ぼく、パンダ

山城木緑

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4.ゆるさねえ

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「俺じゃないぞというのは前提として聞いて欲しいと言ってます」

 祐吾は無言で頷いた。
 長い話をインさんは男に耳を傾けながら聞いていた。時折、眉をひそめている。祐吾の貧乏揺すりでござが揺れていた。話し終えると、男は手のひらで招くようなしぐさをインさんに向けた。

「ハヤサカさん……親がいないなどで保護できる子供のパンダなどがいないか、依頼があったそうです。そんなパンダはいない。だから、この人ともう一人で山に登って……パンダの子供をさらおうとしたらしいです」

 インさんが祐吾の顔色を伺う。

「……ああ。続けて」

「……それで、親のパンダに襲われ、仕方なく撃った……と」

 しばらくの沈黙が覆った。祐吾は男の目をずっと見ていた。長い長い沈黙であった。祐吾は拳を握りしめていた。

「……インさん、その話が本当かどうか、もう一度聞いてくれ」

「はい?」

「インさん、俺は三十年動物と暮らしてんだ。言葉が分からなくても、心で分かるんだ。まして言葉が交わせる人間のことなんて分からないわけないんだよ」

 インさんが伝えると、男はやれやれとでもいうように肩をすくめた。金はまだかという態度を続けながら、またなにやら喋った。

「何でもいいだろう。私たちはあなたたち日本人のように裕福じゃない。生活のために殺さなきゃいけなかったら殺すさ。綺麗ごとじゃないんだ。さっさと金をよこせ」

 祐吾は男の前にお金を置き、金を取ろうとした胸ぐらを力いっぱいに掴んで持ち上げた。

「ハヤサカさん、暴力はいけない」

「分かってる。二度とこんな真似しないようにだけ言ってくれ」

 祐吾に胸ぐらをつかまれて持ち上げられる男にインさんが強い口調で通訳した。祐吾が手を離すと、男は唾を吐き捨てその場を後にした。
 祐吾はいつかのホワイトタイガーの赤ちゃんを思い浮かべていた。珍しいだけにシェンシェンのように金で家族と引き離されていたのかもしれない。
 確かに子供たちに動物を見せてあげたい。だが、こんな権利は人間には無い。それだけは確かだと思いたい。
 人間として恥ずかしく思う。だが、自分も同じ人間である。これが、葛藤か。この歳になってやっとそんなことを実感する自分を祐吾は恥じた。
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