ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子

文字の大きさ
17 / 45

【閑話】世界が回り始めた日

しおりを挟む
私は、レオナルド・バーデンテール公爵子息。今年14歳になった。今は、主に貴族が通う学園に在籍している。私の人生が変わったのは5歳の時。たかだか14歳で人生を語りたくはないが、あの日、フォンテーヌ公爵令嬢の誕生日パーティーでロッテに出逢った日、私の人生が色付き、生きることが楽しくなったのは事実だ。それまでの私は、両親の言われるままに何となく生きているだけのぼんやりとした子供だった。何にも興味を抱けず、いつもどこか上の空だった気がする。

「レオナルド。今日はお前と同じ年の筆頭公爵家のご息女の誕生日パーティーだ。公爵も夫人もとても可愛がっていると聞く。懇意になれとは言わない。だが、しっかり挨拶して粗相のないようにな?」

「あなた、5歳になったばかりのレオナルドにそんな話をしても理解できませんわよ?レオ、いつものように挨拶すれば大丈夫よ」

生真面目な父は、私が5歳だからといって、曖昧な説明はしなかった。当時の私に理解できたか?と言われれば、そこは母に軍配が上がる。

そして、誕生日パーティーの会場で主役であるフォンテーヌ公爵令嬢を目にした時、私の中で何かが弾けた。パーンッ!と音が聞こえそうなくらいの衝撃が身体を駆け抜けた。その時から私を取り巻く世界が鮮明になり、はっきりとした輪郭を持って廻り始めたのだ。

ふっくらとした柔らかい笑顔。濃抹茶色の艶やかな髪。一般的に枯草色と言われる瞳は光の加減なのか時折虹色に瞬き、母の身に付けるどんな宝石よりも綺麗だと、ずっと見ていたいと思わせた。ちゃんと挨拶できたかどうかも覚えていない。私はただひたすら、シャルロット嬢から目が離せなかった。だから、母が驚きと共にニンマリとしていたことには全く気づかなかった。

その後、第2王子殿下が彼女に酷い言葉を投げつけたときには、ぶん殴ってやりたい衝動に駆られ、拳を握り締めてどうにか耐えた。ここでそれをしてはいけないことくらい5歳児でも分かる。シャルロット嬢が笑顔で許していたから耐えられたのだ。

そのシャルロット嬢とちゃんと話をしたくて、近くをうろうろとして様子を見ていた。そして、第1王子殿下やシャルロット嬢の兄君と親しくなりたい令嬢たちに突き飛ばされたシャルロット嬢を助けて、その下敷きになった。私の上に乗ったまま、アワアワと慌てるシャルロット嬢は本当に可愛かった。無意識に握ったふにふにした手も離しがたかった。少しでも彼女の隣に居たくて、彼女の兄上が何も言わないことを理由にパーティーの間中ずっと隣を陣取っていた。そして、無意識に周りを威嚇していたらしい。帰り際、彼女の兄上アレックス様に「レオが一緒に威嚇してくれて助かったよ。お蔭でロッテが楽しく過ごせた」と言われたときは何のことかよく分からなかったけど、確かに威嚇していたと今なら分かる。


「父様。僕、強くなりたい。だから魔法と剣術を教えてほしいんだ」

パーティーから帰る馬車の中で、私は父にすぐにそう頼んだ。父は驚いたように私を見たが、今までの私のことを考えれば当然の反応だ。

「あらあら、シャルロット嬢のことがそんなに気に入ったのかしら?」

パーティーで私のことをずっと見ていた母は、正しく私の心情を読み取り、含み笑いで核心をついてきた。

「え!そうなのか?!」

こくんと首を縦に振った。父は唖然としているだけだが、母は・・・・。

「今日のパーティーの様子を見ていれば分かるわ。でも、魔法と剣術だけではダメね。頭の中も鍛えなきゃ。シャルロット嬢は守れないわよ?」

「頭の中?」

「そう。頭の中。お勉強をして、たくさんのことを知って、自分で考えることができるようになるの」

「分かった」

私は力強く頷いた。それで、シャルロット嬢を守れるなら、やらないわけがない。母の思惑など当時の私は全く気づきもせず、素直に受け入れた。実際、間違ってはいなかったのだが・・・・。

「フフフ。本当に気に入ってるのね。シャルロット嬢に仮婚約の打診をしてみる?」

「仮婚約?」

「そう。男の子はね・・・・」

母は私に魔力の相性について教えてくれた。そして、8歳になってそれを自分で感じるようになるまで待つか、それとも、そんなこと関係なく申し込むか、と尋ねられた。

「それを申し込むとどうなるの?」

「そうね。シャルロット嬢が『いいよ』って言えば、大人になって父様と母様みたいにずっと一緒にいられるようになるわよ?」

「申し込む。8歳まで待てないよ。それに、8歳になると他にもたくさん申し込まれるよね?」

「フフフ。そうね。申し込むだけなら早い方がいいわ。でも、シャルロット嬢からごめんなさいって言われても、怒ったらダメよ?」

「うん。その時は8歳になるまでにもっと強くなって、また申し込むよ」

「いい子ね。あなた、と言うことですから、すぐに申し込んでくださいな」

「あ、ああ。だが、ウッ・・・・。いや、分かった。申し込むくらいはすぐにできる」

こうして、運よくロッテの仮婚約者に収まった私は3日と開けず、ロッテに会いに行った。最高相性だったことは、幸運としか言いようがない。ロッテのお蔭で、魔法も剣術も勉強も、どれも普通でない域に達している。ロッテはこれくらいは普通だと思っていた・・・・いや、未だに思っているようだが、普通なことの方がないくらいだ。

