山賊な騎士団長は子にゃんこを溺愛する

紅子

文字の大きさ
2 / 22

子にゃんこ、餌付けされる

しおりを挟む
うにゃ~ん、ここ、ぬくぬく。極楽極楽♪

コロンと寝返りを・・・・
気持ちよく、うにょーんと伸びを・・・・

出来ない・・・・。

狭い。狭すぎる。

「びに″ゃー!」
何だっていうのよ!

聴こえてきた鳴き声に自分でビックリした。

「にゃ?」
何?

そうだった。私、子ネコだった。
ここどこ?

「お、目が覚めたか?」

ん?と声の聞こえてきた方に目を向けると、凶悪な顔がこちらを覗き込んでいる。ぶわっと毛が逆立ったが、すぐに誰か思い出した。

ああ、山賊の団長だ。
ここは、団長のポケットの中だったわ。

ひょこんとポケットから顔を出して外を窺うと、焚き火が焚かれ、そこに大きな鍋が吊るされている。辺りは薄暗く、もう陽が沈みかける時間になっていた。私が師匠に変化の魔法をかけられたのが、昼前だから・・・・。

「みゃあ。みや~ん」
いい匂いがする。お腹すいた。

匂いにつられて、ポケットから飛び出そうとジャンプしたところで山賊に捕まった。見事な空中キャッチだ。

「こら。おとなしくしてろ。火に向かって飛ぶやつがあるか。危ないだろう」

きゅう~ぐるぐる

「なんだ、腹が減ってるのか?ちょっと待ってろ」

団長は、私を再びポケットに収納すると、鍋に入っているスープを器に入れてくれた。わたしは、すぐさまポケットから肩にはい登り、器に向けてダ~イブ!・・・・する前に、団長に捕獲された。

「待てと言ってるだろう?まだ、熱いぞ。そら、食え」

地面に私とスープの入った器を置いてくれた。湯気の立つそれに顔を突っ込む。

「びゃ!」
あっつ!

身体の毛が逆立った。

「だから、熱いと言ったろ?」

呆れ顔だけど、団長さんは、いい人だ。山賊みたいだけど、いい人だ。器を持ち上げて、ふうふうと冷ましてくれた。私は、それを彼の足に前足をかけて待っている。

「もういいぞ」

今度は、恐る恐るペロッと舐めてみた。うん、ちょうどいい温度だ。お腹が空きすぎていた私はあっという間に平らげた。

足りない・・・・。

頭で器を押して団長の足元まで運んだ。

「みゃー♪」
もっと♪

「ん?足りないのか?」

「みゃー♪」
足りない♪ 

団長はいい人だ。山賊みたいだけど、いい人だ。大切なことだから、何度でも言おう。顔は怖いけど、いい人だ。器を持ち上げて、おかわりを注いで、ふうふうと冷ましてくれた。

「ほら、食べていいぞ」

「みゃ♪」
はーい♪

団長の冷ましてくれたスープに顔を突っ込んだ・・・・はずなのに・・・・。あれ?ない!

「団長。子ネコにこんな味の濃いスープを飲ませないでください。それに、確か、ネコに玉葱は毒だったはずですよ?」

私のご飯の器は、無情にもあの私を救ってくれた青年騎士が私からは遠く離れたところで掲げ持っていた。

「びみゃー!みゃ!みゃ!みゃ!ブミャア!」
返せー!私のご飯!返さんか!

