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野外実習②
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それぞれのパーティー毎に森を目指します。街の東門から出て徒歩で4時間のところにある巨大な森が実習場所です。この森は、不可思議の森と呼ばれ、森の場所毎に魔獣の強さが違います。森の奥に行けば行くほど強く狂暴になります。今回私たちが踏み入れていい場所は、森の表層域まで。目印に赤い紐が至るところに結ばれていますから、間違って奥に入り込むことはないでしょう。
「4年生の課題は?俺たちに出来ることってありそう?」
森へ向かう道中にランスロット様がクレイグ殿下たち4年生に尋ねました。私たちに課題があるのに4年生にないわけがありません。
「出来ることだらけだよ。私たちの課題は、君たち1年生を無事に学園に帰すこと、だからね」
要するに、無茶をしてくれるなということでしょう。
「それは、課題になるのか?」
ランスロット様は首を傾げています。
「あ~・・・・」
レオナルド様は気づいたようです。
「お兄様、大丈夫かしら?」
「「あ~・・・・」」
ランスロット様もミリーナ様も納得されたようです。
「あなた方のクラスは比較的優秀ですが、他のクラスはそうでもないんですよ。Cクラスになるとお互いに力量不足なこともあり、我々4年生も気が気じゃありません」
「その点、Dクラスはまだマシですわね。平民が多いとはいえ、その分実践の実力はBクラスより高いですし、助け合いの重要性を理解しておりますから」
私たちのクラスは、第2王子以外は毎週、訓練しているだけあって、相応に実力がついてきました。皆さん、冒険者のランクもDに上がっています。私たちは、先日Cになりました。休日にコツコツと依頼を受け続けた甲斐があるというものです。
「今年のAクラスは実力者揃いだよね。噂に聞くところによると、騎士団も魔法師団も医療師団までも期待しているらしいよ」
「あら、外交団もですわよ。交渉事に長けた方が幾人か見受けられますわ」
ああ、ドミニク様とキャロライン様、マイカル様のことでしょう。あの3人は、人当たりが良いこともありますが、闇属性をフル活用して様々な情報を集め楽しんでいます。外交団より諜報部の方が合ってる気がしないでもないですけど、闇属性持ちの彼らに影を使った情報収集を教えたところすっかり嵌まってしまい、いろいろ独自の方法を編み出しているようです。同じ闇属性持ちには気づかれることもあるので注意が必要なことも伝えてあります。
そんな雑談も交えつつ、周りを警戒しながら森へと歩を進めます。4年生から警戒するポイントや周りの状況から分かることなどを教えて貰い、実に充実した道のりです。
「ここが今回使う森への入り口だよ。他にも幾つかあったでしょ?みんな近いところから入ろうとするからここまではなかなか来ないんだ」
成る程。入り口を教えてくれるのに入ろうとしなかったのはそういう事情でしたか。ここは一番近くにあった入り口から1時間は離れているでしょう。
「取り合いにならなくていいな」
「そこまで考えている方は少ないですわね。わたくしたち4年生がそういったことを教えたくても、聞いていただけないとどうしようもありません」
あっ、これはひょっとして第2王子のパーティーのことを言っていますか?もしかしたら、この辺りでお兄様達と待ち合わせをしていたのかもしれません。第2王子のお守りはお兄様達だけでは、きっと荷が重いでしょう。ですが、・・・・。
「アレク、大変だな。俺、同じパーティーでなくて本当によかったよ」
ランスロット様のポツリと呟いたこの言葉は、全員の心境を表すものです。その証拠に皆さん頷いています。
「いないなら、仕方ないですね。こうなることも想定内です。さっ、先に進みましょう」
キャメロン様に促されて、私たちは森に入りました。この森へは初めて足を踏み入れます。普段の依頼では遠すぎるのと西の森や南の森で事足りるため、わざわざ来ることはありません。
「うわあ~♪」
思わず、感嘆の声を漏らしてしまいました。
「凄い」
「これは・・・・」
「!・・・・」
レオナルド様やランスロット様、ミリーナ様もこの光景に息を飲んでいます。なぜなら、目の前には色とりどりの木の実や果物が鈴なりにぶら下がり、芳しい芳香を放っているからです。森の外側からは、木々の緑や紅葉した葉しか見えませんでした。
「実りの季節だからね。特にこの入り口は外からは見えないし、殆どの入り口のすぐそばは採り尽くされてるからなかなかお目にかかれないんだ」
「春は色とりどりの花で溢れていますわ。ハニービーやシュガーアントの季節でもありますわね」
「ちょっとだけ採集しても?」
私はダメかなぁと思いつつ、遠慮がちにクレイグ殿下に許可を求めました。
