転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています

柚吉猫

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静かな夜

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「美味しいです」

「そうか、口に合ったなら良かった」

「これってアルフリード様が作ったんですか?」

「俺は他人の料理は食わないからな、よく俺が作ったと分かったな」

「な、何となくです」

「そうか」

これで会話を終わらせて、食事を再開させた。

俺がそう思ったのは、勘ではない。

有流くんが俺に作ってくれたお弁当の味付けにそっくりだった。
当然野菜や調味料は違っていても、似たような味にしている。

懐かしいな、昼休みによく人目につかないように誰もいない教室で食べていた。
有流くんは生徒会長で有名人だから、俺といるところをバレたら俺が何されるか分からない。
だから内緒の時間を過ごした。

俺は大丈夫だけど、有流くんとの二人だけの時間は嬉しかった。

別れてからは、何を食べても味が分からなかった。
二人で食べた時はあんなに美味しくて幸せだったのに…

まさか、こんなカタチで再び食事をするとは思わなかった。

いつもは隣同士だったが、今では距離がある。
テーブルが壁になり、近くにいるのに二度と触れる事は許されない。

料理は美味しいのに、俺の腹はぽっかり穴が開いたように満たされない。

「どうしたんだ?辛かったか?」

「…あ、こんなに美味しい料理食べた事なかったから…」

いろんな感情がぐちゃぐちゃになって、涙が溢れてきた。
いきなり泣いたら、アルフリードが困ってしまう。

服の袖で涙を拭って、誤魔化すように食べた。

母の料理も美味しいが、それとは別の美味しさだ。

俺の大好きな人の大好きな料理にそっくりだ。

アルフリードは何も言わず、静かな食事が終わった。

料理を作ってもらったから俺が片付けると言ったら「病人は寝ていろ」と言われてしまった。
まだ本調子じゃない俺が手伝っても迷惑か。

「ご馳走様です、ありがとうございます」と精一杯感謝を伝えたら頷いてくれた。

片付けた皿を乗せたワゴンを引いて部屋を出るアルフリードを見送る。

確認するまでもない、やはり彼は有流くんだ。
容姿だけではない、心が有流くんを見つけた。

そしてきっと俺が優斗だと気付いていない。
でもそれでいい、俺達はもう恋人同士ではないから…
気付いていたら、嫌な気分にさせてしまう。

でもあの時は違和感を感じなかったが、彼を見ると違和感を感じた。
アルフリードの有流くんではなく、前世の頃の最後に会った有流くんだ。

声と容姿はそっくりだったが、アルフリードを見た時の心と違う。
いつも有流くんと会う時は心がドキドキした。
辛い事を言われたからあんな気持ちにならなかったのかな。

あんな事を言われたのに、有流くんと再会してまた心が温かくなる。
好きになっちゃいけないのに、俺の心は有流くんを求めてしまっていた。

このまま何も知らずに別れれば、ゲームのように初対面のシーンまで忘れるだろう。
ユートとアルフリードの出会いはここじゃない。

アルフリードが優斗がいると思うと後ろめたい気持ちになる。
前世で別れたとはいえ、男と付き合ってたなんて思いたくないよね。
邪魔はしたくない、前世以上に嫌われたくない。

でも会えて良かった、もう二度と会えないと思っていたから話す事が出来るなんて俺は幸せ者だよ。
今日の記憶を支えにすれば、下層部へのイジメも耐えていけそうだ。

ありがとう、俺のずっとずっと大好きな人。
さすがに重いと思われるから絶対に気付かれないといけない。

ソファーに座ってアルフリードが帰ってくるのを待った。
他にする事がなくて、広い室内で小さくなる。

さすがに片付けてくれているのに呑気に寝ていられない。
どのくらいで来るか分からないが、俺は時間が掛かっても待ち続けるつもりだ。

少しすると扉が開いてアルフリードが戻ってきた。
先にベッドの方に視線を向けたが、ソファーの方を向いて少しだけ表情を変えた。
あ、これは驚いている顔だな…仕草の一つ一つ懐かしい。

「寝てるかと思った」

「眠れなくて…」

アルフリードの帰りを待っていたと言うと、気を遣われるかもしれない。
だから眠れない事にして、今から寝ようと思っていた事にしようと思った。

これなら自然だよな、実際起きたばかりだから眠くはなかった。

それに、一緒にいる時間を一秒でも見逃したくない。
俺が一生支えにする思い出だから、多ければ多いほどいい。

あまりに見過ぎてしまい、目線が合わさりすぐに下を向いた。

相変わらずかっこいいな、彼に愛される子は幸せなんだろうな。
自分で考えて勝手に落ち込んで…本当に面倒くさいな、俺。
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