1 / 12
プロローグ~私の祈り~
しおりを挟む
「僕はこの戦で手柄をたてて、必ず君のことを認めてもらう。身分なんて関係ないんだ。君は僕の半身なんだから。だからどうか待っていて」
あなたに抱き締められ、明日、戦地へと向かうあなたの無事を祈る。私とあなたは秘密の関係だから大っぴらに見送ることはできない。
「はい。ずっとお待ちしております。どうぞこれをお持ちください」
あなたの無事を願って刺したクリスタルリリーの刺繍を施したハンカチを渡した。クリスタルリリーの花言葉は「願いは叶う」だ。
「ありがとう。必ず君のもとに帰って来るよ」
それが最後の会話だった。
彼が戦地に赴いてから1年が経った。その間、私は毎日、神殿に足を運び彼の無事を祈り続けた。そして・・・・。
「漸く戦が終わったなぁ」
「第2王子殿下が敵の将を討ち取ったとか」
「だが、相討ちだっていうじゃないか。生死の境目をさ迷ってるって聞いたよ」
そんな噂が国中で囁かれるようになった。実際、王宮でいち文官として働く私の父は医務官たちが慌ただしくしていると食事の席で話していた。第2王子殿下は、戦場に近い公爵家で治療を受けているそうだ。私は祈る。“どうか、ご無事で”と。
それから3月。第2王子殿下は奇跡的に命をとりとめ、後遺症もなく王宮に帰って来たと父から聞いた。彼から私のもとに連絡はない。私は祈る。ただただ彼の無事を。
そして・・・・。半年後、第2王子殿下は公爵家の令嬢と婚約を発表した。生死の境目をさ迷う第2王子殿下を献身的に看病したのだとか。彼女の祈りが第2王子殿下を救ったともっぱらの噂だ。そしてもうひとつ。父がポツリと呟いた何気ない一言。「第2王子殿下はあの怪我で記憶をなくしたらしい」
結局、私が彼に会うことは2度となかった。毎日神殿に通い、熱心に祈る私に神官長が声を掛けてくれた。「神殿の巫女にならないか?」と。神殿に勤めるということは、神の花嫁となることを意味する。私はそれを受けた。いつまでも家にはいられない。何処かに嫁ぐことは考えられなかった。私が巫女であり続けた間、神殿に寄付をし続けてくれた両親や兄、甥には感謝してもしきれない。
神殿での生活は穏やかで静かなものだった。私は神殿に誘ってくれた神官長と時々お茶を一緒に飲む仲になった。強面で屈強な体格の神官長は、その外見に似合わず、とても繊細で物静かな人だった。ほとんど会話もないけれど、心落ち着く時間だった。が、その神官長も流行り病で呆気なく神の御元へ行ってしまった。
「君は僕の半身なんだから。だからどうか待っていて」
私は今日も祈る。“あなたが幸せでありますように”と。あなたは私のもとには帰っては来ないと知っていても私は待ち続ける。私はあなたの半身だから。
あなたに抱き締められ、明日、戦地へと向かうあなたの無事を祈る。私とあなたは秘密の関係だから大っぴらに見送ることはできない。
「はい。ずっとお待ちしております。どうぞこれをお持ちください」
あなたの無事を願って刺したクリスタルリリーの刺繍を施したハンカチを渡した。クリスタルリリーの花言葉は「願いは叶う」だ。
「ありがとう。必ず君のもとに帰って来るよ」
それが最後の会話だった。
彼が戦地に赴いてから1年が経った。その間、私は毎日、神殿に足を運び彼の無事を祈り続けた。そして・・・・。
「漸く戦が終わったなぁ」
「第2王子殿下が敵の将を討ち取ったとか」
「だが、相討ちだっていうじゃないか。生死の境目をさ迷ってるって聞いたよ」
そんな噂が国中で囁かれるようになった。実際、王宮でいち文官として働く私の父は医務官たちが慌ただしくしていると食事の席で話していた。第2王子殿下は、戦場に近い公爵家で治療を受けているそうだ。私は祈る。“どうか、ご無事で”と。
それから3月。第2王子殿下は奇跡的に命をとりとめ、後遺症もなく王宮に帰って来たと父から聞いた。彼から私のもとに連絡はない。私は祈る。ただただ彼の無事を。
