43 / 45
密談
しおりを挟む
ロッテとミリーが眠った後、私とランスはナンザルト先生を訪ねた。見送りの際にロッテたちに聞こえないように伝言されたのだ。特別室の部屋の前には護衛で来ているランスの姉上たちが、その屋敷の周りには騎士と魔法師が配備されていた。物々しいが、狙われた令嬢ふたりの父親を思い出せば、良くこれで済んだと思う。
リンゴ~ン
「早かったな。入れ」
ナンザルト先生に招き入れられ、職員の寮へと足を踏み入れた。
「やはり、ふたりは相当疲れているようです。おふたりが帰った後すぐに眠ってしまいましたよ」
「そうだろうな。シャルロットから聞いた術を解呪するとなると相当の魔力を使うからな。お前たちは大丈夫か?」
「俺は少しダルさはあるが、休むほどではないな」
「私はそれほどではありません」
「そうか。お前たちふたりは今回の禁術のことをどれくらい理解している?」
「あらかたは」
「俺は全然。授業でやった魔道具の術式が精々だな。レオに言われた通りに術式を構築してミリーに渡しただけだし」
「その術式を構築するのが大変なんだけどな」
「必死だったから。今やれと言われても出来ない」
「まず、禁術や秘術と言われる類いのものは、今俺たちが使っている魔法とは全く異なるものだ。それは分かるな?冒険者ギルドにある転移陣や魔道具で使う術式が一番それに近い。要するに過去の遺物だ」
そう。私たちが普段使っている魔法は、魔力を糧に詠唱やイメージでその現象を起こす。それに対して魔道具などを作る際に決まった現象が起こるように設定する術式を用いるものを魔術と呼び区別している。禁術や秘術はこの魔術に該当する。それらは、かつて魔術師と呼ばれた人たちが開発した術式を用いて引き起こす術であり、その効果が凶悪なものが多かったために使用を禁止あるいは制限されているものが多く、その殆どは失伝している。術式の構築が難しい上、魔力を大量に必要とするものも多く、既存の術式であっても発動は容易ではない。今回使われた術はその失伝しなかったひとつなのだろう。
「シャルロットが魔術に精通していて本当に助かった」
ロッテはその方面においても類い稀なる才能を持っている。新しい術式の構築など、私は理解するだけで精一杯だ。ロッテに鍛えられたお蔭である程度の術式は解読も解呪も出来るようになった。
「ロッテは新しい魔道具の作成にあたり術式の開発もしていますから、その辺りは詳しいですよ。禁術や秘術は閲覧が禁止されていますから見たことはありませんが、実際、そのあたりスレスレの術式を創っていますし」
「相変わらず、常識がおかしいよな」
「まあ、今回はそれで助かったがな」
ナンザルト先生もロッテの常識がおかしいことは否定できないようだ。
「まあ、ロッテだから」
この一言に尽きる。
「今回のことで騎士団と魔法師団が動けるようになった。レオナルドが提案した例の件も各国に話を回して賛同を得たそうだ。あの国は多くの国から恨みを買っているからな。我が国も既に制裁が始まっている。商人たちはこの依頼にこぞって参加してくれると商業者ギルドを通して返事をもらった。あとは・・・・。グリフォル族連合王国がどうでるか。情報によると先の商人の不買い不売いで既に国の一部が機能しなくなってるらしいぞ」
ナンザルト先生は実に愉しそうに教えてくれた。私は、パン屋のリンダさんが教えてくれた商人たちの制裁を国単位で行い、あの国の国力を削ることを提案したのだが、上手くいきそうだ。ロッテに教えなかったのは、ロッテはその国に住む平民たちのことを考えて心を痛めるにちがいないからだ。ロッテにこういうことは向いていない。
「グリフォル族連合王国から第2王子がこちらに向かっているんですよね?海路でしたか」
「ああ。あと5日もあれば港に着くな」
「入国させるのか?」
「いや。足留めさせる。セアベルテナータ殿下に紙を渡した人物の特定と禁術の出所をハッキリさせたい。その上で、セアベルテナータ殿下の過失を立証して廃嫡に持っていきたいところだな。出来れば国王の一夫多妻も撤廃させたいが・・・・」
リンゴ~ン
ナンザルト先生を訪ねて誰かが来た。こんな夜更けにどんな用だろうか。
「・・・・か・・い・・・・・・・・だろう・・あ・・・・・・な」
「は・・・・つ・・・・」
ナンザルト先生と客の会話がとぎれとぎれに聞こえてきたが、内容はわからない。
「セアベルテナータ殿下が突然精神を病んだそうだ」
「なっ!」
「それは、ロッテたちが解呪したことによる反動ですか?」
ランスは驚いているが、私はある程度それを予想はしていた。ロッテがあれほど苦労した術だ。反動は大きいだろう。
「ああ。まあ、禁術とされるものの多くは呪いだ。術を術者以外が解けば、その術は術者に還る。古の魔術師たちはそれも含めて対処法を知っていたが、俺たちにそんな高度な知識はない。まして、セアベルテナータ殿下はあれを魔術とすら認識していなかったんだ。もろに術を受けただろうな」
「ロッテとミリーにはこの事は・・・・」
「伝えるつもりはない」
私とランスはホッとした。これ以上、このことにロッテを関わらせたくはない。ランスも同じことを考えているようだ。ともかく、セアベルテナータ殿下の廃嫡は決まった。このままじわじわとあの国を追い詰めていけば、一夫多妻制の撤廃も可能だろう。
「禁術の出所はこっちで探る。お前たちは授業に集中してくれよ?」
一先ず、ロッテとミリーがセアベルテナータ殿下に悩まされることはなくなった。明日から落ち着いた日常が戻ってくるだろう。私とランスは漸く今までの肩の荷をおろすことができた。
