパールが開発して、とても楽に出来ますのよ。メイドたちも喜んでおりますわ。新しい世界がどうなるか分かりませんもの。出来ることは覚えるつもりでおりますわ」

「私も精進せねばならんな。して、オットザイルお父様はどうなのだ?」

「私は、パールに与えた離れの一角に小さな果樹園を作りました。希望する使用人とその家族には、スキルに合わせた道具や場所の提供、勤務地の変更など、仕事の合間や休日を増やして学ばせております。騎士が減るリスクは、パーレンヴィアとハルクールの発明した結界の魔道具で補うことで凌いでおります」

「ほう、それはどういった物だ?簡単に増産できるのか?」

ハルクの開発した魔道具を興味津々で聞き出し、和やかな中一頻りお喋りをした後、伯父様は我が家を後にした。

この後、この世界の行く末について、国民に発表が為された。他国では、発表しないところもあったようだが、近隣諸国や商会から噂が流れ、不信感を募らせた貴族や民たちは、自らの手で事実を得て広めていった。暴動が起こっているところもあるが、ハルシオンルー様のお心を真摯に受け止めた者たちは、スキルの研鑽に励み、自らと向き合っている。例え、この世界に居られなくても、より生きやすい世界へと向かえるように。

一方、リリナフや神殿の神官や巫女たち、そして、王族や特権を無くしたくない貴族たちは・・・・。
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