そして・・・・。半年後、第2王子殿下は公爵家の令嬢と婚約を発表した。生死の境目をさ迷う第2王子殿下を献身的に看病したのだとか。彼女の祈りが第2王子殿下を救ったともっぱらの噂だ。そしてもうひとつ。父がポツリと呟いた何気ない一言。「第2王子殿下はあの怪我で記憶をなくしたらしい」
結局、私が彼に会うことは2度となかった。毎日神殿に通い、熱心に祈る私に神官長が声を掛けてくれた。「神殿の巫女にならないか?」と。神殿に勤めるということは、神の花嫁となることを意味する。私はそれを受けた。いつまでも家にはいられない。何処かに嫁ぐことは考えられなかった。私が巫女であり続けた間、神殿に寄付をし続けてくれた両親や兄、甥には感謝してもしきれない。
神殿での生活は穏やかで静かなものだった。私は神殿に誘ってくれた神官長と時々お茶を一緒に飲む仲になった。強面で屈強な体格の神官長は、その外見に似合わず、とても繊細で物静かな人だった。ほとんど会話もないけれど、心落ち着く時間だった。が、その神官長も流行り病で呆気なく神の御元へ行ってしまった。
「君は僕の半身なんだから。だからどうか待っていて」
私は今日も祈る。“あなたが幸せでありますように”と。あなたは私のもとには帰っては来ないと知っていても私は待ち続ける。私はあなたの半身だから。
474
あなたにおすすめの小説
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
番認定された王女は愛さない
青葉めいこ
恋愛
世界最強の帝国の統治者、竜帝は、よりによって爬虫類が生理的に駄目な弱小国の王女リーヴァを番認定し求婚してきた。
人間であるリーヴァには番という概念がなく相愛の婚約者シグルズもいる。何より、本性が爬虫類もどきの竜帝を絶対に愛せない。
けれど、リーヴァの本心を無視して竜帝との結婚を決められてしまう。
竜帝と結婚するくらいなら死を選ぼうとするリーヴァにシグルスはある提案をしてきた。
番を否定する意図はありません。
小説家になろうにも投稿しています。
忌むべき番
藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」
メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。
彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。
※ 8/4 誤字修正しました。
※ なろうにも投稿しています。
今、私は幸せなの。ほっといて
青葉めいこ
ファンタジー
王族特有の色彩を持たない無能な王子をサポートするために婚約した公爵令嬢の私。初対面から王子に悪態を吐かれていたので、いつか必ず婚約を破談にすると決意していた。
卒業式のパーティーで、ある告白(告発?)をし、望み通り婚約は破談となり修道女になった。
そんな私の元に、元婚約者やら弟やらが訪ねてくる。
「今、私は幸せなの。ほっといて」
小説家になろうにも投稿しています。
さようなら、たった一人の妹。私、あなたが本当に大嫌いだったわ
青葉めいこ
恋愛
おいしい?
よかったわ。あなたがこの世で飲む最後のお茶になるからね。
※番(つがい)を否定する意図はありません。
小説家になろうにも投稿しています。
番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
番など、今さら不要である
池家乃あひる
恋愛
前作「番など、御免こうむる」の後日談です。
任務を終え、無事に国に戻ってきたセリカ。愛しいダーリンと再会し、屋敷でお茶をしている平和な一時。
その和やかな光景を壊したのは、他でもないセリカ自身であった。
「そういえば、私の番に会ったぞ」
※バカップルならぬバカ夫婦が、ただイチャイチャしているだけの話になります。
※前回は恋愛要素が低かったのでヒューマンドラマで設定いたしましたが、今回はイチャついているだけなので恋愛ジャンルで登録しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる