ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子

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混沌の学生生活

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ミランダ様は毎日毎日、朝昼夜と必ず私たちの前に現れます。登校中だろうが、昼食中だろうが、歓談中だろうが構うことなく、「レオ兄さまぁ~!」と両手を広げて突撃して来るのです。悉く結界に阻まれているのですが、諦めるとか手段を変えるという選択肢は彼女の中には無いようです。

それに加えて、セアベルテナータ殿下が私やミリーナ様を見つけては「我の妃たちよ!」と両手を広げて迫ってきます。さすがに、殿下を刺激するのは得策ではないと思っているのか、レオナルド様も殿下の前では私を抱き寄せるだけで、チュッチュッとはしてきません。私もミリーナ様もこの時ばかりは、お互いの仮婚約者にピッタリと寄り添っているのですが、セアベルテナータ殿下にはレオナルド様とランスロット様は目に入っていないのか、全く効果がありません。どうしようもなく混沌とするその場を、私たちは見なかったことにして去るのがパターン化しています。殿下は殿下で、「我の妃たちは実に奥ゆかしい」と都合よく解釈しています。側近たちは毎回苦々しい表情で私たちを見ていますから、私たちの関係性を充分に理解しているようです。何故それを殿下に指摘しないのでしょうか?指摘したところで聞き入れないのかもしれませんが。

それが2月も続くと流石のレオナルド様とランスロット様もイライラとし始めました。

「ランス。もう限界だ」

「奇遇だな。俺もそう思ってた」

「学園の中じゃ何処にいても落ち着かないが、授業をサボるわけにもいかない」

「あれでは、仕方ありませんわ。気の休まる隙がありませんもの」

「「「「ハァ」」」」

クラスの皆さんも私たちに同情の視線を送ってきました。ナンザルト先生やセアベルテナータ殿下のことを聞き付けた私たちの両親も心配していますが、この状況に対処するのもまた学びだと、事件性のない限りにおいて、手を出すことは出来ません。お兄様とシルビアお姉様などは卒業してしまったことを悔やんでいると切々と手紙で訴えてきました。

「明日からの三連休は森で野営でもして過ごすか?」

「!そうしよう!ロッテもいいよね?」

「構いませんわ」

「ミリーは?いいか?」

「ええ。わたくしも少し気分転換したい気分ですの」

私たちは早速、ギルドで依頼を受け、森へと出発することにしました。薬草学で使用する薬草の採取も兼ねています。既に夕方ですが、まだ外出の手続きは間に合います。今日は町の宿屋に泊まり、明日の朝早く森へ向かうことで一致しました。気分も軽く寮を後にした私たちをセアベルテナータ殿下が3階から見下ろしていることには気づきませんでした。それを目撃したグロース様とドミニク様は、後に、背筋が寒くなるほどゾッとしたと話していました。




そして、森で3日を過ごし、寮の門限ギリギリに滑り込むように帰寮し、それぞれの部屋へと別れました。今回は不可思議の森の奥深くまで踏入り、全員が様々な魔獣を相手に苛々をぶつけ、少しはスッキリしました。レオナルド様は今までの反動か、私を離したがらず、隙をみてはチュッチュッとされて、ランスロット様もミリーナ様も呆れていました。これで、レオナルド様の精神が安定するなら、少しの恥ずかしさは我慢です。

翌日は気分転換の効果か、ミランダ様の突撃にも気持ち的に余裕を持って対処できました。やはり、息抜きは必要です。ただ、セアベルテナータ殿下は朝も昼もお会いすることがありませんでした。これは初めてのことではないでしょうか?レオナルド様もランスロット様も殿下がやって来ないことを気にしていましたが、今はクラスの皆様との情報交換に忙しくしています。私とミリーナ様は久しぶりに落ち着いた気分で授業の合間の時間を過ごしました。平和な時間です。





それなのに・・・・。



「ん・・・・」

ゆっくりと瞼があがり、床、机と椅子の脚、壁が目に入ってきました。

え?

「ここは・・・・?」

倉庫?

頭を起こし周りを見回すと薄暗く埃っぽい部屋にいるではありませんか。私の背中側にミリーナ様が倒れているのが視界に入りました。手足を縛られているので動くのもままなりません。

「ミリー!ミリー!起きて!」

「ん。ロッテ?」

すぐにミリーナ様も目を覚ましました。

「ここは?わたくしたちどうしたのかしら?あら?手足が・・・・」

ふたりでここに来るまでの記憶を掘り起こします。どうやら私たちは、淑女コースの授業の教室までレオナルド様たちに送ってもらった後、お花摘みトイレに行ったところで記憶が途切れています。睡眠薬を嗅がされた!と思ったときには遅かったことを思い出しました。つまり、拐われたということですね。

「ハァ。まさか、こんなにすぐに現実になるなんて」

「本当に。これが役に立ったということですわね」

私たち4人は、意識が無くなると特定の相手にそれが伝わる魔道具を身に付けています。これは、急遽私とレオナルド様で開発しました。欠点は睡眠との区別がつかないこと。着けたまま眠ると相手に知らせが届いてしまうのです。ですから、今頃レオナルド様たちが私たちを探してくれているはずです。それにしても誰が・・・・。

ガタン!!!

「ミリー!」「ロッテ!」

レオナルド様とランスロット様が扉を吹っ飛ばす勢いで飛び込んできました。

「無事か?!」「無事?!」

「ランス!」「レオ!」

レオナルド様が私を抱き起こし、ナイフで縄を切ってくれました。ミリーナ様もランスロット様に助け起こされています。

「何があったの?」

「それが・・・・。ミリーと化粧室から出たところで睡眠薬を嗅がされて、先ほど気がついたところです」

「ええ。授業の始まるギリギリでしたから、周りには誰もおりませんでしたわ。後ろからでしたから、顔は見ておりません」

「今は何時くらいなのでしょう?」

「午後の授業が始まってそんなに経ってないよ。私とランスは、始まるギリギリ前にこっそり抜け出してふたりの魔力を頼りに探したんだ。ナンザルト先生も一緒だよ」

え?

気付きませんでしたが、入り口に凭れて厳しい顔をしています。

「無事で何よりだ。俺はここで犯人を待つが、お前たちは寮に帰れ。ふたりをここに置いていったということは、戻ってくるということだからな。こんなに早くここに辿り着けるとは思っていなかったんだろう」

「なら、俺たちも!」

「ダメだ」

「なんで・・・・」「分かりました」

「レオ?!」

ランスロット様は信じられないというようにレオナルド様を凝視しています。

「ランス、ここは先生に任せよう?ロッテとミリーの立場もあるんだ。それに私たちにもすべきことがあるだろう?・・・・先生、犯人は教えてもらえるんですよね?」

「・・・・フゥ。まあ、いいだろう。犯人は分かっているんだからな。理由もついでに教えるぞ。対策は必要だ」

ランスロット様はまだ不服なようですが、ミリーナ様のそばにいることを優先させることにしたようです。私たちはナンザルト先生に後を任せ、心配したレオナルド様とランスロット様に抱えられて寮まで運ばれたのでした。
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