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【名演技篇】第八章 ようこそ、暗黒家族へ
0801 七枚の鉄幕
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「もう一回行かせてください!きっとみんなを連れて帰ります!」
七枚の垂れ幕に向けて、リカは全身全霊で懇願した。
でも、その震えた声は幕の後ろの人たちに感情の波紋一つも付けられなかった。
どのくらい経ったのか、やっと返事があった。
右端から二番目の幕から、しわがれた中年男の声がした。
「あなたの任務はもう失敗した。相手はわれわれの提案を断って、あなた以外の人は全没。我が万代家の秘密も神農グループにバレて、契約まで破棄された」
男は皮肉も隠せず、クスクスと笑った。
「こんな大惨事になった以上、もう二度とチャンスがないんだ」
リカは血が出るほど、強く唇を噛んでいた。
この男の名前は落合重則。万代家最高権利者の一人。レイの父とカツオの母の実の兄。
叔父なのに、姪と甥の生死にちっとも心配していないようだ。
リカの報告を聞いても、「証拠もないのに、わたしの姪と甥に責任を押し付けるのを止めてくれ。隊長としてみっともないぞ」と冷静にリカを否定しただけだ。
レイとカツオに指示を出したエンジェは入院した。病人を配慮するために、尋問は退院の後になった。
けど、今は責任の究明より、もっと大事なことがある。
一時も早く異世界に戻って、皆を連れ戻さなければならない!
「任務の失敗を認めます。チャンスはいりません。でも、あの九人は危ないです。私でなくてもいいから、今すぐ彼たちに救援を出してください!」
「落ち着いて、リカ」
一番右の幕の後ろから、太い女の声がした。
「あの九人のこと、残念と思うわ。でも今は、扉を開ける霊力が足ないのよ。たとえ扉を開けたとしても、予備の『霊護』もない。守りのない状態で生きて通路を通せない。『霊護』を作るのにどれ程時間がかかるのか、知っているでしょ」
「霊力が足りないなら、家の高霊力者たちを呼び戻せばいい…万代家は『霊護』をすぐ作れないなら、ほかの異能力組織に頼めば……」
「何を言っているのよ!」
さっきまで温和な女の声は、いきなり横暴になった。
「あのレベルの『霊護』を作るのは非常に難しい。うち以外にできるのは、新世界くらいだ。家族の秘密を新世界に教えるつもりなの?!そんなことを考えているなら、すぐ頭を冷やしてきなさい!」
「……」
リカが拳を握って黙っていたら、真ん中の幕の右から、老いた男子の声が響いた。
「リカ、家が今回の任務にどのくらい力を注いだのか、貴女は誰よりも分かっているはずだ」
老いた声だけど、強い存在感があった。
穏やかな口調から、圧迫感と教訓の意味がはっきり伝わってくる。
「継承人の貴女を信じているから、その任務を貴女に任せた。受け入れにくい結果だと分かるが、もう挽回できないことだ。諦めということを学ぶのも人生の大事な一環だ」
「人の命を諦めるのを、学ぶということ……ですか?」
老人の返事がなかったら、冷静に戻った太い声の女は横から口を挟んだ。
「確かに、失った人材が惜しい。だけど、彼たちの空白は埋められないものでもないわ。まあ、あなたが心配するようなことではないよ」
「心配するのは、空白……だけですか」
リカの質問に、もう答えが来ない。
七つの幕の真ん中の一枚、黒い龍が描かれた幕は、まるで希望を遮断する鉄幕のように見える。
リカは小さい頃から知っていた。
「家」という文字を使っていても、万代家は人情澆薄のところだ。理想云々を誓って、この家に入った多くの人々は、自分の利益だけを考えている。
それでも、こんな簡単に人を捨てるとは思わなかった。
