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後味の悪い幕引き
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私たちの解呪は成功し、その後も後遺症が出ることはありませんでした。寮へ帰る道すがらギルドに報告をし、これで野外実習は終了です。ブローバードの討伐の実績を加味され、私とレオナルド様はBランクに昇格しました。授業も始まり、漸く穏やかな日常が戻ってきつつある日、ナンザルト先生からある報告がなされました。
「まず、セアベルテナータ殿下だが、国外退去処分になった。今後、この国には入国できない。他国にも周知されたから、自国から出ることはできないだろう。それから、あの紙を落とした人物が判明した」
そう言ったナンザルト先生の表情はいつになく固く強張っています。
「誰です?」
私たちはナンザルト先生の言葉を待ちました。
「フィリップス・グラスホップ男爵だ」
「「「「え・・・・」」」」
衝撃でした。思ってもみなかった名前です。
「何故・・・・」
思わずポロリと零れてしまいました。
「間違いないんですか?ですが、何故・・・・彼が禁術を知っていたのでしょう?」
「間違いであってほしかったがな。俺の付けていた諜報からの情報だ。緊急で別の仕事を頼んだやつがセアベルテナータ殿下の近くで紙を落としたのを目撃していた。そいつが拾う前にセアベルテナータ殿下の手に渡ったのが不運だったのか・・・・。回収する前に燃やされていた。フィリップスの出自は聞いているな?」
デビュタントの夜会の翌日にお父様から聞きました。王族籍から抹消された国王陛下の兄の子であると。そして、レオナルド様の伯母様との関係も。
「父親の代から仕えていた使用人たちを全て解雇し、野外実習の前までその誰もいない屋敷に毎週帰っていたそうだ。そこに何かあるんだろう。詳しくは調べている最中だ」
「なんだか、大事になってきたな」
ランスロット様の言うとおりです。既に騎士団と魔法師団が密かに介入していますが、自国の元とはいえ一時は第2王子という立場にいた人が関わってきたとなると・・・・。
「今はまだ、フィリップスが落とした紙をセアベルテナータ殿下が拾ったということしか分かっていない。その紙もセアベルテナータ殿下が燃やしてもうない。証拠も何もない状態だ。フィリップスの目的と禁術の入手経路は調べている最中だが、身辺には気を付けてくれ。いいな?」
禁術を使用したことで国外退去処分となったセアベルテナータ殿下は学園を去り、側近たちも一緒に国に帰ったとか。私たちを護衛してくれたお姉様たちも私のお兄様もセアベルテナータ殿下が居なくなったことで、お役御免となり王都に戻っていきました。唯一警戒対象であるグラスホップ男爵はいつもと変わらず学園で授業に出て、クレマチス・シャベルテート男爵令嬢と交流をしているそうです。ナンザルト先生の言った通り、今までは毎週のように帰っていた屋敷にも野外実習以降帰ることはなくなり、週末も寮で過ごしているということでした。彼の目的はなんなのでしょう?ともあれ、私たちの周りは漸く落ち着きを取り戻しました。
「平和ですわねぇ」
「これが普通だ、ミリー」
そうですね。今までがおかしかっただけで、これが普通の学生生活なはずです。
「お茶がこんなに美味しいなんて」
「気を張ってたのは分かるけど、そこまでか?」
「もう!ランスは分かってませんわね、プン」
あらあら、ミリーナ様が拗ねてしまわれました。平和です。
「ロッテ。そろそろ研究室に行こう」
「はい。今日は調薬ですか?」
「うん。中和剤の研究を進めたいんだ。ロッテは?」
「わたくしはこれの改良を」
レオナルド様と作った状態異常を正常化する魔道具の性能アップを試みるつもりです。あの事件のお蔭で有用なデータが集まったのでそれを解析するところからですが、私はそれが嫌いではありません。
「ほどほどにね?」
ランスロット様たちと別れ、レオナルド様に手を繋がれて、周りを警戒することなくのんびりと散歩しながら研究室に向かいます。
あら?
私たちの研究室の扉の前に何か立て掛けてあります。レオナルド様を見ると訝しげな顔をしていますから、レオナルド様も知らないようです。
「ロッテはここで待って」
そこにあるものが何か分からないため緊張してしまいます。レオナルド様は扉の前にあるものを手に取ると中を確認しています。そして、次に私たちの研究室を開け、室内を見回すと、ホッと息を吐いたのが分かりました。
「大丈夫だよ」
その言葉に私はレオナルド様の後について部屋に入りました。
「これ、ロッテ宛てだよ」
手渡されたのは分厚いノートが数冊入ったものでした。差出人は不明です。私たちはここ何日も研究室を訪れていませんから、いつ置かれたものなでしょうか?
