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22.マオの正体。
しおりを挟むキーンコーンカーンコーン
一日の終わりの鐘だけ、少し音が高いんだよな...。
誰よりも早く校門へ向かうと、そこには車で迎えに来たマオ君の家族がいた。
母親が運転、後ろには妹らしき女の子が乗っていた。
今日は世話になったし、一応礼でも言っておくか。
「マオ君、あのさ...、さっきはどうしてあんな事したんだよ?
面倒なやつに目をつけられたら、...面倒だろ。」
礼を言うつもりが素直に言えず、あげく謎の構文を言ってしまった。
「うん。どうして、と聞かれても困るが、俺はそういう性格だから、ってのが答えになるかな。」
「そんな生まれつき正義のヒーローみたいな性格のヤツいてたまるかよ。」
「それが、俺は本当にそうなんだよ。
ほら、このキーホルダーのキャラクター知ってるかい?」
「ああ、確か“突如として現れた魔族を成敗する勇者の物語”の主人公だろ?
タイトル長いけど、こんな感じのアニメだったよな?」
「うん。俺はこのキャラクターと同じで、困っている人がいたら全力で助けたい。ただ、俺の場合は少々やり過ぎてしまうのが問題なんだけどね。」
「あぁ、確かにいきなり殴るのはやり過ぎかもな。」
「うん。驚かせてすまなかった。
実は俺には妹がいるんだが、前の学校でイジメられててね。俺はやはり、制裁をやり過ぎてしまって、家族で引越しを余儀なくされたんだ。」
「車に乗ってるのが妹さんか?」
「うん。俺と同じく今日が初登校なんだけど、どうしても行けないって、初日から休んでしまったんだよ。」
「そうだったのか...。」
「妹は前の学校で深い心の傷を負った。
身体の傷は時が癒すが、心の傷はそうはいかない。
それなのに、心の傷を負わせた者への罰は軽い。
...おかしいと思わないかい?コウ君。」
マオ君は俺を鋭い目つきで見つめる。
...、なんだ...?視界がチラつく...。
それに、俺の脳内であの追放された時の言葉が再生される。
「うん。久しぶりだね。コウ君...。」
...⁉︎ こ、この声...、魔王...!
その瞬間、マオ君の顔は魔王の顔に変貌した...!
・・・・・・・・・・・・・・・
「うわぁァァァ!!!!」
俺は飛び起きた。身体は汗でびしょ濡れだ。
はぁ、はぁ、ここは...、ミズナの部屋か。
現実に戻ってきたんだな。
「コウッ!だ、大丈夫なのよっ?」
「あぁ...、驚かせてすまない。
それより、俺は十二歳の頃に魔王と会っていたみたいなんだ。」
「人間の頃の魔王って事...?」
「そういう事だ。マオ君って名前だった。
そこで見た魔王の思考なんだけど、どうやら弱者の救済を信念としてるみたいだぜ。」
「それって、どういう事なのよ?
アタシたち人間は魔王の指揮する魔族に人口の八割は食べられてるのよ。」
「それがな、信念のためなら残忍な手段もいとわない男なんだよ。」
「...? ...ちょっと話が見えてこないのよ。
人間が弱者で、魔族が強者なんじゃないの?」
「その固定観念は取り払わなきゃいけないだろうな。
くそ...、今の魔王が何を弱者と捉えて行動してるのか、正直分からないな...。」
「魔王は他に何か言ってなかったのよ?」
「そういや俺が追放された時に、人類革新の必要悪となる事が役目だって言ってた気がするな。」
「...あっ!ちょっとピンと来たのよ!
これは仮説なんだけど、魔王はスマホとかAIとか便利な機械で堕落した人類そのものを弱者と捉えてるってのはどう?」
「...なるほどな?」
「実は、私たち生物学者には禁忌があるのよ。
優生学って言ってね、優秀な人以外は子孫を残すなーっていう偏った思想なの。」
「それが...?」
「それで魔王は、短期間でジャポルネ語を習得できなかった堕落した人間を食い尽くし、知能の高い人間は生かしておいてる。ってのはどう?」
「おお。なんか筋が通ってる気がするぜ。」
その時、リビングから母さんが俺たちを呼ぶ声が聞こえた。
「コウ~!ミズナちゃ~ん!
