結婚することになったんだけど、相手が死人でした

河野彰

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結婚することになったんだけど、相手が死人でした

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 宴席は十畳の和室を数部屋ぶち抜きの、村中の者が集まったんじゃないかというほどの盛況ぶり。地元の仕出し屋が腕によりをかけて作ったごちそうが並び女は走りビールを継いで回り男どもは飲み明かす。
 俺はブリーチのし過ぎで白っぽくなったパサパサの髪を撫でつけられて、やや目つきの悪い両眼を眇めて新婦側の席に紋付き袴で胡坐をかいている。目の前には目出度くも赤いタイの尾頭付きが勢いよく跳ねた形に飾ってある。
 一体何なんだこれは。
 『死人』との結婚式だろ?
 こんなに騒いじゃって良いの?? 
 そんで、そんで……俺は空席のままの新郎の席を見る。
 そこには、紋付き袴がきれいに立ったんで置いてあって、誰もいない。
 やっぱり「良いです、出来ません」なんて言えない雰囲気に俺は一人つばを飲み込んだ。



 始まりはこうだった。
 初夏の、梅雨明けの茹だるような暑さの中で、その部屋だけは冷房が効き、扇風機が回り、窓もすべて明け放してあった。俺の実家だ。
 縁側に出て日差しを浴びながらスイカを片手に『こういうのんを天国と言うんやで』とじじいがにぃっと笑う。

「もう、お義父さんったら止めてくださいよ、電気代の無駄遣い。ただでさえあの事で、村中大騒ぎなのに」

 母親が熱いお茶をお盆に居間へと入ってきた。
 ふうっと番茶の良い匂いがあたりに漂った。
 俺はそっと、テーブルに山と盛られたスイカの一切れに手を伸ばす。なんでも今年の初物で縁起が良いからとじじいが友人から貰ってきたらしい。
 ここは某有名都市の端っこの山村で、過疎化の波に押しつぶされそうな小さな村だった。いまだに5人組に近い制度があり、自治会が生き、初夏の祭りのたびに担ぎ手が減っていく神輿が村中を練り歩く。隣の家とは数百メートル離れていてもおかしくない、そんな地域だ。
 俺の家は村の東端の棚田の上に、左翼と右翼を広げるような形で立派な御殿として建っていた。今はもう時折隙間風が吹くような襤褸屋敷だが、俺の部屋は離れの形で別にしつらえてもらってあるので快適だ。

「ああ、柳原さんとこなぁ」

 しゃりしゃりと勢いよくスイカを食べてしまってから、じじいがぺぺっと種を庭に吐き出す。

「だから止めてくださいってそういうことも……」
「翌年、種から目が出たら面白かろ?」
「もうっ」

母親は怒って足音も高く台所へ戻っていった。小さくなっていた俺はじじいと二人きりなら声も出せる。スイカをシャクっと一口ほおばって聞いた。

「柳原って、反対の西の御殿の……」
「ああ、あすこのボンボンさ。交通事故でな、おっ死んじまったって」
「え」
「東京で成功したとか聞いてたんだけどなぁ……分かんないもんだね。道を渡ってたら信号無視の車に突っこまれたってさぁ。まだ二七、八で高志さん、とかいったかなぁ」
「へぇ……そりゃ、大変だな」

 シャク。はっきり言って口先だけ。何の感慨もわかなかった。その柳原某とは知り合いでもないし、知り合いでもない男の死に何か感情などわく余裕は今の俺にはない。

「……ベンキョ、戻るわ」

 俺は東京の某大学に二浪中の二十で、今はもう初夏だった。こんな田舎に塾や予備校があるわけもなく、父親や母親からは三浪目は無いといわれていた。東京までは一時間と少し……乗り換え合わせて二時間はかからない。去年までは出してくれていた予備校費用も今年は無しだ。自分の力でこの夏を乗り切らなきゃいけない。
 みしっと畳を踏みしめ立ち上がった時だった。