「これは・・・・!」
一冊手に取り、読んでみると・・・・。誰とも分からない方の日記です。それは、28年の前のものでした。
花の46年葉の月22日
叔母様のところに療養に来て正解だったわ。砂漠の国だから暑いけれど、ここにはたくさんの魔術の本があるのよ。その美しい術式にはうっとりするわ。それに!叔母様が魔術に精通していてわたくしに教えてくださるというの!この国にはもっと多くの秘術や禁術で溢れていると言うわ。ああ、なんて心踊る国なのでしょう。
花の49年石の月4日
粗方の秘術や魔術の本を集めたわ。わたくしに使える秘術もこっそりと叔母様が教えてくださった。ここぞというときに使いなさいって。この術を使う日が待ち遠しいわ。
別の日記を手に取ります。
花の51年草の月17日
あの術を使うときが来たわ!絶対にしくじったりなんてしないわ!
花の51年海の月2日
あの人はわたくしのそばに常に居てくれるようになったわ。わたくしが何ヶ月もかけて弱い術を掛け続けた成果が現れたのよ。今はまだ心と精神で押さえているようだけれど、時間の問題ね。すぐにでもわたくしなしでは生きられなくなるわ。フフ。わたくしを愛するようになるのよ。これでわたくしはこの国の王妃。今までわたくしを蔑んできた者たちには制裁を。ああ、その日が楽しみですわ。
もしかして、これは・・・・。
花の53年木の月13日
どういうことよ!王太子の位を返上したですって!!!王族でもないだなんて、一代男爵だなんて!なんて屈辱!あれだけ禁術だと悟られないように手間暇かけたのに!全てが無駄になったというの!!!
花の59年月の月21日
男の子が産まれたわ。この子を国王陛下にお見せすれば、きっときっと・・・・!
花の59年葉の月7日
妊娠している間にあの人に掛けていた術が薄れてしまったわ。もう一度掛けようにも、あの人はわたくしを警戒して近づいてこない。家にも寄り付かなくなってしまったわ。いっそのことあの術で消えてもらおうかしら?
日記はこの日を最後に終わっています。
「これ・・・・」
私はレオナルド様にも日記を見せました。はっきりと名前は出てきませんが、フィリップス様のお母様の日記ではないでしょうか?何故、私にこの日記を?私とレオナルド様は顔を見合わせ、すぐにこれらの日記をナンザルト先生に託すと、フィリップス様の行方を探したのですが、その日フィリップス様が見つかることはありませんでした。翌日、ナンザルト先生から王都にあるフィリップス様のお屋敷が炎上、跡形もなく燃え尽きたと伺いました。それ以来、フィリップス様を見たものはいません。ただ、寮の自室にクレマチス様宛の手紙が一通残されていたとか。
『どうか、幸せに』
一言、そう書き添えられていたそうです。
「まず、セアベルテナータ殿下だが、国外退去処分になった。今後、この国には入国できない。他国にも周知されたから、自国から出ることはできないだろう。それから、あの紙を落とした人物が判明した」
そう言ったナンザルト先生の表情はいつになく固く強張っています。
「誰です?」
私たちはナンザルト先生の言葉を待ちました。
「フィリップス・グラスホップ男爵だ」
「「「「え・・・・」」」」
衝撃でした。思ってもみなかった名前です。
「何故・・・・」
思わずポロリと零れてしまいました。
「間違いないんですか?ですが、何故・・・・彼が禁術を知っていたのでしょう?」
「間違いであってほしかったがな。俺の付けていた諜報からの情報だ。緊急で別の仕事を頼んだやつがセアベルテナータ殿下の近くで紙を落としたのを目撃していた。そいつが拾う前にセアベルテナータ殿下の手に渡ったのが不運だったのか・・・・。回収する前に燃やされていた。フィリップスの出自は聞いているな?」
デビュタントの夜会の翌日にお父様から聞きました。王族籍から抹消された国王陛下の兄の子であると。そして、レオナルド様の伯母様との関係も。
「父親の代から仕えていた使用人たちを全て解雇し、野外実習の前までその誰もいない屋敷に毎週帰っていたそうだ。そこに何かあるんだろう。詳しくは調べている最中だ」
「なんだか、大事になってきたな」
ランスロット様の言うとおりです。既に騎士団と魔法師団が密かに介入していますが、自国の元とはいえ一時は第2王子という立場にいた人が関わってきたとなると・・・・。
「今はまだ、フィリップスが落とした紙をセアベルテナータ殿下が拾ったということしか分かっていない。その紙もセアベルテナータ殿下が燃やしてもうない。証拠も何もない状態だ。フィリップスの目的と禁術の入手経路は調べている最中だが、身辺には気を付けてくれ。いいな?」
禁術を使用したことで国外退去処分となったセアベルテナータ殿下は学園を去り、側近たちも一緒に国に帰ったとか。私たちを護衛してくれたお姉様たちも私のお兄様もセアベルテナータ殿下が居なくなったことで、お役御免となり王都に戻っていきました。唯一警戒対象であるグラスホップ男爵はいつもと変わらず学園で授業に出て、クレマチス・シャベルテート男爵令嬢と交流をしているそうです。ナンザルト先生の言った通り、今までは毎週のように帰っていた屋敷にも野外実習以降帰ることはなくなり、週末も寮で過ごしているということでした。彼の目的はなんなのでしょう?ともあれ、私たちの周りは漸く落ち着きを取り戻しました。
「平和ですわねぇ」
「これが普通だ、ミリー」
そうですね。今までがおかしかっただけで、これが普通の学生生活なはずです。
「お茶がこんなに美味しいなんて」
「気を張ってたのは分かるけど、そこまでか?」
「もう!ランスは分かってませんわね、プン」
あらあら、ミリーナ様が拗ねてしまわれました。平和です。
「ロッテ。そろそろ研究室に行こう」
「はい。今日は調薬ですか?」
「うん。中和剤の研究を進めたいんだ。ロッテは?」
「わたくしはこれの改良を」
レオナルド様と作った状態異常を正常化する魔道具の性能アップを試みるつもりです。あの事件のお蔭で有用なデータが集まったのでそれを解析するところからですが、私はそれが嫌いではありません。
「ほどほどにね?」
ランスロット様たちと別れ、レオナルド様に手を繋がれて、周りを警戒することなくのんびりと散歩しながら研究室に向かいます。
あら?
