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飲み会
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気がつけば五月になっていた。
職場に新入社員を迎えて指導する日々。
一方で、何でもできると思っていた結城くんは実は料理ができないことを知ったり、相変わらず課題やレポートに追われていたりと、私生活も慌ただしい。
最近は定時に上がれないことが多かったけれど今日は久しぶりに定時に上がれたので帰る準備をして会社を出ると声をかけられた。
「栗山さん!」
その声に立ち止まり振り返ると同期の黒髪黒眼の短髪イケメン葉月大助くんが駆け寄ってくる。
「あ。葉月くん。お疲れ様」
「お疲れ様!今帰り?俺もなんだ。良かったらこれから飲みに行かないか?」
「え?ええと……」
その言葉にどうしようか悩んでいるといきなり後ろから抱きつかれた。
「えっ!?」
「栗山さん!?」
思わず驚いて振り向くとそこには茶眼でゆるふわな栗色の髪を結んでいる高校生からの友人で同じく同期の永江聖来がニコニコ笑っている。
「二人とも、お疲れ~!飲みに行くんでしょ?あたしも連れて行ってよ!」
聖来のその言葉に少し戸惑いながらも口を開く葉月くん。
「えっ!?永江さんも!?あ、いや……うん、別に良いけど……」
「わーい!決まり!葉月の奢りね!行こう!莉恵!」
「え?私、まだ行くって言ってないんだけれど……って!聖来!引っ張らないで!」
私は渋々、二人と共に飲みに行った。
お店に着いてから結城くんに連絡を入れる。
「『もしもし?』」
「あぁ、結城くん。ごめんね、今大丈夫?」
「『ん、平気。莉恵さん、今日も残業?』」
「あ、ううん。今日はもう上がれたんだけれど同期と飲みに行くことになっちゃって……帰りが遅くなるから夕飯の準備ができないって連絡」
「『……そっか。分かった。俺のことは気にしなくて良いから楽しんでね?』」
「ありがとう。そうするわ。それじゃあ、帰るときにメッセージ送るわね」
「『うん、了解。あまりにも遅くなったら駅まで迎え行くから電話ちょうだい。絶対に一人で帰って来ないでね』」
「ふふっ、分かったわ。それじゃあね」
「『うん。それじゃあ』」
そう言って電話を切った。
二人がいる席に行くと聖来が冷かしてくる。
「何々~?例の年下彼氏くんにわざわざ連絡したの~?」
「えぇ。最近、一緒に暮らし始めて料理当番は私だから帰りが遅くなるってことと夕飯が作れないって連絡したのよ」
「えっ!?何それ!あたし、初耳なんだけど!」
「そりゃあ、今、初めて言ったから当然でしょうね」
「え?栗山さん、彼氏いるの……?別れたって言ってなかったっけ?」
「えぇ、葉月くんが言っている人とは別れたわ。今は別の新しい彼氏がいるの」
「へ、へぇ……そうなんだ……」
「あははっ!どんまい!葉月!」
「うるさいよ……永江さん」
「え?私、何かまずいこと言ったかしら?」
「言ってないよ!それより、莉恵の年下彼氏くんの話聞かせてよ~」
「え、えぇ?聞いてどうするの?大した話なんてないわよ」
「だって、莉恵、年下はちょっとって言ってたじゃん!なのに、新しい彼氏は年下でしょ?気になっちゃって」
「んー……確かに年下は無理って思ってたけど……彼は私が困ったとき何度も助けてくれて……付き合う前も後も変わらず私をすごく大事にしてくれるの」
「ふーん……年下彼氏くん、結構お金持ってるんだね~!いいなぁ、羨ましい!今度会わせてよ!」
「あ!お、俺も会いたい!」
「えっ!?葉月くんまで!?私は別に良いけれど……向こうがなんて言うか……」
そう言ったが結城くんなら多分、お願いすれば会ってくれると思う。
「(結城くんは私を信用してくれているからか交流関係とか一切聞いてこないし……
さっきだって同期と飲むって言ったら男はいる?とか聞かないし……
ちょっとだけ、ちょっとだけならヤキモチ妬かせてみても良いよね……?)」
そんなことを考えながら三人で他愛もない話をした。
新入社員の話だったり上司の話だったり……
解散する頃には夜の十時を回っていて私は完全に酔っぱらっていた。
「もう、莉恵~!ハメ外し過ぎ!一人で帰れるの?」
「らいじょーぶ!れんれん、へーき!」
「く、栗山さん。全然大丈夫そうじゃないよ……?」
「もう、ほら!年下彼氏くん呼びなって!」
「えー?もう、しょーがないなー!」
そう言ってゆーきくんに電話をかけるとすぐに通話になる。
「『もしもし?』」
「あ!ゆーきくん!あのねぇ、今から帰るねぇ?」
「『……莉恵さん、酔っぱらってる?』」
「うーうん!れんれん、酔ってらいよ~!」
「『……そこまで迎えに行くから場所教えて』」
「え~?迎えに来てくれるの~?嬉し~!えーっとねぇ、ここはぁ~……分かんない!」
「『……じゃあ、同期の人に代わって。場所聞くから』」
「えー!やだ!ゆーきくんとお話していたい~!」
「『……分かった。じゃあ、飲んでた店の名前教えて。仕事場の近くでしょ?』」
「うん!えっとねぇ、一体って居酒屋!」
「『ん。分かった。店の近くにいてね?今から行くから』」
「はーい!」
「『それじゃあ、切るよ?』」
「え!だめ!私とお話して!」
「『んー……じゃあ、今日はどんな話で盛り上がったの?』」
「えっとねぇ~……仕事の話と~ゆーきくんの話!」
「『そっかぁ、楽しかった?』」
「うん!とーっても!」
「『よかったね』」
「うん!」
そんな話をしていると聖来が私から電話を奪った。
「あ!せーら!返して!」
「もう!話が全然見えないの!ちょっとでいいから代わって!もしもしー?莉恵の彼氏くん?」
聖来が結城くんと何かを話しているとしばらくして目の前で車が止まる。
後部座席から結城くんが降りてきた。
「あ~、ゆーきくんだぁ!」
「どうも、初めまして。莉恵さんの迎えに来ました。結城大虎です。今日はご迷惑をおかけしてすみません。あとは俺がどうにかするんで大丈夫ですよ」
ゆーきくんはそう言うと聖来と葉月くんに頭を下げて私の手を引く。
「もう、楽しんでねとは言ったけど飲み過ぎてとは言ってないよ?莉恵さん、聞いてる?」
「えへへ~ゆーきくんがいる~」
「うん、じゃあ、車乗ろう。あ、その前に同期さんに謝って。迷惑かけたんだから」
「えぇ~?うーん……せーら、はづきくん、なんかごめんねぇ?」
「いいよ!また色々話聞かせてよね!」
「あ、う、うん。お、お疲れ……気をつけて帰ってね。栗山さん」
二人の返事を聞いてから私は車に乗り込んだ。
ゆーきくんは何故か乗らずにドアを閉める。
どうやら二人と話しているみたい。
しばらくするとゆーきくんは頭を下げてから車に乗ってきた。
「瀬羽、出して」
「はい、かしこまりました」
車が動き出す。
しばらくして気持ち悪くなってきた。
「うぅ……気持ち悪い……」
「だろうね。吐きそうならこれに吐いて。水も置いておくよ」
そう言ってポリ袋と水を渡してくれる。
気持ち悪さと闘い続けてやっと家に着いた。
職場に新入社員を迎えて指導する日々。
一方で、何でもできると思っていた結城くんは実は料理ができないことを知ったり、相変わらず課題やレポートに追われていたりと、私生活も慌ただしい。
最近は定時に上がれないことが多かったけれど今日は久しぶりに定時に上がれたので帰る準備をして会社を出ると声をかけられた。
「栗山さん!」
その声に立ち止まり振り返ると同期の黒髪黒眼の短髪イケメン葉月大助くんが駆け寄ってくる。
「あ。葉月くん。お疲れ様」
「お疲れ様!今帰り?俺もなんだ。良かったらこれから飲みに行かないか?」
「え?ええと……」
その言葉にどうしようか悩んでいるといきなり後ろから抱きつかれた。
「えっ!?」
「栗山さん!?」
思わず驚いて振り向くとそこには茶眼でゆるふわな栗色の髪を結んでいる高校生からの友人で同じく同期の永江聖来がニコニコ笑っている。
「二人とも、お疲れ~!飲みに行くんでしょ?あたしも連れて行ってよ!」
聖来のその言葉に少し戸惑いながらも口を開く葉月くん。
「えっ!?永江さんも!?あ、いや……うん、別に良いけど……」
「わーい!決まり!葉月の奢りね!行こう!莉恵!」
「え?私、まだ行くって言ってないんだけれど……って!聖来!引っ張らないで!」
私は渋々、二人と共に飲みに行った。
お店に着いてから結城くんに連絡を入れる。
「『もしもし?』」
「あぁ、結城くん。ごめんね、今大丈夫?」
「『ん、平気。莉恵さん、今日も残業?』」
「あ、ううん。今日はもう上がれたんだけれど同期と飲みに行くことになっちゃって……帰りが遅くなるから夕飯の準備ができないって連絡」
「『……そっか。分かった。俺のことは気にしなくて良いから楽しんでね?』」
「ありがとう。そうするわ。それじゃあ、帰るときにメッセージ送るわね」
「『うん、了解。あまりにも遅くなったら駅まで迎え行くから電話ちょうだい。絶対に一人で帰って来ないでね』」
「ふふっ、分かったわ。それじゃあね」
「『うん。それじゃあ』」
そう言って電話を切った。
二人がいる席に行くと聖来が冷かしてくる。