リンゴ~ン
「早かったな。入れ」
ナンザルト先生に招き入れられ、職員の寮へと足を踏み入れた。
「やはり、ふたりは相当疲れているようです。おふたりが帰った後すぐに眠ってしまいましたよ」
「そうだろうな。シャルロットから聞いた術を解呪するとなると相当の魔力を使うからな。お前たちは大丈夫か?」
「俺は少しダルさはあるが、休むほどではないな」
「私はそれほどではありません」
「そうか。お前たちふたりは今回の禁術のことをどれくらい理解している?」
「あらかたは」
「俺は全然。授業でやった魔道具の術式が精々だな。レオに言われた通りに術式を構築してミリーに渡しただけだし」
「その術式を構築するのが大変なんだけどな」
「必死だったから。今やれと言われても出来ない」
「まず、禁術や秘術と言われる類いのものは、今俺たちが使っている魔法とは全く異なるものだ。それは分かるな?冒険者ギルドにある転移陣や魔道具で使う術式が一番それに近い。要するに過去の遺物だ」
そう。私たちが普段使っている魔法は、魔力を糧に詠唱やイメージでその現象を起こす。それに対して魔道具などを作る際に決まった現象が起こるように設定する術式を用いるものを魔術と呼び区別している。禁術や秘術はこの魔術に該当する。それらは、かつて魔術師と呼ばれた人たちが開発した術式を用いて引き起こす術であり、その効果が凶悪なものが多かったために使用を禁止あるいは制限されているものが多く、その殆どは失伝している。術式の構築が難しい上、魔力を大量に必要とするものも多く、既存の術式であっても発動は容易ではない。今回使われた術はその失伝しなかったひとつなのだろう。
「シャルロットが魔術に精通していて本当に助かった」
ロッテはその方面においても類い稀なる才能を持っている。新しい術式の構築など、私は理解するだけで精一杯だ。ロッテに鍛えられたお蔭である程度の術式は解読も解呪も出来るようになった。
「ロッテは新しい魔道具の作成にあたり術式の開発もしていますから、その辺りは詳しいですよ。禁術や秘術は閲覧が禁止されていますから見たことはありませんが、実際、そのあたりスレスレの術式を創っていますし」
「相変わらず、常識がおかしいよな」
「まあ、今回はそれで助かったがな」
ナンザルト先生もロッテの常識がおかしいことは否定できないようだ。
「まあ、ロッテだから」
この一言に尽きる。
「今回のことで騎士団と魔法師団が動けるようになった。レオナルドが提案した例の件も各国に話を回して賛同を得たそうだ。あの国は多くの国から恨みを買っているからな。我が国も既に制裁が始まっている。商人たちはこの依頼にこぞって参加してくれると商業者ギルドを通して返事をもらった。あとは・・・・。グリフォル族連合王国がどうでるか。情報によると先の商人の不買い不売いで既に国の一部が機能しなくなってるらしいぞ」
ナンザルト先生は実に愉しそうに教えてくれた。私は、パン屋のリンダさんが教えてくれた商人たちの制裁を国単位で行い、あの国の国力を削ることを提案したのだが、上手くいきそうだ。ロッテに教えなかったのは、ロッテはその国に住む平民たちのことを考えて心を痛めるにちがいないからだ。ロッテにこういうことは向いていない。
「グリフォル族連合王国から第2王子がこちらに向かっているんですよね?海路でしたか」
「ああ。あと5日もあれば港に着くな」
「入国させるのか?」
「いや。足留めさせる。セアベルテナータ殿下に紙を渡した人物の特定と禁術の出所をハッキリさせたい。その上で、セアベルテナータ殿下の過失を立証して廃嫡に持っていきたいところだな。出来れば国王の一夫多妻も撤廃させたいが・・・・」
リンゴ~ン
ナンザルト先生を訪ねて誰かが来た。こんな夜更けにどんな用だろうか。
「・・・・か・・い・・・・・・・・だろう・・あ・・・・・・な」
「は・・・・つ・・・・」
ナンザルト先生と客の会話がとぎれとぎれに聞こえてきたが、内容はわからない。
「セアベルテナータ殿下が突然精神を病んだそうだ」
「なっ!」
「それは、ロッテたちが解呪したことによる反動ですか?」
ランスは驚いているが、私はある程度それを予想はしていた。ロッテがあれほど苦労した術だ。反動は大きいだろう。
「ああ。まあ、禁術とされるものの多くは呪いだ。術を術者以外が解けば、その術は術者に還る。古の魔術師たちはそれも含めて対処法を知っていたが、俺たちにそんな高度な知識はない。まして、セアベルテナータ殿下はあれを魔術とすら認識していなかったんだ。もろに術を受けただろうな」
「ロッテとミリーにはこの事は・・・・」
「伝えるつもりはない」
私とランスはホッとした。これ以上、このことにロッテを関わらせたくはない。ランスも同じことを考えているようだ。ともかく、セアベルテナータ殿下の廃嫡は決まった。このままじわじわとあの国を追い詰めていけば、一夫多妻制の撤廃も可能だろう。
「禁術の出所はこっちで探る。お前たちは授業に集中してくれよ?」
一先ず、ロッテとミリーがセアベルテナータ殿下に悩まされることはなくなった。明日から落ち着いた日常が戻ってくるだろう。私とランスは漸く今までの肩の荷をおろすことができた。
92
あなたにおすすめの小説
生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