私たちの研究室の扉の前に何か立て掛けてあります。レオナルド様を見ると訝しげな顔をしていますから、レオナルド様も知らないようです。
「ロッテはここで待って」
そこにあるものが何か分からないため緊張してしまいます。レオナルド様は扉の前にあるものを手に取ると中を確認しています。そして、次に私たちの研究室を開け、室内を見回すと、ホッと息を吐いたのが分かりました。
「大丈夫だよ」
その言葉に私はレオナルド様の後について部屋に入りました。
「これ、ロッテ宛てだよ」
手渡されたのは分厚いノートが数冊入ったものでした。差出人は不明です。私たちはここ何日も研究室を訪れていませんから、いつ置かれたものなでしょうか?
「これは・・・・!」
一冊手に取り、読んでみると・・・・。誰とも分からない方の日記です。それは、28年の前のものでした。
花の46年葉の月22日
叔母様のところに療養に来て正解だったわ。砂漠の国だから暑いけれど、ここにはたくさんの魔術の本があるのよ。その美しい術式にはうっとりするわ。それに!叔母様が魔術に精通していてわたくしに教えてくださるというの!この国にはもっと多くの秘術や禁術で溢れていると言うわ。ああ、なんて心踊る国なのでしょう。
花の49年石の月4日
粗方の秘術や魔術の本を集めたわ。わたくしに使える秘術もこっそりと叔母様が教えてくださった。ここぞというときに使いなさいって。この術を使う日が待ち遠しいわ。
別の日記を手に取ります。
花の51年草の月17日
あの術を使うときが来たわ!絶対にしくじったりなんてしないわ!
花の51年海の月2日
あの人はわたくしのそばに常に居てくれるようになったわ。わたくしが何ヶ月もかけて弱い術を掛け続けた成果が現れたのよ。今はまだ心と精神で押さえているようだけれど、時間の問題ね。すぐにでもわたくしなしでは生きられなくなるわ。フフ。わたくしを愛するようになるのよ。これでわたくしはこの国の王妃。今までわたくしを蔑んできた者たちには制裁を。ああ、その日が楽しみですわ。
もしかして、これは・・・・。
花の53年木の月13日
どういうことよ!王太子の位を返上したですって!!!王族でもないだなんて、一代男爵だなんて!なんて屈辱!あれだけ禁術だと悟られないように手間暇かけたのに!全てが無駄になったというの!!!
花の59年月の月21日
男の子が産まれたわ。この子を国王陛下にお見せすれば、きっときっと・・・・!
花の59年葉の月7日
妊娠している間にあの人に掛けていた術が薄れてしまったわ。もう一度掛けようにも、あの人はわたくしを警戒して近づいてこない。家にも寄り付かなくなってしまったわ。いっそのことあの術で消えてもらおうかしら?
日記はこの日を最後に終わっています。
「これ・・・・」
私はレオナルド様にも日記を見せました。はっきりと名前は出てきませんが、フィリップス様のお母様の日記ではないでしょうか?何故、私にこの日記を?私とレオナルド様は顔を見合わせ、すぐにこれらの日記をナンザルト先生に託すと、フィリップス様の行方を探したのですが、その日フィリップス様が見つかることはありませんでした。翌日、ナンザルト先生から王都にあるフィリップス様のお屋敷が炎上、跡形もなく燃え尽きたと伺いました。それ以来、フィリップス様を見たものはいません。ただ、寮の自室にクレマチス様宛の手紙が一通残されていたとか。
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