私、これからいきます。

蓮ヶ崎 漣

文字の大きさ
37 / 63

約束

しおりを挟む
私は大虎くんの向かいに座ってから口を開いた。
 
「ありがとう。もう寝ても良いわよ?」
 
「ううん。明日は午後からだからもう少し起きてるよ」
 
「そう?眠かったら寝て良いからね?」
 
「はいはい。ほら、早く食べないと冷めちゃうよ?」
 
そう言われ冷凍のカルボナーラを食べる。
なかなか美味しい。
食べ終えて自分の部屋に行こうとすると大虎くんに呼び止められた。
 
「あれ?莉恵さん、寝ないの?」
 
「えぇ。仕事が残っているから少しでも進めておきたいの。だから、大虎くんは寝て?」
 
「んー……じゃあ、おにぎりとか軽食作るよ!それくらいなら俺でも作れると思うし」
 
「えっ!?い、良いわよ!お腹空いていないし何時までやるか分からないから……」
 
「なら、なおさらだね。仕事に遅刻したら本末転倒でしょ?莉恵さんが無理しすぎないように見張ってるー」
 
大虎くんはやる気満々のようで渋々それを了承する。
 
「……分かったわ。でも、寝たくなったらいつでも寝て良いからね?」
 
「うん、分かった」
 
自分の部屋に入って仕事の続きを始めた。
 
「(あの課長……
本当に理不尽なくらい自分の仕事押し付けてきて!
これとか今やらなくても良いんじゃないの!?
早く終わらせて大虎くんに手料理作ってあげなくちゃ……
じゃないと絶対大虎くんの健康に良くない……
そういえば、大虎くん、最近何食べたんだろう?)」
 
ふと気になったので聞いてみた。
 
「ねぇ、大虎くん」
 
「ん?」
 
「最近、夕飯は何食べていたの?」
 
「あぁ、最近はまかない……じゃなくて、コンビニ弁当とかだったかな!」
 
「え?今、まかないって言ってなかった?」
 
「い、言ってないよ?ファミレスで外食とかお弁当とかそういうの食べてた!」
 
「そう……やっぱり偏っているのね?」
 
「え……?そ、そんなことないよ?」
 
「大虎くん、揚げ物大好きよね?あんまり食べられなかったからって。ここ最近は野菜を食べずに唐揚げとかトンカツとかばっかり食べていたんでしょう?」
 
「……そんなことないよ?キャベツも食べてたし」
 
「キャベツだけ?」
 
私がそう聞くと大虎くんは何も言わない。
寝たのかと思い思わず振り返ると大虎くんはバツが悪そうな顔をしていた。
思わず私は笑ってしまう。
 
「……なんで笑うの?」
 
「ふふっ、だって、大虎くんが可愛かったから」
 
「それ、嬉しくないからね?ほらー、手が止まってるよ?」
 
そう言われて再び仕事を始めた。
どれくらいの時間が経ったのか三件の案件を終わらせて一息つくと大虎くんがココアを持ってきてくれる。
ふと時計を見ると、夜中の三時を過ぎていた。
 