治療係ですが、公爵令息様がものすごく懐いて困る~私、男装しているだけで、女性です!~
百門一新
恋愛
男装姿で旅をしていたエリザは、長期滞在してしまった異国の王都で【赤い魔法使い(男)】と呼ばれることに。職業は完全に誤解なのだが、そのせいで女性恐怖症の公爵令息の治療係に……!?「待って。私、女なんですけども」しかも公爵令息の騎士様、なぜかものすごい懐いてきて…!?
男装の魔法使い(職業誤解)×女性が大の苦手のはずなのに、ロックオンして攻めに転じたらぐいぐいいく騎士様!?
※小説家になろう様、ベリーズカフェ様、カクヨム様にも掲載しています。
異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない
紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。
完結済み。全19話。
毎日00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
【完結】公爵令嬢の育て方~平民の私が殿下から溺愛されるいわれはないので、ポーション開発に励みます。
buchi
恋愛
ポーシャは、平民の特待生として貴族の学園に入学したが、容貌もパッとしなければ魔力もなさそうと蔑視の対象に。それなのに、入学早々、第二王子のルーカス殿下はポーシャのことを婚約者と呼んで付きまとう。デロ甘・辛辣・溺愛・鈍感コメディ(?)。殿下の一方通行がかわいそう。ポジティブで金儲けに熱心なポーシャは、殿下を無視して自分の道を突き進む。がんばれ、殿下! がんばれ、ポーシャ?
【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!
こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。
そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。
婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。
・・・だったら、婚約解消すれば良くない?
それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。
結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。
「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」
これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。
そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。
※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。
※本編完結しました。
※後日談を更新中です。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
【完結】転生白豚令嬢☆前世を思い出したので、ブラコンではいられません!
白雨 音
恋愛
エリザ=デュランド伯爵令嬢は、学院入学時に転倒し、頭を打った事で前世を思い出し、
《ここ》が嘗て好きだった小説の世界と似ている事に気付いた。
しかも自分は、義兄への恋を拗らせ、ヒロインを貶める為に悪役令嬢に加担した挙句、
義兄と無理心中バッドエンドを迎えるモブ令嬢だった!
バッドエンドを回避する為、義兄への恋心は捨て去る事にし、
前世の推しである悪役令嬢の弟エミリアンに狙いを定めるも、義兄は気に入らない様で…??
異世界転生:恋愛 ※魔法無し
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
ヒロインに躱されて落ちていく途中で悪役令嬢に転生したのを思い出しました。時遅く断罪・追放されて、冒険者になろうとしたら護衛騎士に馬鹿にされ
古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
第二回ドリコムメディア大賞一次選考通過作品。
ドジな公爵令嬢キャサリンは憎き聖女を王宮の大階段から突き落とそうとして、躱されて、死のダイブをしてしまった。そして、その瞬間、前世の記憶を取り戻したのだ。
そして、黒服の神様にこの異世界小説の世界の中に悪役令嬢として転移させられたことを思い出したのだ。でも、こんな時に思いしてもどうするのよ! しかし、キャサリンは何とか、チートスキルを見つけ出して命だけはなんとか助かるのだ。しかし、それから断罪が始まってはかない抵抗をするも隣国に追放させられてしまう。
「でも、良いわ。私はこのチートスキルで隣国で冒険者として生きて行くのよ」そのキャサリンを白い目で見る護衛騎士との冒険者生活が今始まる。
冒険者がどんなものか全く知らない公爵令嬢とそれに仕方なしに付き合わされる最強騎士の恋愛物語になるはずです。でも、その騎士も訳アリで…。ハッピーエンドはお約束。毎日更新目指して頑張ります。
皆様のお陰でHOTランキング第4位になりました。有難うございます。
小説家になろう、カクヨムでも連載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる