血染めの龍騎士と悪役名無し三男の少女漫画的転生物語

鮎焼き

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出会い

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焚き火を用意しようと、枝を探すために雪の中を歩いた。

雪の影響か湿っている枝ばかり見つけて、地面に落とす。

雪の影響がない場所なら可能性はあるが、そんなところ森の中にあるのか?

温まれないと分かると余計に手が冷えてきた。

枝さえあれば、石を擦って焚き火を作る事が出来る。
頑丈な石ならこの森に腐るほどあるからな。

なるべく雪が少ない場所がないか探していたら、不自然に丸く雪がない場所があった。
枯れ木はないが、探せば見つかるかもしれないと地面を注意して見ながら歩いた。

木に注意していればぶつかる心配はないし、森に来てから一度も人と会った事がない。

導かれるように、雪が積もっていない場所を歩きながら枝を拾っていく。

しばらくそうしていたら、どこからか声が聞こえた。
人でも鳥の囀りでもないその鳴き声は「くぅ…くぅ」とか細く聞こえる。

周りを見渡してみると、さっきよりも大きく雪がない場所があった。

黒いなにかがゆらゆらと揺れていて、本当に魔物がいたんだと後ずさる。
歴史の勉強の時に、そういう話を聞いた事がある。

人に悪をもたらす悪魔の遣いの魔物と、加護をもたらす神の使者。
神の使者は龍族と呼ばれているが、遥か昔に魔物の軍が人の国に攻めて来た時に、国を守った代償に絶滅したと言われている。

今はそれぞれの国の騎士団が魔物から人々を守っている。

あの漫画にそっくりだとは思うが、これがよくある話だったら似るのも頷ける。
魔物がいるファンタジーの世界でも、ゲームの世界に転生したなんて事はないだろう。

だから、この魔物も悪の魔物なんだと分かる。

気付かれる前にその場を離れようと、後ろに下がった。
もう一度、魔物の鳴き声が静かな森の中に響いた。

悲しそうで、か細く弱々しい声が聞こえる。

もしかして、なにかあったのか?全然襲ってくる気配はない。

「だ、大丈夫?」

まだ気付いてないのかもと思って、恐る恐る近付く。
だんだん近付くと、その姿はよく見えてきた。

黒いと思っていたのはローブのようで、網に引っかかって身動きが取れなくなっていた。

この網は自然に出来たわけではなく、明らかに人が設置した罠だ。

もしかして噂を聞きつけた誰かが魔物を捕獲しようとした?
魔物だけではなく、悪い事を考えている人がいるのも当然だ。

魔物の善悪は知らないが、今俺がするべき事は分かる。
木の枝を全部近くにばら撒いて、身軽にする。

網を掴んで、思いっきり引っ張るがびくともしない。
魔物は苦しいのか、口から小さな火を吹いている。
雪が溶けているのは、きっとこれだったんだ。

網をよく見てみたら、左右に大きな石が錘の代わりになっている。
それを助けるように、寒さで力が入らない。

一つでもいい、石をどうにか浮かせる事が出来た。
腕で持ち上げても、石を蹴飛ばしてもびくともしない。

周りを見渡して、ポケットの中もなにかないか探す。

そこであったのは、小さな裁縫道具だった。

俺があげたラルトのぬいぐるみをいつでも直すために持ち歩いている。
1本だと弱くすぐに切れてしまうが、何重に巻けば強度はある。

すぐ近くにある木に足を掛けて、蹴るようにしてよじ登る。
木に紐をくくりつけて、飛んで降りて石にもくくりつける。
何度もそれを繰り返すと、細い紐は強度が増した。

紐がなくなるまでやり、石と木を糸が結んだ。

その間の糸を思いっきり全体重を掛けて押した。
さっきまでびくともしなかったのに、ちょっとずつ石が動いた。

もっと勢いを付けて、糸に突撃すると石が吹き飛んだ。
勢いよかったからか、雪の中に思いっきり倒れた。

ずらせれば網が捲れて魔物を逃がせるかと思ったが、まさか吹き飛ぶとは思わなかった。

「くぅ…」

「ほら、大丈夫だ…こっちにおいで」

網の隙間から手を入れて、黒い魔物を抱き上げる。、
どのくらいこうしていたのか、氷のように体が冷えていた。

コートの前を開けて、魔物を包み込むようにした。
これじゃあ全然温かくないよな、やっぱり焚き火が必要だ。

地面に置いた枝を全部拾ってその場から離れる。
雪がないところで火を起こせればいいけど、あそこは罠があったところだ。
いつ罠を見に来るか分からないから、離れた方がいい。

目が覚めたところは、セトが除雪したのか雪が積もっていない場所だ。
そこに枝と、向かう時に見つけた石を置いた。

「ちょっと待っててな、すぐに温かくするから」

コートを包ませて、地面に魔物を置いて火起こしを始めた。
冬はなかなか火が付かずに、苦戦しながらもやっと小さな火が付いた。
どのくらい経ったのか、明るかった空はすっかり陽が落ちていた。

小さな火を大切にして、息を吹きかけて大きくする。

パチパチと温かな火が冷えた体を温めてくれる。

魔物をコートごと膝に乗せると、さっきよりも声に元気が戻ったように聞こえた。
鳴き声を聞いていると、もうそろそろ食事の時間だなと考える。

しかし、こんな暗いのにまともに食材を手に入れられるかな。
いつもは魚を取ったり、木の実を取ったりして1日をやり過ごしている。

俺は1日くらい何も食べなくてもいいけど、この子は長い間寒さと戦っていたんだ。
なにか食べないと、最悪病気になってしまう。

魔物を治す病院は知らないし、今となっては忌み嫌われている存在だ。
病院が頼れないなら、病気にならないようにしないと。

「ちょっとそこで待ってて、すぐに戻るから」

暗がりを1匹で心細いだろうから、そう声を掛けた。
焚き火の光を目印にして、なるべく離れないようにしつつなにかを探そう。

こんなに寒いと魚は望めないが、冬に実る木の実があれば…

焚き火の枝の枯れていない普通の枝を手に取り、探しに向かった。
ただでさえ寒いのに、夜はさらに冷えてコートもあの子に貸している。

それでもいいんだ、俺が風邪を引いたらさすがに苦しい仕事を休める。
魔物は木の実を食べれて、お互いいい事しかない。

下心に笑みを浮かべながら、木の実を探した。
多くはないが、見た目から小さそうな魔物だったからこのくらいで十分かな。

火を頼りにして向かい、焚き火に戻ってきた。
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