「何々~?例の年下彼氏くんにわざわざ連絡したの~?」
「えぇ。最近、一緒に暮らし始めて料理当番は私だから帰りが遅くなるってことと夕飯が作れないって連絡したのよ」
「えっ!?何それ!あたし、初耳なんだけど!」
「そりゃあ、今、初めて言ったから当然でしょうね」
「え?栗山さん、彼氏いるの……?別れたって言ってなかったっけ?」
「えぇ、葉月くんが言っている人とは別れたわ。今は別の新しい彼氏がいるの」
「へ、へぇ……そうなんだ……」
「あははっ!どんまい!葉月!」
「うるさいよ……永江さん」
「え?私、何かまずいこと言ったかしら?」
「言ってないよ!それより、莉恵の年下彼氏くんの話聞かせてよ~」
「え、えぇ?聞いてどうするの?大した話なんてないわよ」
「だって、莉恵、年下はちょっとって言ってたじゃん!なのに、新しい彼氏は年下でしょ?気になっちゃって」
「んー……確かに年下は無理って思ってたけど……彼は私が困ったとき何度も助けてくれて……付き合う前も後も変わらず私をすごく大事にしてくれるの」
「ふーん……年下彼氏くん、結構お金持ってるんだね~!いいなぁ、羨ましい!今度会わせてよ!」
「あ!お、俺も会いたい!」
「えっ!?葉月くんまで!?私は別に良いけれど……向こうがなんて言うか……」
そう言ったが結城くんなら多分、お願いすれば会ってくれると思う。
「(結城くんは私を信用してくれているからか交流関係とか一切聞いてこないし……
さっきだって同期と飲むって言ったら男はいる?とか聞かないし……
ちょっとだけ、ちょっとだけならヤキモチ妬かせてみても良いよね……?)」
そんなことを考えながら三人で他愛もない話をした。
新入社員の話だったり上司の話だったり……
解散する頃には夜の十時を回っていて私は完全に酔っぱらっていた。
「もう、莉恵~!ハメ外し過ぎ!一人で帰れるの?」
「らいじょーぶ!れんれん、へーき!」
「く、栗山さん。全然大丈夫そうじゃないよ……?」
「もう、ほら!年下彼氏くん呼びなって!」
「えー?もう、しょーがないなー!」
そう言ってゆーきくんに電話をかけるとすぐに通話になる。
「『もしもし?』」
「あ!ゆーきくん!あのねぇ、今から帰るねぇ?」
「『……莉恵さん、酔っぱらってる?』」
「うーうん!れんれん、酔ってらいよ~!」
「『……そこまで迎えに行くから場所教えて』」
「え~?迎えに来てくれるの~?嬉し~!えーっとねぇ、ここはぁ~……分かんない!」
「『……じゃあ、同期の人に代わって。場所聞くから』」
「えー!やだ!ゆーきくんとお話していたい~!」
「『……分かった。じゃあ、飲んでた店の名前教えて。仕事場の近くでしょ?』」
「うん!えっとねぇ、一体って居酒屋!」
「『ん。分かった。店の近くにいてね?今から行くから』」
「はーい!」
「『それじゃあ、切るよ?』」
「え!だめ!私とお話して!」
「『んー……じゃあ、今日はどんな話で盛り上がったの?』」
「えっとねぇ~……仕事の話と~ゆーきくんの話!」
「『そっかぁ、楽しかった?』」
「うん!とーっても!」
「『よかったね』」
「うん!」
そんな話をしていると聖来が私から電話を奪った。
「あ!せーら!返して!」
「もう!話が全然見えないの!ちょっとでいいから代わって!もしもしー?莉恵の彼氏くん?」
聖来が結城くんと何かを話しているとしばらくして目の前で車が止まる。
後部座席から結城くんが降りてきた。
「あ~、ゆーきくんだぁ!」
「どうも、初めまして。莉恵さんの迎えに来ました。結城大虎です。今日はご迷惑をおかけしてすみません。あとは俺がどうにかするんで大丈夫ですよ」
ゆーきくんはそう言うと聖来と葉月くんに頭を下げて私の手を引く。
「もう、楽しんでねとは言ったけど飲み過ぎてとは言ってないよ?莉恵さん、聞いてる?」
「えへへ~ゆーきくんがいる~」
「うん、じゃあ、車乗ろう。あ、その前に同期さんに謝って。迷惑かけたんだから」
「えぇ~?うーん……せーら、はづきくん、なんかごめんねぇ?」
「いいよ!また色々話聞かせてよね!」
「あ、う、うん。お、お疲れ……気をつけて帰ってね。栗山さん」
二人の返事を聞いてから私は車に乗り込んだ。
ゆーきくんは何故か乗らずにドアを閉める。
どうやら二人と話しているみたい。
しばらくするとゆーきくんは頭を下げてから車に乗ってきた。
「瀬羽、出して」
「はい、かしこまりました」
車が動き出す。
しばらくして気持ち悪くなってきた。
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