私、これからいきます。

蓮ヶ崎 漣

文字の大きさ
46 / 63

勘違い②

しおりを挟む
俺は思わず深いため息が出る。
このあとどうしようかと考えているとやっと美琴が口を開いた。
 
「……何、あの女。マジで有り得ない。言いがかりじゃん。お前こそトラの何を知ってるんだっつーの!ムカつく」
 
「そっか。確かにあの人も腹立たしいけど、今、俺が一番腹立ってんのはお前だよ」
 
「え?何で?」
 
「何で?え?それ聞くの?美琴がややこしくしたんだろ!何で、莉恵さんに男ですって言わなかった訳!?」
 
「だって、今、僕、完璧に女装してる訳じゃん?ミスコンで一位取るくらい完璧な女装な訳。そんな僕が実は男ですって言ったところで信じてくれる訳ないじゃん。服脱げと?」
 
「あぁ、ぜひ、服を脱いで証明してほしかったね!只でさえ、俺のこの格好を見られたことも精神的大ダメージなのにさらに追い打ちかけられた気分。こうなるって予想してたから泰仁脅してまで会わせなかったのに。予想以上に酷い結果だし……」
 
「そんなの知らないし。それに僕、莉恵さん嫌いかも。トラの話聞く気まったくなかったじゃん。勝手に浮気って決めつけてさ」
 
「確かに話聞いてくれる感じじゃなかったけど、それはいつからあそこにいてどこから話を聞いてたかの問題だろ。全部聞かれてたとしたら美琴の悪ふざけが原因だしな。何がキスしてくれる?だよ。キスしないにしろ俺が大人しく言うこと聞けばそりゃあ、勘違いもするだろ」
 
「だってさー!泰仁が悪いんだよ!せっかく、こんな綺麗な格好してあげたのに!非番じゃなかったとか言うし!」
 
「だからって俺を巻き込むのは止めろよ。本当に最悪。どうしてくれる訳?」
 
「どうもこうもしないよ。僕は別れてくれる方が良いもん。あの人のどこが良いのか全く分かんないし」
 
「美琴……やっていいことと悪いことがあるよな?お前は俺の悪いことに触れたの。美琴じゃなかったらぶん殴ってボコボコにするくらいの怒りに触れてる訳。分かる?」
 
「あぁ、大虎がめっちゃくちゃ怒ってるのは理解した。けど、大虎がそこまで怒るほどあの人って良いの?本当にどこが良いのか全く分かんないんだけど。別に普通じゃん。汚くもないけど綺麗でもない」
 
「……あのな?莉恵さんは綺麗だよ。少なくとも俺にとっては。無理に頑張らなくていいってあのときの俺には一番必要な言葉だったから。多分、その言葉がなかったら俺、今、生きてないよ。それくらい俺の心を助けてくれた。だから俺は残りの人生をかけて莉恵さんを幸せにしたいと思ってる。できるなら俺が。莉恵さんがそれを望むなら俺じゃなくてもいいんだ。でも、こんな別れ方は絶対にしたくない。だからさ、美琴。頼むから誤解を解いてほしい」
 
