私、これからいきます。

蓮ヶ崎 漣

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食事会

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結城くんがお母様を引き留めた。
 
「母さん、ご飯は一緒に食べよう?父さんと母さんと一緒に食べれるの久しぶりだしそこに莉恵さんも一緒だから俺、すごく嬉しいんだ。シェフたちもいつもよりさらに腕に縒りをかけてくれたし……だめかな?」
 
「……大虎ちゃんがそこまで言うなら仕方ないわね。でも!ご飯を食べたら戻りますからね!分かった?」
 
「うん。ありがとう、母さん」
 
結城くんはお母様が座ってから椅子に座る。
それからすぐに食事が運ばれてきた。
その食事はあまりに豪華でどう食べたら良いのか分からない。
私が困惑していることに気づいたのか結城くんが色々説明してくれる。
 
「っていう感じかな。まぁ、莉恵さんの好きに食べていいよ。俺だってよく分かんないし気にしない」
 
「結城くんが気にしなくても私が気にするの!」
 
「はははっ!本当に仲が良いんだな。微笑ましいよ」
 
「……今日は無礼講です。お気にせずお好きなものをお好きなだけお食べなさい」
 
「は、はい!」
 
「君はもう少し優しい言い方はできないものかな?大虎に話すみたいに話せば良いのに無理に悪役を演じなくても……」
 
「あ、あなたは黙って食べていて!」
 
「君は本当に照れ屋だね。まぁ、そこが可愛いんだけど」
 
「黙って!!」
 
結城くんのお父様とお母様のやり取りに思わず笑ってしまう。
ハッと我に返り慌てて謝った。
 
「す、すみません!笑うなんて失礼ですよね……」
 
私の言葉に結城くんのお母様は何も言わず、お父様もニコニコ笑うだけで食事を再開する。
その行動にどう反応したら良いのか分からず一人でうなだれていると結城くんが私を呼んだ。
 
「莉恵さん」
 
「え?な……んっ!」
 
いきなり口の中にサクサクとした衣が突っ込まれる。
熱さと闘いながらモグモグ食べると口の中にチーズが広がりすごく美味しかった。
食べ終えてから口を開く。
 
「え?何?これ、美味しい……」
 
「でしょ?チーズ春巻きって言うのかな?俺のお気に入り!」
 
「うん!すごく美味しかったわ。でも、いきなりそんな熱いものを口の中に突っ込まないで!」
 
「あはは、ごめんね?莉恵さんにも食べてほしくてつい……」
 
「こら、大虎ちゃん。お行儀が悪いわよ」
 
「えー……だって、今日は無礼講でしょ?あ。母さんも食べる?」
 
「そういうことじゃありません!全く……」
 
「あぁ。なるほど。食べさせてほしいんだね。ほら、あーん」
 
「ち、違います!あなたまでお行儀が悪いわよ!」
 
「ほら、早く食べないと落ちてしまうよ?あーん」
 
「だ、だから……っ!もうっ!」
 
結城くんのお母様は半ばやけくそになりながらチーズ春巻きを食べた。
その顔は少し恥ずかしそうで赤い。
結城くんのお父様はその光景を楽しそうにニコニコ笑いながら眺めていた。
私は二人のその様子を見てチラッと結城くんを見る。
結城くんは私の視線にすぐ気づくとニコッと笑って口を開いた。
 
「ん?何?莉恵さんももう一回やる?今度はあーんって言ってあげるよ?」
 
「……私は本当に遠慮するわ」
 
この親にしてこの子有りだと痛感する。
結城くんの見た目はお母様似だけれど性格は間違いなく完全にお父様似だ。
しばらくしてみんなご飯を食べ終える。
すると結城くんが私の手を引いて立ち上がった。
 
「それじゃあ、許可も取ったことだし帰るよ。瀬羽、車出して」
 
「はい、かしこまりました。大虎様」
 
「ちょ、ちょっと待ちなさい!?私は許可なんか出していませんよ!」
 
「だって、母さん、さっき勝手にしてって言ったでしょ?だから、勝手にする。ということで俺は莉恵さんと二人暮らしするから。たまには顔出しに来るよ。それじゃあ、行こう。莉恵さん」
 
「えっ!?」
 
私の困惑も気に留めず結城くんはスタスタと歩き始めてしまう。
 
「待ちなさい、大虎。二人暮らしをするんだろう?今すぐ決めに行こうじゃないか。私もついて行くよ」
 
「えっ!?」
 
「はぁ!?」
 
結城くんのお父様の言葉に二人とも驚いて声を上げた。
 
「いや、百歩譲って物件を探しに行くのはいいよ?でも、父さんまでついてくる意味が分からない」
 
「だから、大虎が栗山さんに迷惑をかけたお詫びとして家賃や引っ越し代などの必要な金は全て私が出すと言っているんだよ。家具も何もかも全てね」
 
「い、いえ!そんな!大丈夫です!お気持ちだけ受け取らせて下さい!」
 
「そういう訳にもいかない。栗山さんには無礼を働いてしまったからね。そのお詫びも兼ねてだ。気にすることはない」
 
「(気にするなって方が無理なんですけれど!
え?
私がおかしいの?
あれ?)」
 
一人パニックに陥っていると結城くんが口を挟む。
 
「お詫びの限度越えすぎ。莉恵さん困ってるじゃん。いいよ、父さんは何もしないで。全部俺たちで決めてやるから」
 
「しかし、それでは私の気が収まらないのだが……」
 
「そうね。私もついて行くわ。非礼をお詫びしなくちゃいけないもの」
 
「母さんまで!いいって言ってんのに!」
 
「だめよ。大虎ちゃんも住むんだもの。妥協はしないわ。二部屋あれば良いわよね?2LDKかしら?」
 
結局、あの後も結城くんが色々反論をしていたけれど何を言っても通らず結城くんのお父様、お母様の四人で不動産屋に行った。
希望は聞き入れてもらえるけれど、主に物件を見て抗議しているのは結城くんの両親だけで、私も結城くんも入れない。
私は苦笑いを浮かべ結城くんに至っては嫌そうな顔をしながらため息を吐いている。
担当の人もやりづらそうにしていた。
 
「だから、ここだと大学が遠いでしょう?もっと大学の近くに……」
 
「駅から近いのも捨てがたいだろう?あとは近くにショッピングモールもあれば良いな」
 
「お客様……大変申し上げにくいのですが……ご希望の場所にお客様がご提示された条件に合う物件はないのですが……」
 
「そうか……じゃあ、その条件が合って空いている土地はあるかな?」
 
「と、土地ですか?ええと……」
 
結城くんのお父様のその言葉についに結城くんが声を上げる。
そして、ご両親を黙らせ無事に物件候補がいくつか上がった。
後日、物件を見に行き、最終的には私が気に入った3LDKの部屋に決定し、引っ越し先が決まる。
四月に入りやっと新しい部屋の片付けも終わった。
結城くんは明日から大学が始まるらしく準備をしていて、私も仕事に向けての準備をする。
しばらくして、やっと片付けが終わった。
疲れを癒そうと、買ったばかりのソファーでくつろぐ。

「ふぅ……やっと片付け終わったわね」

「俺も手伝うって言ったのに莉恵さんが自分の分は自分でやる!って言うからでしょ」

そういって結城くんはビールを持ってきて私に渡した。

「お疲れ様。改めて、これからよろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

そういって乾杯する。
これから結城くんとの新たな生活が始まったのだった。
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