ジャンプしても届かない。足をよじ登ろうとして、射殺さんばかりの顔をした団長に逆さ吊りにされた。

「何!おい、フィー、さっき食べた分吐き出せ!」

うっぷ。やめて・・・・。吐くから。

咄嗟に団長の手を引っ掻いてしまった、力一杯。これは、仕方ないよね?女の子の尊厳を守るためだもん。

「いっ」

「団長・・・・。手荒な真似をしない。本当に死にますよ?それにしても、フィーってなんです?」

「この子ネコの名前だ。さっき既に一杯食べてるからな。毒なら吐き出させないと死ぬだろう?」

「・・・・食べたんですか?普通、動物は毒になるものは敏感に判りますから、嫌がると思うんですが・・・・」

「そうなのか?うまそうに食ってたぞ?何を食べさせればいい?」

「これとか」

渡されたのは、かったい干し肉。

要らない!
食べられるわけないじゃん、こんな固いの。
そのスープを寄越せ。

ぷんとそっぽを向くと不思議そうな顔をされた。

「変わった子ネコですね。うちの姉が飼ってるネコは喜んで食べますよ?塩気が強いですから、塩抜きしたものですけど」

私は再びあの器を狙って、青年騎士の足をよじ登った。

「フィーは、これが食べたいのか?」

やっとの思いでひざまで登った時、団長は青年騎士からその器を受け取って、私の鼻先に持ってきた。私は、その好機に喜び勇んで器にびよーんとダイブした、つもりだった。まあ、例のごとく団長に阻まれたけど・・・・。

「びみゃー、み、み、み」
ご飯ー、ちょーだい。

情けない顔で耳をへにょんと垂らして団長を見上げた。口許には、涎が垂れている。

「か、可愛すぎる。食べたいんだな?よしよし。今やるからな」

団長は、私を下ろすと目の前に器を置いてくれた。「いいの?」と団長さんを見上げると、凶悪な顔で笑っているつもりなのか頬が攣くついている。

「みゃ♪」
はーい♪

やっと2杯目にありつくことが出来た私は、しっかりと全部お腹に納めて、大きく膨らんだお腹を上に転がった。そんな私を見て、「こいつ、本当にネコなのか?」と青年騎士は呆れ顔だ。

「どう見てもネコだろう?うさぎには見えん」

「そういう意味じゃなくて!お腹を見せて転がる動物はいません!!!気を許した相手ならともかく!」

「なら、気を許したんだろ?」

違いますよぉ。食べ過ぎて苦しいだけです。それに、私、ネコじゃなくて魔女だもん。ネコの性質なんて知らな~い。

「そんなわけないでしょ!警戒心が無さすぎですよ、このネコ。気を付けないと、拐われますよ?」

「・・・・。そうだな。警戒心は必要だな。フィー、俺以外のやつについて行くなよ?お前は可愛いからな。高く売れそうだ。食べ物につられるなよ?」

フィー?なんで団長は、私の名前を知ってるの?

「んにゃぁ~?」
フィーって何?

「いい返事だ」
違ーう!

「さて、明日も早いからな。見張りの奴以外は就寝だ。ランツと各隊の隊長は報告と明日の予定の確認だ」

「「「「うーす」」」」

一宿一飯の恩義はある。いくら魔女と言えど礼儀を欠いてはいけない。という事で、この辺り一帯に結界を張っておきましょうかね。私達がここを離れたら消えるようにしておこう。前、消し忘れて師匠に大目玉を喰らったんだよね。あのときは本当に辛かった。

では、団長のポケットに戻って寛ぎましょうか。

私が自主的にポケットに収納されると、入るのを見た団長は、多分だが、それはそれは嬉しそうに笑った、のだと思う。だって、またもあの頬が痙攣しただけの凶悪な顔だったんだもん。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

氷狼陛下のお茶会と溺愛は比例しない!フェンリル様と会話できるようになったらオプションがついてました!

屋月 トム伽
恋愛
ディティーリア国の末王女のフィリ―ネは、社交なども出させてもらえず、王宮の離れで軟禁同様にひっそりと育っていた。そして、18歳になると大国フェンヴィルム国の陛下に嫁ぐことになった。 どこにいても変わらない。それどころかやっと外に出られるのだと思い、フェンヴィルム国の陛下フェリクスのもとへと行くと、彼はフィリ―ネを「よく来てくれた」と迎え入れてくれた。 そんなフィリ―ネに、フェリクスは毎日一緒にお茶をして欲しいと頼んでくる。 そんなある日フェリクスの幻獣フェンリルに出会う。話相手のいないフィリ―ネはフェンリルと話がしたくて「心を通わせたい」とフェンリルに願う。 望んだとおりフェンリルと言葉が通じるようになったが、フェンリルの幻獣士フェリクスにまで異変が起きてしまい……お互いの心の声が聞こえるようになってしまった。 心の声が聞こえるのは、フェンリル様だけで十分なのですが! ※あらすじは時々書き直します!