俺がそう言うと美琴はしばらく考え込んだ後、溜息を吐いて口を開く。
 
「……惚気話を聞く気はなかったんだけど」
 
「泰仁のいいところは?って聞かれたら美琴も惚気話になるだろ」
 
「……そうだね。はいはい。確かに僕の悪ふざけがすぎた。ごめん。でも、どうした良いの?多分、会ってくれないでしょ?」
 
「それなんだよね……どうしたもんか……」
 
二人で悩んでいたら俺の携帯が鳴った。
開くと泰仁からの電話で少し驚きながらも電話に出る。
美琴にも聴こえるようにスピーカーモードにした。
 
「もしもし?」
 
「『お!よかった!出たな!今さっき、栗山さんから電話があって相談したいことがあるから今度会えないかって聞かれたんだけどなんかあったのか?』」
 
「「ナイスタイミング!!泰仁!!」」
 
「『は?美琴も一緒?……おい、まさかとは思うけど美琴が原因とか言わないよな?』」
 
「ごめーん!泰仁!僕が原因!」
 
「『……おいおい……マジか』」
 
泰仁にこれまでの一部始終を全部話す。
聞き終わった泰仁は深いため息を吐いた。
そして、申し訳なさそうに口を開く。
 
「『……マジで悪い、トラ。今回は否応なく美琴が悪い。でも、つまり、栗山さんの誤解を解けばいいんだよな?美琴が男って証明すればいい訳だ』」
 
「そうなんだよ!でも、絶対会ってくれないじゃん?だから、泰仁に相談する日に僕がそこに行けば問題なくない!?うわー!僕って天才!」
 
「……天才ならそもそもこんな問題起こさないだろ」
 
「『そうだぞ。美琴。お前、今回ばっかりは本当に反省しろよ』」
 
「……分かってるよー」
 
こうして泰仁にも協力してもらって何とか作戦を立てたのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

好きな人の好きな人

ぽぽ
恋愛
"私には何年も思い続ける初恋相手がいる。" 初恋相手に対しての執着と愛の重さは日々増していくばかりで、彼の1番近くにいれるの自分が当たり前だった。 恋人関係がなくても、隣にいれるだけで幸せ……。 そう思っていたのに、初恋相手に恋人兼婚約者がいたなんて聞いてません。

危険な台風

詩織
恋愛
確かに台風が接近するとは聞いていた。 けど電車も止まり、停電までって、そこまでになるとは。 残業で、会社に居た私はここに居るしかなく...

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

『愛が切なくて』- すれ違うほど哀しくて  

設楽理沙
恋愛
砂央里と斎藤、こじれてしまった糸(すれ違い)がほどけていく様子を描いています。 ◆都合上、[言う、云う]混合しています。うっかりミスではありません。   ご了承ください。 斉藤准一 税理士事務所勤務35才 斎藤紀子    娘 7才  毒妻:  斉藤淳子  専業主婦   33才 金遣いが荒い 高橋砂央里  会社員    27才    山本隆行  オートバックス社員 25才    西野秀行   薬剤師   22才  岡田とま子  主婦    54才   深田睦子  見合い相手  22才 ――――――――――――――――――――――― ❧イラストはAI生成画像自作 2025.3.3 再☑済み😇

先輩、お久しぶりです

吉生伊織
恋愛
若宮千春 大手不動産会社 秘書課 × 藤井昂良 大手不動産会社 経営企画本部 『陵介とデキてたんなら俺も邪魔してたよな。 もうこれからは誘わないし、誘ってこないでくれ』 大学生の時に起きたちょっとした誤解で、先輩への片想いはあっけなく終わってしまった。 誤解を解きたくて探し回っていたが見つけられず、そのまま音信不通に。 もう会うことは叶わないと思っていた数年後、社会人になってから偶然再会。 ――それも同じ会社で働いていた!? 音信不通になるほど嫌われていたはずなのに、徐々に距離が縮む二人。 打ち解けあっていくうちに、先輩は徐々に甘くなっていき……

【完結】僕ら二度目のはじめまして ~オフィスで再会した、心に残ったままの初恋~

葉影
恋愛
高校の頃、誰よりも大切だった人。 「さ、最近はあんまり好きじゃないから…!」――あの言葉が、最後になった。 小島久遠は、新たな職場で、元カレとまさかの再会を果たす。 若くしてプロジェクトチームを任される彼は、 かつて自分だけに愛を囁いてくれていたことが信じられないほど、 遠く、眩しい存在になっていた。 優しかったあの声は、もう久遠の名前を呼んでくれない。 もう一度“はじめまして”からやり直せたら――そんなこと、願ってはいけないのに。 それでも—— 8年越しのすれ違いは、再会から静かに動き出す。 これは、終わった恋を「もう一度はじめる」までの物語。

大好きな背中

詩織
恋愛
4年付き合ってた彼氏に振られて、同僚に合コンに誘われた。 あまり合コンなんか参加したことないから何話したらいいのか… 同じように困ってる男性が1人いた

嘘つき同士は真実の恋をする。

濘-NEI-
恋愛
都内郊外のリゾートホテルでソムリエとして働く瑞穂はワイン以上にゲームが大好き。 中でもオンラインゲーム〈グラズヘイム〉が大好きで、ロッソの名前でログインし、オフの時間と給料の全てを注ぎ込むほどのヘビーユーザー。 ある日ゲーム仲間とのオンライン飲み会で、親から結婚を急かされている話を愚痴ったところ、ギルマスのタラントの友人で、ゲームの中でもハイランカーのエルバに恋人役を頼めば良いと話が盛り上がり、話は急展開。 そしてエルバと直接会うことになった瑞穂だったが、エルバの意外な正体を知ることに⁉︎ Rシーンは※ ヒーロー視点は◇をつけてあります。 ★この作品はエブリスタさんでも公開しています

処理中です...