「なら、ここでお昼にしよう。1時間くらい休憩して出発だ。その間に採集するといい」
クスクス笑うクレイグ殿下の許可を得て、皆さんがお昼の準備をするなか、私は嬉々として果物を採り、どんどんと自前のマジックバッグに放り込みました。お昼は食堂で用意されたサンドイッチが手渡されていますから、それとここにある果物です。
私たちの創ったマジックバッグは、容量無制限。両親から貰ったマジックバッグは、屋敷ひとつ分ですから、この程度なら採り尽くしても大丈夫なはずです。レオナルド様は私の考えに気づいて呆れた顔をしていますが、そんなこと構っていられません。美味しいお菓子のためには自重など何処かに消えてなくなりました。レオナルド様が「あまり採りすぎるとバレるよ?」と苦笑しつつも止めることなく、然り気無く私を皆さんの視界からかばってくるあたり、擽ったくてほっこりします。
「そろそろ行こうか」
クレイグ殿下に促され、お昼のサンドイッチにも果物狩りにも満足した私はそこを後にしました。
「今までですと水属性を持つ者がパーティーにいない場合は、水場を探すことから始めるのですが、今は無属性で出せますから飲み水程度なら困りません。まあ、料理をするなら足りませんがね。どちらにしても我々のパーティーは殿下、ロッテ、マリア、ミリーが持っていますから、このまま課題の魔獣を探して、陽が傾く前に野営の場所を決めましょう。薬草は、その辺に生えていますから、見つけたら採取してください」
「「はーい♪」」
課題の体力草や紫紺草、課題にはない沢山の薬草を採取しつつ、魔獣を探します。ですが、なかなか現れてはくれません。見つけるのは、ポイズンビーの幼体やフルーツビートル、シルバーウルフの群ればかりです。
「あ、栗がありますわ」
今度は、ミリーナ様の顔が嬉しそうに輝いています。ミリーナ様は栗がお好きなようです。分かりやすい。
「拾うのは構わないけど、自分達の課題も忘れないでよ?」
「「はーい♪」」
私もミリーナ様もここぞとばかりに鞄一杯に、と言ってもマジックバッグですが、栗を拾いました。近くに生えていた体力草と魔力草を採取することも忘れません。
「おかしいな。この辺りは、ブラックウルフとオークの縄張りなんだけどなぁ・・・・」
どうやら、クレイグ殿下たちは、私たちを課題に適した場所に案内してくれていたようです。
「あ。もう少し南にそれらしい反応があります」
「本当だ」
私とレオナルド様の魔力探知にブラックウルフの群れとこそより少し奥にオークが引っ掛かりました。魔力の質が違うので、私とレオナルド様、それにお兄様は、1度出会ったことのある魔獣なら種類まで判別できます。
「どうやら、少しズレたみたいだね。早速君たちの見つけた場所に行こうか」
歩くこと10分。私たちは、予定通りブラックウルフの群れと遭遇しました。
「4年生の課題は?俺たちに出来ることってありそう?」
森へ向かう道中にランスロット様がクレイグ殿下たち4年生に尋ねました。私たちに課題があるのに4年生にないわけがありません。
「出来ることだらけだよ。私たちの課題は、君たち1年生を無事に学園に帰すこと、だからね」
要するに、無茶をしてくれるなということでしょう。
「それは、課題になるのか?」
ランスロット様は首を傾げています。
「あ~・・・・」
レオナルド様は気づいたようです。
「お兄様、大丈夫かしら?」
「「あ~・・・・」」
ランスロット様もミリーナ様も納得されたようです。
「あなた方のクラスは比較的優秀ですが、他のクラスはそうでもないんですよ。Cクラスになるとお互いに力量不足なこともあり、我々4年生も気が気じゃありません」
「その点、Dクラスはまだマシですわね。平民が多いとはいえ、その分実践の実力はBクラスより高いですし、助け合いの重要性を理解しておりますから」
私たちのクラスは、第2王子以外は毎週、訓練しているだけあって、相応に実力がついてきました。皆さん、冒険者のランクもDに上がっています。私たちは、先日Cになりました。休日にコツコツと依頼を受け続けた甲斐があるというものです。
「今年のAクラスは実力者揃いだよね。噂に聞くところによると、騎士団も魔法師団も医療師団までも期待しているらしいよ」
「あら、外交団もですわよ。交渉事に長けた方が幾人か見受けられますわ」
ああ、ドミニク様とキャロライン様、マイカル様のことでしょう。あの3人は、人当たりが良いこともありますが、闇属性をフル活用して様々な情報を集め楽しんでいます。外交団より諜報部の方が合ってる気がしないでもないですけど、闇属性持ちの彼らに影を使った情報収集を教えたところすっかり嵌まってしまい、いろいろ独自の方法を編み出しているようです。同じ闇属性持ちには気づかれることもあるので注意が必要なことも伝えてあります。
そんな雑談も交えつつ、周りを警戒しながら森へと歩を進めます。4年生から警戒するポイントや周りの状況から分かることなどを教えて貰い、実に充実した道のりです。