『階段対策会議(※恋愛)――年上騎士団長の健康管理が過剰です』

星乃和花
恋愛
【完結済:全9話】 経理兼給仕のクラリスは、騎士団で働くただの事務員――のはずだった。 なのに、年上で情緒に欠ける騎士団長グラントにある日突然こう言われる。 「君は転倒する可能性がある。――健康管理対象にする」 階段対策会議、動線の変更、手をつなぐのは転倒防止、ストール支給は防寒対策。 全部合理的、全部正しい。……正しいはずなのに! 「頬が赤い。必要だ」 「君を、大事にしたい」 真顔で“強い言葉”を投下してくる団長に、乙女心を隠すクラリスの心拍数は業務超過。 さらに副団長ローレンは胃薬片手に「恋は会議にするな!!」と絶叫中!? これは健康管理?それとも恋愛? ――答え合わせの前に、まず“階段(概念)“をご確認ください。

【完結】余命半年の元聖女ですが、最期くらい騎士団長に恋をしてもいいですか?

金森しのぶ
恋愛
神の声を聞く奇跡を失い、命の灯が消えかけた元・聖女エルフィア。 余命半年の宣告を受け、静かに神殿を去った彼女が望んだのは、誰にも知られず、人のために最後の時間を使うこと――。 しかし運命は、彼女を再び戦場へと導く。 かつて命を賭して彼女を守った騎士団長、レオン・アルヴァースとの再会。 偽名で身を隠しながら、彼のそばで治療師見習いとして働く日々。 笑顔と優しさ、そして少しずつ重なる想い。 だけど彼女には、もう未来がない。 「これは、人生で最初で最後の恋でした。――でもそれは、永遠になりました。」 静かな余生を願った元聖女と、彼女を愛した騎士団長が紡ぐ、切なくて、温かくて、泣ける恋物語。 余命×再会×片恋から始まる、ほっこりじんわり異世界ラブストーリー。

【完結】たれ耳うさぎの伯爵令嬢は、王宮魔術師様のお気に入り

楠結衣
恋愛
華やかな卒業パーティーのホール、一人ため息を飲み込むソフィア。 たれ耳うさぎ獣人であり、伯爵家令嬢のソフィアは、学園の噂に悩まされていた。 婚約者のアレックスは、聖女と呼ばれる美少女と婚約をするという。そんな中、見せつけるように、揃いの色のドレスを身につけた聖女がアレックスにエスコートされてやってくる。 しかし、ソフィアがアレックスに対して不満を言うことはなかった。 なぜなら、アレックスが聖女と結婚を誓う魔術を使っているのを偶然見てしまったから。 せめて、婚約破棄される瞬間は、アレックスのお気に入りだったたれ耳が、可愛く見えるように願うソフィア。 「ソフィーの耳は、ふわふわで気持ちいいね」 「ソフィーはどれだけ僕を夢中にさせたいのかな……」 かつて掛けられた甘い言葉の数々が、ソフィアの胸を締め付ける。 執着していたアレックスの真意とは?ソフィアの初恋の行方は?! 見た目に自信のない伯爵令嬢と、伯爵令嬢のたれ耳をこよなく愛する見た目は余裕のある大人、中身はちょっぴり変態な先生兼、王宮魔術師の溺愛ハッピーエンドストーリーです。 *全16話+番外編の予定です *あまあです(ざまあはありません) *2023.2.9ホットランキング4位 ありがとうございます♪

【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました

22時完結
恋愛
貴族の家に生まれたものの、特別な才能もなく、家の中でも空気のような存在だったセシリア。 華やかな社交界には興味もないし、政略結婚の道具にされるのも嫌。だからこそ、目立たず、慎ましく生きるのが一番——。 そう思っていたのに、なぜか冷酷無比と名高いディートハルト公爵に目をつけられてしまった!? 「……なぜ私なんですか?」 「君は実に興味深い。そんなふうにおとなしくしていると、余計に手を伸ばしたくなる」 ーーそんなこと言われても困ります! 目立たずモブとして生きたいのに、公爵様はなぜか私を執拗に追いかけてくる。 しかも、いつの間にか甘やかされ、独占欲丸出しで迫られる日々……!? 「君は俺のものだ。他の誰にも渡すつもりはない」 逃げても逃げても追いかけてくる腹黒公爵様から、私は無事にモブ人生を送れるのでしょうか……!?

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです

大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。 「俺は子どもみたいな女は好きではない」 ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。 ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。 ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。 何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!? 貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。

処理中です...