「お疲れ様。はい、ココア」
 
「ありがとう。大虎くん、本当にもう寝て良いのよ?もう夜中の三時過ぎているし……」
 
「俺のことは気にしなくていいの!ねぇ、莉恵さん」
 
「何?」
 
「九月の中旬くらいまでに休み取れる?三日くらい」
 
「どうして?」
 
「……旅行、行かない?二泊三日くらい」
 
「旅行!?」
 
「うん。莉恵さんが行きたいとこ行こ?」
 
「行きたい!旅行の準備とか余韻に浸りたいから一週間くらい休み取るわ!九月の二週目くらいで良いかしら?」
 
「いつでもいいよ。よかった。断られたらどうしようかと思ってたんだよね」
 
「どうして?私が大虎くんの要望を聞かないことがある?」
 
「そりゃあたくさんあるでしょ。ご飯とか三日に一回くらいしか俺の要望聞いてもらってないよ?」
 
「それは大虎くんが唐揚げ、トンカツ、コロッケって揚げ物しか希望を言わないからでしょ!」
 
「だってさ、なかなか食べれなかったんだよ?飽きるくらい食べたいじゃん」
 
「何より許せないのが……」
 
「えっ!?許せないことがあるの!?」
 
「大虎くんの体重がどれだけカロリーを摂っても変わらないことよ!!」
 
「え、えー?そんなことないけど……」
 
「じゃあ、私と付き合った当初の体重は?」
 
「え、50kgくらいかな……」
 
「今は!?」
 
「……50kgだけど」
 
「ほら!やっぱり!ズルい!筋肉が付いている訳でもないのに!」
 
「うわ!それ傷つく奴!筋肉これでも付いた方だからね!?それに大学が広くて講義のたびにあっちこっち歩いてるから運動になってるだけだよ!」
 
「うぅ、私、ダイエットしているのに!」
 
「えっ!?莉恵さん、今でも十分細いからダイエットなんてしなくていいよ!?」
 
「そんな気休め要らないわ!」
 
「気休めって……まぁ、元気出たならいいんだけど。とにかく!せっかく旅行に行くんだから無理して風邪とか引いちゃだめだからね?」
 
「うっ……分かったわ」
 
「ん。約束」
 
大虎くんとそう約束する。
無理しない程度に仕事を頑張り無事に一週間の夏季休暇を手に入れた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

好きな人の好きな人

ぽぽ
恋愛
"私には何年も思い続ける初恋相手がいる。" 初恋相手に対しての執着と愛の重さは日々増していくばかりで、彼の1番近くにいれるの自分が当たり前だった。 恋人関係がなくても、隣にいれるだけで幸せ……。 そう思っていたのに、初恋相手に恋人兼婚約者がいたなんて聞いてません。

危険な台風

詩織
恋愛
確かに台風が接近するとは聞いていた。 けど電車も止まり、停電までって、そこまでになるとは。 残業で、会社に居た私はここに居るしかなく...

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

『愛が切なくて』- すれ違うほど哀しくて  

設楽理沙
恋愛
砂央里と斎藤、こじれてしまった糸(すれ違い)がほどけていく様子を描いています。 ◆都合上、[言う、云う]混合しています。うっかりミスではありません。   ご了承ください。 斉藤准一 税理士事務所勤務35才 斎藤紀子    娘 7才  毒妻:  斉藤淳子  専業主婦   33才 金遣いが荒い 高橋砂央里  会社員    27才    山本隆行  オートバックス社員 25才    西野秀行   薬剤師   22才  岡田とま子  主婦    54才   深田睦子  見合い相手  22才 ――――――――――――――――――――――― ❧イラストはAI生成画像自作 2025.3.3 再☑済み😇

先輩、お久しぶりです

吉生伊織
恋愛
若宮千春 大手不動産会社 秘書課 × 藤井昂良 大手不動産会社 経営企画本部 『陵介とデキてたんなら俺も邪魔してたよな。 もうこれからは誘わないし、誘ってこないでくれ』 大学生の時に起きたちょっとした誤解で、先輩への片想いはあっけなく終わってしまった。 誤解を解きたくて探し回っていたが見つけられず、そのまま音信不通に。 もう会うことは叶わないと思っていた数年後、社会人になってから偶然再会。 ――それも同じ会社で働いていた!? 音信不通になるほど嫌われていたはずなのに、徐々に距離が縮む二人。 打ち解けあっていくうちに、先輩は徐々に甘くなっていき……

【完結】僕ら二度目のはじめまして ~オフィスで再会した、心に残ったままの初恋~

葉影
恋愛
高校の頃、誰よりも大切だった人。 「さ、最近はあんまり好きじゃないから…!」――あの言葉が、最後になった。 小島久遠は、新たな職場で、元カレとまさかの再会を果たす。 若くしてプロジェクトチームを任される彼は、 かつて自分だけに愛を囁いてくれていたことが信じられないほど、 遠く、眩しい存在になっていた。 優しかったあの声は、もう久遠の名前を呼んでくれない。 もう一度“はじめまして”からやり直せたら――そんなこと、願ってはいけないのに。 それでも—— 8年越しのすれ違いは、再会から静かに動き出す。 これは、終わった恋を「もう一度はじめる」までの物語。

大好きな背中

詩織
恋愛
4年付き合ってた彼氏に振られて、同僚に合コンに誘われた。 あまり合コンなんか参加したことないから何話したらいいのか… 同じように困ってる男性が1人いた

嘘つき同士は真実の恋をする。

濘-NEI-
恋愛
都内郊外のリゾートホテルでソムリエとして働く瑞穂はワイン以上にゲームが大好き。 中でもオンラインゲーム〈グラズヘイム〉が大好きで、ロッソの名前でログインし、オフの時間と給料の全てを注ぎ込むほどのヘビーユーザー。 ある日ゲーム仲間とのオンライン飲み会で、親から結婚を急かされている話を愚痴ったところ、ギルマスのタラントの友人で、ゲームの中でもハイランカーのエルバに恋人役を頼めば良いと話が盛り上がり、話は急展開。 そしてエルバと直接会うことになった瑞穂だったが、エルバの意外な正体を知ることに⁉︎ Rシーンは※ ヒーロー視点は◇をつけてあります。 ★この作品はエブリスタさんでも公開しています

処理中です...