「ここが今回使う森への入り口だよ。他にも幾つかあったでしょ?みんな近いところから入ろうとするからここまではなかなか来ないんだ」
成る程。入り口を教えてくれるのに入ろうとしなかったのはそういう事情でしたか。ここは一番近くにあった入り口から1時間は離れているでしょう。
「取り合いにならなくていいな」
「そこまで考えている方は少ないですわね。わたくしたち4年生がそういったことを教えたくても、聞いていただけないとどうしようもありません」
あっ、これはひょっとして第2王子のパーティーのことを言っていますか?もしかしたら、この辺りでお兄様達と待ち合わせをしていたのかもしれません。第2王子のお守りはお兄様達だけでは、きっと荷が重いでしょう。ですが、・・・・。
「アレク、大変だな。俺、同じパーティーでなくて本当によかったよ」
ランスロット様のポツリと呟いたこの言葉は、全員の心境を表すものです。その証拠に皆さん頷いています。
「いないなら、仕方ないですね。こうなることも想定内です。さっ、先に進みましょう」
キャメロン様に促されて、私たちは森に入りました。この森へは初めて足を踏み入れます。普段の依頼では遠すぎるのと西の森や南の森で事足りるため、わざわざ来ることはありません。
「うわあ~♪」
思わず、感嘆の声を漏らしてしまいました。
「凄い」
「これは・・・・」
「!・・・・」
レオナルド様やランスロット様、ミリーナ様もこの光景に息を飲んでいます。なぜなら、目の前には色とりどりの木の実や果物が鈴なりにぶら下がり、芳しい芳香を放っているからです。森の外側からは、木々の緑や紅葉した葉しか見えませんでした。
「実りの季節だからね。特にこの入り口は外からは見えないし、殆どの入り口のすぐそばは採り尽くされてるからなかなかお目にかかれないんだ」
「春は色とりどりの花で溢れていますわ。ハニービーやシュガーアントの季節でもありますわね」
「ちょっとだけ採集しても?」
私はダメかなぁと思いつつ、遠慮がちにクレイグ殿下に許可を求めました。
「なら、ここでお昼にしよう。1時間くらい休憩して出発だ。その間に採集するといい」
クスクス笑うクレイグ殿下の許可を得て、皆さんがお昼の準備をするなか、私は嬉々として果物を採り、どんどんと自前のマジックバッグに放り込みました。お昼は食堂で用意されたサンドイッチが手渡されていますから、それとここにある果物です。
私たちの創ったマジックバッグは、容量無制限。両親から貰ったマジックバッグは、屋敷ひとつ分ですから、この程度なら採り尽くしても大丈夫なはずです。レオナルド様は私の考えに気づいて呆れた顔をしていますが、そんなこと構っていられません。美味しいお菓子のためには自重など何処かに消えてなくなりました。レオナルド様が「あまり採りすぎるとバレるよ?」と苦笑しつつも止めることなく、然り気無く私を皆さんの視界からかばってくるあたり、擽ったくてほっこりします。
「そろそろ行こうか」
クレイグ殿下に促され、お昼のサンドイッチにも果物狩りにも満足した私はそこを後にしました。
「今までですと水属性を持つ者がパーティーにいない場合は、水場を探すことから始めるのですが、今は無属性で出せますから飲み水程度なら困りません。まあ、料理をするなら足りませんがね。どちらにしても我々のパーティーは殿下、ロッテ、マリア、ミリーが持っていますから、このまま課題の魔獣を探して、陽が傾く前に野営の場所を決めましょう。薬草は、その辺に生えていますから、見つけたら採取してください」
「「はーい♪」」
課題の体力草や紫紺草、課題にはない沢山の薬草を採取しつつ、魔獣を探します。ですが、なかなか現れてはくれません。見つけるのは、ポイズンビーの幼体やフルーツビートル、シルバーウルフの群ればかりです。
「あ、栗がありますわ」
今度は、ミリーナ様の顔が嬉しそうに輝いています。ミリーナ様は栗がお好きなようです。分かりやすい。
「拾うのは構わないけど、自分達の課題も忘れないでよ?」
「「はーい♪」」
私もミリーナ様もここぞとばかりに鞄一杯に、と言ってもマジックバッグですが、栗を拾いました。近くに生えていた体力草と魔力草を採取することも忘れません。
「おかしいな。この辺りは、ブラックウルフとオークの縄張りなんだけどなぁ・・・・」
どうやら、クレイグ殿下たちは、私たちを課題に適した場所に案内してくれていたようです。
「あ。もう少し南にそれらしい反応があります」
「本当だ」
私とレオナルド様の魔力探知にブラックウルフの群れとこそより少し奥にオークが引っ掛かりました。魔力の質が違うので、私とレオナルド様、それにお兄様は、1度出会ったことのある魔獣なら種類まで判別できます。
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