ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子

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トラブルの原因は・・・・

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夕食も食べ終え、デザートのお汁粉とお茶の時間。

「さて、どこから話そうか」

そう言って話し出したクレイグ殿下ですが、なかなか衝撃的な内容でした。さて、どうしたものでしょう。それは、明日お兄様たちと合流してから、ということになりました。

「見張りはどうする?」

「私とロッテが結界を張るから不要だけど、訓練のためにやっておく?」

「そうしよう。いつも出来る奴が居るとは限らないしね」

「では、二人一組で、ランス、殿下、私、レオの順でいかがですか?2時間ずつ、日の出と共に起床になりますから、ちょうどいいでしょう」

「分かりましたわ」

「OK」

「それでいいよ」

普段ならまだ眠るには早い時間ですが、もう陽も落ち焚き火の灯りと月明かりに照らされてはいますが、周りは真っ暗です。

「ロッテ」

レオナルド様と私はお互いにクリーンを掛け合った後、隣でコロンと横になると、毛布にしっかりとくるまれました。レオナルド様の抱き枕状態で眠りにつきます。これは小さな頃の私たちのお昼寝のスタイルです。お父様やお義父様も子供の頃からの習慣だからか、何も言うことはありませんでした。おそらく、機会を逸してしまったのだと思います。暖かい。安心して、ストンと眠ってしまいました。



「「「「「「・・・・」」」」」」

「あれは、いいのか?」

「いや・・・・まあ、いいんじゃないの?」

「ロッテは警戒心が無さすぎですわ」

「レオがいれば大丈夫ですよ」

「レオはよく平気だな。俺、尊敬する」

「あの子、いつもあんなに恥ずかしがるのに、これは平気ですのね」

「ちょっと、ボソボソとうるさい。早く寝なよ」

そんな会話にも気づかず、レオナルド様に守られてクウクウと寝息をたてていた私でした。





翌日。

見張り役を終えた私たちと辺りが明るくなったことで起き出してきた皆さんと共に朝食です。昨日ミリーナ様と下準備をしたメニューに、見張りの時に作ったジャムを添えました。おやつに食べるよう焼いたスイートイモと蒸したジャガイモも作ってあります。昼食は、パンレッドにジャムと果物を挟んだジャムサンド、オークの照り焼きサンド、オークの薄切り炒めサンド、それに野菜スープです。もちろん、騎士と魔法師のおふたりにもお渡ししましたよ。

「さて、アレクと合流しようか」

気は重いですが、放っておくわけにもいきません。溜め息を吐きたくなるのを我慢して、森の中をお兄様の待つ野営地まで急ぎました。そして、辿り着いたお兄様たちの野営地は、ピリピリとした雰囲気が漂い、何とも言えない顔の生徒たちがバラバラに朝食を摂っている最中でした。

「遅くなった」

「いや、こっちは見ての通りさ」

気まずそうな雰囲気の中、ほわほわと花でも飛びそうな浮かれた空気を纏う一組の男女が、キャッキャウフフと戯れています。

「「「「「「ハァ・・・・」」」」」」

第2王子とCクラスの少女がこのおかしな雰囲気の原因のようです。確かに空色の髪に桃色の瞳を持つ可愛らしい子ではありますが、何がどうしてあんなに親しくなったのでしょう?ともあれ、仮婚約者のエルシア様の前ですることではないですが・・・・。

「エルシア様。大丈夫ですか?」

「フフフ。大丈夫よ。昨日、この森に来る道中で、あの子のパーティーが近くにいたの。あの子、フィリップス殿下の最高相性ですって。クレマチス・シャベルテート。シャベルテート男爵の庶子だそうよ。あなたにも見せたかったわ。野外実習が始まったばかりだというのに、いきなり、あの子を捕まえて物語の王子様さながらに膝までついて仮婚約を申し込まれたのよ。一体なんの喜劇かと思いましたわ。以来あの調子で。私たちのパーティーはなんとか課題をこなしましたけど、相手のパーティーはまだのようですわ」

エルシア様は、嘲笑を浮かべていますが、そこには怒りも多分に含んでいるのが分かります。野外実習に全く協力せず、足を引っ張るのですから、腹も立ちますよね。ですが、これで自分を邪険に扱う王族との仮婚約を解消できるかもしれないのですから、我慢なさっているのでしょう。

「で、問題は解決したのか?」

「それは、僕から。あのふたり、人の話を聞かないと言うか、都合よく解釈して全くお話になりません」

エルシア様と仲のよいティンクル様の仮婚約者グレゴール様は、実に忌々しそうです。このパーティー自体、エルシア様を慮って渋々組んだのですから、グレゴール様の態度も仕方ありませんね。

「リーダーは第2王子殿下なのか?」

「いえ。そこは無理矢理ですが、僕にしてあります」

離れたところでクレイグ様とミュリアーナ王女殿下がお花畑のふたりとお話をしていますが、時々声を荒げていることから話が通じていないのが分かります。

「お前たちは課題は終わってるんだよな?」

「はい。ああ、フィリップス殿下の個人の課題は分かりませんけど、パーティーの課題と他のメンバーの個人の課題は終了しています」

「ならさ、あっちはあっちで課題を終わらせてもらえばいいんじゃない?パーティー間で手伝うとお互いに減点になるし、こんなところで時間を無駄にしない方がいい」

ずっと昔、爵位の高いAクラスの課題を平民の多いDクラスにさせるということが相次いだため、パーティー間の協力は不可となったのです。

「あのふたり、離れませんよ?」

「放っておけばいいさ。パーティー組んでたら仲違いもあるしな。忠告だけしておけばいい。選ぶのはあいつらだ」

話は決まったようですね。

「フィリップス殿下。私たちのパーティーは、課題を終えましたので、ランスたちのパーティーと一緒に帰途につきます」

「はあ?!何を言っている?!クレマチスたちの課題が終わっていないだろう?なぜ手伝わない!」

「いえ。フィリップス殿下のお心遣いはありがたいのですが、それでは我々の評価も殿下方の評価も下がってしまいます。ですから、我々は自分達で何とかします」

Cクラスのパーティーリーダーとおぼしき人物が第2王子の言葉を制しました。4年生はおろおろとするばかりで役に立ちそうにはありません。

「だが!・・・・」

「さあ、急がないと時間がなくなるよ」

クレイグ殿下がフィリップス殿下の言葉を遮りました。

「はい。では、我々は失礼します。クレマチス嬢も行くよ?」

「え?え?え?」

お互いのパーティーだけでなく、私たち第三者が入ったことで事実関係の証明が容易になりました。監督役の騎士や魔法師もいますが、学園内のことにはノータッチですから、証言者にはなり得ません。陛下には伝わるでしょうが。この後おふたりがどうするかは、ご自分で決めるでしょう。

私たちは憮然とする第2王子とあたふたとするクレマチス・シャベルテート男爵令嬢を尻目に学園への帰途につきました。
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