目下の私のイライラは、第2王子がロッテに矢鱈とちょっかいをかけてくることとロッテがどんどんと綺麗になっていくことだ。あれだけ露骨に粉をかけられているにも関わらず、当の本人は嫌がらせだと思っている辺り、ざまぁ、だ。あの5歳の言葉がロッテの中では全てだ。だが、お蔭で他の連中もロッテの魅力に気づき始めてしまった。だから、人前でロッテを愛でることは止めてやれない。子供の頃からの習慣でもある。未だに恥ずかしがるロッテは、可愛いを通り越して、私の理性を崩壊しにかかってくるから気が抜けない。ああ、早く17歳にならないかなぁ。

「愛しているよ、ロッテ。私のお姫様」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

治療係ですが、公爵令息様がものすごく懐いて困る~私、男装しているだけで、女性です!~

百門一新
恋愛
男装姿で旅をしていたエリザは、長期滞在してしまった異国の王都で【赤い魔法使い(男)】と呼ばれることに。職業は完全に誤解なのだが、そのせいで女性恐怖症の公爵令息の治療係に……!?「待って。私、女なんですけども」しかも公爵令息の騎士様、なぜかものすごい懐いてきて…!? 男装の魔法使い(職業誤解)×女性が大の苦手のはずなのに、ロックオンして攻めに転じたらぐいぐいいく騎士様!? ※小説家になろう様、ベリーズカフェ様、カクヨム様にも掲載しています。

異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない

紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。 完結済み。全19話。 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

【完結】公爵令嬢の育て方~平民の私が殿下から溺愛されるいわれはないので、ポーション開発に励みます。

buchi
恋愛
ポーシャは、平民の特待生として貴族の学園に入学したが、容貌もパッとしなければ魔力もなさそうと蔑視の対象に。それなのに、入学早々、第二王子のルーカス殿下はポーシャのことを婚約者と呼んで付きまとう。デロ甘・辛辣・溺愛・鈍感コメディ(?)。殿下の一方通行がかわいそう。ポジティブで金儲けに熱心なポーシャは、殿下を無視して自分の道を突き進む。がんばれ、殿下! がんばれ、ポーシャ? 

【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。 ※本編完結しました。 ※後日談を更新中です。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

【完結】転生白豚令嬢☆前世を思い出したので、ブラコンではいられません!

白雨 音
恋愛
エリザ=デュランド伯爵令嬢は、学院入学時に転倒し、頭を打った事で前世を思い出し、 《ここ》が嘗て好きだった小説の世界と似ている事に気付いた。 しかも自分は、義兄への恋を拗らせ、ヒロインを貶める為に悪役令嬢に加担した挙句、 義兄と無理心中バッドエンドを迎えるモブ令嬢だった! バッドエンドを回避する為、義兄への恋心は捨て去る事にし、 前世の推しである悪役令嬢の弟エミリアンに狙いを定めるも、義兄は気に入らない様で…??  異世界転生:恋愛 ※魔法無し  《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆

ヒロインに躱されて落ちていく途中で悪役令嬢に転生したのを思い出しました。時遅く断罪・追放されて、冒険者になろうとしたら護衛騎士に馬鹿にされ

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
第二回ドリコムメディア大賞一次選考通過作品。 ドジな公爵令嬢キャサリンは憎き聖女を王宮の大階段から突き落とそうとして、躱されて、死のダイブをしてしまった。そして、その瞬間、前世の記憶を取り戻したのだ。 そして、黒服の神様にこの異世界小説の世界の中に悪役令嬢として転移させられたことを思い出したのだ。でも、こんな時に思いしてもどうするのよ! しかし、キャサリンは何とか、チートスキルを見つけ出して命だけはなんとか助かるのだ。しかし、それから断罪が始まってはかない抵抗をするも隣国に追放させられてしまう。 「でも、良いわ。私はこのチートスキルで隣国で冒険者として生きて行くのよ」そのキャサリンを白い目で見る護衛騎士との冒険者生活が今始まる。 冒険者がどんなものか全く知らない公爵令嬢とそれに仕方なしに付き合わされる最強騎士の恋愛物語になるはずです。でも、その騎士も訳アリで…。ハッピーエンドはお約束。毎日更新目指して頑張ります。 皆様のお陰でHOTランキング第4位になりました。有難うございます。 小説家になろう、カクヨムでも連載中です。

処理中です...