ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子

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密談

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ロッテとミリーが眠った後、私とランスはナンザルト先生を訪ねた。見送りの際にロッテたちに聞こえないように伝言されたのだ。特別室の部屋の前には護衛で来ているランスの姉上たちが、その屋敷の周りには騎士と魔法師が配備されていた。物々しいが、狙われた令嬢ふたりの父親を思い出せば、良くこれで済んだと思う。



リンゴ~ン

「早かったな。入れ」

ナンザルト先生に招き入れられ、職員の寮へと足を踏み入れた。

「やはり、ふたりは相当疲れているようです。おふたりが帰った後すぐに眠ってしまいましたよ」

「そうだろうな。シャルロットから聞いた術を解呪するとなると相当の魔力を使うからな。お前たちは大丈夫か?」

「俺は少しダルさはあるが、休むほどではないな」

「私はそれほどではありません」

「そうか。お前たちふたりは今回の禁術のことをどれくらい理解している?」

「あらかたは」

「俺は全然。授業でやった魔道具の術式が精々だな。レオに言われた通りに術式を構築してミリーに渡しただけだし」

「その術式を構築するのが大変なんだけどな」

「必死だったから。今やれと言われても出来ない」

「まず、禁術や秘術と言われる類いのものは、今俺たちが使っている魔法とは全く異なるものだ。それは分かるな?冒険者ギルドにある転移陣や魔道具で使う術式が一番それに近い。要するに過去の遺物だ」

そう。私たちが普段使っている魔法は、魔力を糧に詠唱やイメージでその現象を起こす。それに対して魔道具などを作る際に決まった現象が起こるように設定する術式を用いるものを魔術と呼び区別している。禁術や秘術はこの魔術に該当する。それらは、かつて魔術師と呼ばれた人たちが開発した術式を用いて引き起こす術であり、その効果が凶悪なものが多かったために使用を禁止あるいは制限されているものが多く、その殆どは失伝している。術式の構築が難しい上、魔力を大量に必要とするものも多く、既存の術式であっても発動は容易ではない。今回使われた術はその失伝しなかったひとつなのだろう。

「シャルロットが魔術に精通していて本当に助かった」

ロッテはその方面においても類い稀なる才能を持っている。新しい術式の構築など、私は理解するだけで精一杯だ。ロッテに鍛えられたお蔭である程度の術式は解読も解呪も出来るようになった。

「ロッテは新しい魔道具の作成にあたり術式の開発もしていますから、その辺りは詳しいですよ。禁術や秘術は閲覧が禁止されていますから見たことはありませんが、実際、そのあたりスレスレの術式を創っていますし」

「相変わらず、常識がおかしいよな」

「まあ、今回はそれで助かったがな」

ナンザルト先生もロッテの常識がおかしいことは否定できないようだ。

「まあ、ロッテだから」

この一言に尽きる。

「今回のことで騎士団と魔法師団が動けるようになった。レオナルドが提案した例の件も各国に話を回して賛同を得たそうだ。あの国は多くの国から恨みを買っているからな。我が国も既に制裁が始まっている。商人たちはこの依頼にこぞって参加してくれると商業者ギルドを通して返事をもらった。あとは・・・・。グリフォル族連合王国がどうでるか。情報によると先の商人の不買いふかい不売いふばいで既に国の一部が機能しなくなってるらしいぞ」

ナンザルト先生は実に愉しそうに教えてくれた。私は、パン屋のリンダさんが教えてくれた商人たちの制裁を国単位で行い、あの国の国力を削ることを提案したのだが、上手くいきそうだ。ロッテに教えなかったのは、ロッテはその国に住む平民たちのことを考えて心を痛めるにちがいないからだ。ロッテにこういうことは向いていない。

「グリフォル族連合王国から第2王子がこちらに向かっているんですよね?海路でしたか」

「ああ。あと5日もあれば港に着くな」

「入国させるのか?」

「いや。足留めさせる。セアベルテナータ殿下に紙を渡した人物の特定と禁術の出所をハッキリさせたい。その上で、セアベルテナータ殿下の過失を立証して廃嫡に持っていきたいところだな。出来れば国王の一夫多妻も撤廃させたいが・・・・」



リンゴ~ン

ナンザルト先生を訪ねて誰かが来た。こんな夜更けにどんな用だろうか。

「・・・・か・・い・・・・・・・・だろう・・あ・・・・・・な」

「は・・・・つ・・・・」

ナンザルト先生と客の会話がとぎれとぎれに聞こえてきたが、内容はわからない。


「セアベルテナータ殿下が突然精神を病んだそうだ」

「なっ!」

「それは、ロッテたちが解呪したことによる反動ですか?」

ランスは驚いているが、私はある程度それを予想はしていた。ロッテがあれほど苦労した術だ。反動は大きいだろう。

「ああ。まあ、禁術とされるものの多くは呪いだ。術を術者以外が解けば、その術は術者に還る。古の魔術師たちはそれも含めて対処法を知っていたが、俺たちにそんな高度な知識はない。まして、セアベルテナータ殿下はあれを魔術とすら認識していなかったんだ。もろに術を受けただろうな」

「ロッテとミリーにはこの事は・・・・」

「伝えるつもりはない」

私とランスはホッとした。これ以上、このことにロッテを関わらせたくはない。ランスも同じことを考えているようだ。ともかく、セアベルテナータ殿下の廃嫡は決まった。このままじわじわとあの国を追い詰めていけば、一夫多妻制の撤廃も可能だろう。

「禁術の出所はこっちで探る。お前たちは授業に集中してくれよ?」

一先ず、ロッテとミリーがセアベルテナータ殿下に悩まされることはなくなった。明日から落ち着いた日常が戻ってくるだろう。私とランスは漸く今までの肩の荷をおろすことができた。
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