お寿司なくなっちゃうわよ~!」
リビングへ向かうと、こないだの倍はあろうか、大量のお寿司が用意してあった。
「サヤカ様は俺のためにお寿司作ってくれたんだ!
相棒にはやらんっ!」
「なっ、俺にも食わせろっ!」
久しぶりのお寿司をペロリと食べ終えると、ユータンがミズナにお願いをした。
「なぁ、ミズナ。久しぶりに髪でも切ってくれないかい?ウチ、短くして気合い入れたいからさぁ。」
「了解なのよっ!
ショートのユータン可愛いくてアタシ好きなのよっ!
じゃあ、準備するから外に来て!」
「いつもありがとねぇ。ミズナ。」
母さんは片付けをしにキッチンへ行き、リビングにはヒルクと二人っきりだ。
「なぁ相棒。昨日、姉貴と二人で家に帰る途中でな、こないだピストルで撃ってきたっていうガキと偶然会って、これもらったんだよ。」
「ん?なんだよこの機械?」
「お?てっきり相棒は知ってるもんだと思ったぜ。
これな、大昔の武器らしくて、スタンガンって言うんだとよ。
なんでも、電撃で攻撃できるらしいぜ!」
「これがスタンガンなのか...。
名前はもちろん知ってたが、現物は初めて見たぜ。」
「このスタンガンさ、誰が持つのが一番強ぇかな?」
まさかヒルクからこういう質問が飛び出るとは思ってなくて驚いたが、俺は即答した。
「ヒルク、お前だな。
電撃で攻撃できるって教えられたみたいだが、実はスタンガンってのは殺傷能力はそれほど高くないんだ。
タフなゴブリンや魔族に使うなら尚更だ。」
「なぁんだ?結局ザコ武器か?」
「そうは言ってねぇよ。
時間を稼ぐ目的なら、当てやすさも加味して最適だ。
つまり、お前の時間を稼いでもらう仕事に今一番欲しかった代物なんだよ。」
「相棒がそこまで言うんじゃ間違いねぇな。
うっし!今までの倍は時間稼ぎしてやるぜ!」
ヒルクが決意にも似た表情でスタンガンを見つめる。
その時、外で髪を切っていた二人が帰ってきた。
「ただいま~!上手く切れたのよ~!
見てっ!ユータン可愛いのよっ!」
そこには恥ずかしそうに立っているショートヘアのユータンがいた。
「どっ...、どうだ?」
キャラにもなく顔を赤らめながら俺に聞いてきた。
「あ、あぁ、いいんじゃないか?...すごく。」
本当はもう少し感想を言いたかったが、やはりうるさいヒルクと母さんが言葉を被せてくる。
「あら~!ユータンちゃん凄く可愛いっ!
お人形さんみたいよ~!」
「姉貴、サッパリしていいじゃねぇか!
戦闘でも動きやすそうだぞ!
俺もいっちょ気合い入れっかなぁ。」
「気合い入れるって何をするのよ?
ヒルクも髪切っちゃう~?」
「お?切ってくれるのかっ?ミズナ。」
「もっちろんOKなのよ~!
まだ床屋さんセット片付けてないから、外来てっ!」
ミズナに連れられてヒルクはウキウキで外へ出た。
そのタイミングで、母さんも片付けが一段落ついてリビングに戻ってきた。
「ねぇコウ。お母さん、ミズナちゃんから聞いたわよ。
しばらく前に採取したコウの細胞がまだ生きてたんですって?」
「あぁ、かれこれ三週間以上は生きてた事になるな。」
「その事についてなんだけど、お母さん昔ね、実はそれを応用した技術の開発もしてたのよ。
もちろん、人体を使った禁忌の実験だけど...。」
「禁忌の...実験...。」
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