「人材」?いいえ、ただの「材」だろう。
あの人たちは「材」としての価値が低いから、彼たちの救出に稀少資源を分けるわけにはいかない。
万代家の人材の価値は命ではなく、「能力」で決められるものだ。
万代家は独自の基準で異能力を五つの種類に分類した。
「身体強化系」、「精神干渉系」、「道具使い系」、「自然操縦系」、「秘術系」。
その中で、高い価値があると認められるのは「秘術系」と「精神干渉系」。
この二種類の力を持つ人が、万代家の基盤を支えているから。
特に「秘術系」。
ほかの四種類の能力は、一般人でも理解できる「人の体」、「人の精神」、「人工もの」、「自然もの」を操る能力だけど、秘術系はほぼ使用者しか理解できない何かの力を操る能力だ。
教えられた知識によると、ほかの四種類の能力より、単純のエネルギー操作に近い能力だけど、もっとを不思議なことができる。
例えば、リカの母は条件によって、想像中の物を一時的に具現化することができる。
父は、人のエネルギーそのものを操る能力を持っている。そして、エネルギー操作によって、異能力者の力の強弱を影響出来る。異能力を操る異能力とも言える。
秘術系の不思議な力を持って、万代家は一般社会の偉いものや有力者たちと多くの取引をした。
どんな目標を成し遂げるにも、「よい運」、「恵まれた環境」、「十分な本人の力」が必要だ。
秘術系の能力者は、エネルギーの操作によって、この三者を整えることができる。
本人のエネルギーを強化し、周りの障害を取り除き、想像もつかない大きな幸運を引き寄せる。
見えない「エネルギー」なんかで現実が変わるもんか、とあざ笑う人がたくさんいたが、万代家は重なる事実で「秘術」の有効性を証明していた。
当選不可能な政治家は選挙の前に、偶然に溺水の子供を救い、盛大に報道され、見事に逆転した。
倒産寸前な銀行家の前で、いきなり出資者が現れて、これまで断られた莫大な融資も手に入れた。
老いた王族は、不治の病から奇跡的に回復した。
たとえ秘術のおかげではなく、単なる万代家の工作であっても、目的が達成できば、大体のクライアントは手段なんか気にしない。
まして、世の中の偉いものたちは、ほとんど「神秘学」を信じている。喜んで万代家と手を組む人は絶えずに寄ってくる。
それ以外に、万代家は自ら進んで見込んだ人に援助を出して、後日に報酬を回収する形のプロジェクトもやっている。
イズルの神農グループが成立した当初、その背後に万代家の影があったと言われている。
とにかく、秘術系の異能力者のおかげで、万代家は世界中で、財力と権力のコネを多く入手した。
七枚の垂れ幕に向けて、リカは全身全霊で懇願した。
でも、その震えた声は幕の後ろの人たちに感情の波紋一つも付けられなかった。
どのくらい経ったのか、やっと返事があった。
右端から二番目の幕から、しわがれた中年男の声がした。
「あなたの任務はもう失敗した。相手はわれわれの提案を断って、あなた以外の人は全没。我が万代家の秘密も神農グループにバレて、契約まで破棄された」
男は皮肉も隠せず、クスクスと笑った。
「こんな大惨事になった以上、もう二度とチャンスがないんだ」
リカは血が出るほど、強く唇を噛んでいた。
この男の名前は落合重則。万代家最高権利者の一人。レイの父とカツオの母の実の兄。
叔父なのに、姪と甥の生死にちっとも心配していないようだ。
リカの報告を聞いても、「証拠もないのに、わたしの姪と甥に責任を押し付けるのを止めてくれ。隊長としてみっともないぞ」と冷静にリカを否定しただけだ。
レイとカツオに指示を出したエンジェは入院した。病人を配慮するために、尋問は退院の後になった。
けど、今は責任の究明より、もっと大事なことがある。
一時も早く異世界に戻って、皆を連れ戻さなければならない!
「任務の失敗を認めます。チャンスはいりません。でも、あの九人は危ないです。私でなくてもいいから、今すぐ彼たちに救援を出してください!」
「落ち着いて、リカ」
一番右の幕の後ろから、太い女の声がした。
「あの九人のこと、残念と思うわ。でも今は、扉を開ける霊力が足ないのよ。たとえ扉を開けたとしても、予備の『霊護』もない。守りのない状態で生きて通路を通せない。『霊護』を作るのにどれ程時間がかかるのか、知っているでしょ」
「霊力が足りないなら、家の高霊力者たちを呼び戻せばいい…万代家は『霊護』をすぐ作れないなら、ほかの異能力組織に頼めば……」
「何を言っているのよ!」
さっきまで温和な女の声は、いきなり横暴になった。
「あのレベルの『霊護』を作るのは非常に難しい。うち以外にできるのは、新世界くらいだ。家族の秘密を新世界に教えるつもりなの?!そんなことを考えているなら、すぐ頭を冷やしてきなさい!」
「……」
リカが拳を握って黙っていたら、真ん中の幕の右から、老いた男子の声が響いた。
「リカ、家が今回の任務にどのくらい力を注いだのか、貴女は誰よりも分かっているはずだ」
老いた声だけど、強い存在感があった。
穏やかな口調から、圧迫感と教訓の意味がはっきり伝わってくる。
「継承人の貴女を信じているから、その任務を貴女に任せた。受け入れにくい結果だと分かるが、もう挽回できないことだ。諦めということを学ぶのも人生の大事な一環だ」
「人の命を諦めるのを、学ぶということ……ですか?」
老人の返事がなかったら、冷静に戻った太い声の女は横から口を挟んだ。
「確かに、失った人材が惜しい。だけど、彼たちの空白は埋められないものでもないわ。まあ、あなたが心配するようなことではないよ」
「心配するのは、空白……だけですか」
リカの質問に、もう答えが来ない。
七つの幕の真ん中の一枚、黒い龍が描かれた幕は、まるで希望を遮断する鉄幕のように見える。
リカは小さい頃から知っていた。
「家」という文字を使っていても、万代家は人情澆薄のところだ。理想云々を誓って、この家に入った多くの人々は、自分の利益だけを考えている。
それでも、こんな簡単に人を捨てるとは思わなかった。
「人材」?いいえ、ただの「材」だろう。
あの人たちは「材」としての価値が低いから、彼たちの救出に稀少資源を分けるわけにはいかない。
万代家の人材の価値は命ではなく、「能力」で決められるものだ。
万代家は独自の基準で異能力を五つの種類に分類した。
「身体強化系」、「精神干渉系」、「道具使い系」、「自然操縦系」、「秘術系」。
その中で、高い価値があると認められるのは「秘術系」と「精神干渉系」。
この二種類の力を持つ人が、万代家の基盤を支えているから。
特に「秘術系」。
ほかの四種類の能力は、一般人でも理解できる「人の体」、「人の精神」、「人工もの」、「自然もの」を操る能力だけど、秘術系はほぼ使用者しか理解できない何かの力を操る能力だ。
教えられた知識によると、ほかの四種類の能力より、単純のエネルギー操作に近い能力だけど、もっとを不思議なことができる。
例えば、リカの母は条件によって、想像中の物を一時的に具現化することができる。
父は、人のエネルギーそのものを操る能力を持っている。そして、エネルギー操作によって、異能力者の力の強弱を影響出来る。異能力を操る異能力とも言える。
秘術系の不思議な力を持って、万代家は一般社会の偉いものや有力者たちと多くの取引をした。
どんな目標を成し遂げるにも、「よい運」、「恵まれた環境」、「十分な本人の力」が必要だ。
秘術系の能力者は、エネルギーの操作によって、この三者を整えることができる。
本人のエネルギーを強化し、周りの障害を取り除き、想像もつかない大きな幸運を引き寄せる。
見えない「エネルギー」なんかで現実が変わるもんか、とあざ笑う人がたくさんいたが、万代家は重なる事実で「秘術」の有効性を証明していた。
当選不可能な政治家は選挙の前に、偶然に溺水の子供を救い、盛大に報道され、見事に逆転した。
倒産寸前な銀行家の前で、いきなり出資者が現れて、これまで断られた莫大な融資も手に入れた。
老いた王族は、不治の病から奇跡的に回復した。
たとえ秘術のおかげではなく、単なる万代家の工作であっても、目的が達成できば、大体のクライアントは手段なんか気にしない。
まして、世の中の偉いものたちは、ほとんど「神秘学」を信じている。喜んで万代家と手を組む人は絶えずに寄ってくる。
それ以外に、万代家は自ら進んで見込んだ人に援助を出して、後日に報酬を回収する形のプロジェクトもやっている。
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