「それでな」

 じじいの話はまだ終わってなかったらしい。

「ちょっと相談なんだが」
「あん?」

 立ち上がりかけた俺へ、じじいが首筋にかけたタオルで自身の顔を拭きながら何気なく言った。

「お前ちょっと、柳原んところの嫁になってやってくれんか」
「は?」
「小遣いは弾むぞ」

 にぃっと笑うじじいの笑顔に訳が分からずに俺はしばらく見入っていた。




「冥……婚?」
「ああ、昔からのここらの風習じゃ」

 部屋をじじいの私室に移して、俺らは向かい合っていた。じじい、といってもまだ七十そこそこだ。午後は畑の手入れをするとか言っていたが、この展開はなんだ。爺の部屋はやはりがんがんにクーラーが効いていて、外ではぬるい風に吹かれて風鈴ちりんと音を立てていた。
 俺はもちろん、奇怪な話はもとより『小遣い』に耳を奪われていた。じじいに倣って、正面に胡坐をかく。

「一体なんだそりゃ」
「ふふ、若い未婚の男が死ぬじゃろ。そうすると、嫁もいないうちに一人で旅立つのは可哀そうだと言って、生きた娘と結婚式をあげるんじゃよ。娘は結婚式の後、一晩だけ死んだ男と一緒の部屋に寝る。それが冥婚じゃ」
「げ、同じ部屋で? ちなみに……女の人が死んだら?」
「それは無し」
「男女不平等はんたーい」
「そういう時代だったんじゃろ」

 かかっとじじいが笑う。

「けど、ふうん。……それにしちゃ聞いたことないんだけど」
「そりゃそうだわな。令和、平成、昭和……もう何十年も行われておらん」
「は? じゃ、なんでいきなり復活してんの? しかも相手は俺? ……お、男だぜ?」

 最後だけ小さな声でそう投げかけると、じじいが身を乗り出した。

「そこなんだわ!……あそこの曾ばあさんが昔の写真を持ち出してきてな。高志が余りに可哀想じゃ、昔は『冥婚』をしとった、嫁の一人もとらせたいと大騒ぎしてな。これが、90過ぎていまだに現役の御殿を取り仕切ってる女傑じゃから、誰も反対できんのじゃって」
「はぁ……。で、なら村の女の子に頼んでやってもらえば?」
「村の女の子って誰じゃ」
「え、そりゃ、えっと……」
「誰じゃち、いうとる」
「えーとほら、田原んところの瑠璃ちゃん」
「まだ高校生じゃろうが!」
「梅原の恵美さん!」
「再婚者じゃ!」
「えーいもう、将来性で隣の早紀ちゃん!」
「……生まれたばっかりじゃ」
「え、もしかして……いない?」

 こくんとじじいが頷く。過疎化ここに極まれり。

「隣村まで手を伸ばせばおるじゃろうが、年頃の……生娘が一晩誰ぞ知らん死んだ男と寝てくれると思うか? 曾ばあさんもこの村の若者を~と言っとるしな」
「あー……」
「で、そこでお前じゃ」
「俺が出てくる意味わかんねぇー」

 そこで初めて、じじいが表情を曇らせた。はっきりしたもの言いのじじいにしては珍しく言い淀む。

「お前さんの……あれじゃよ、思い出したくもないかもしれんがほれ、学生時代の……」
「ああ……あれかぁ」

 思い出したくないといえばそうだ。
 もう過ぎた話だといえばそれまでだ。

「俺が、ガッコで同級生に告白した挙げ句フラれて、学校中に、いや村中にゲイばれした話?」

 俺はわざと露悪的に笑って見せた。じじいは一瞬眉を微かに寄せたが流石そこはじじい。一瞬の後にはにっと笑って指を突き出してきた。

「それじゃ。この村の年寄りのほとんどはエルジービーティーが何かも分からん。そこでじゃ、向こうの曾ばあさんがの、おまえを『中身は女の子、外身は男の子』……つまり性同一性障害と思っておるんじゃ」
「は!? いやいや、俺はゲイだよ。れっきとした、」
「もうそこは関係ないんじゃ。家柄も東の里見、西の柳原でぴったりだと。実は町内会で話はついとる」
「俺の許可無しに俺の結婚が!?」
「うむ、明日じゃ」
「そんな馬鹿な」
「東京の夏期講習、行きたいじゃろ?」
「うっ……」
「小遣いは確約するぞ」

 そう言われると返す言葉がない。よっこらしょと立ち上がったじじいがにやけ顔で振り替える。

「そういやお前。童貞生娘だろうな?」
「うっさいわ、ネコの童貞生娘だわ、悪いか!」

 ネコ?と首をかしげながらじじいは暑い暑いと言いながら部屋を出ていった。これでその高志とやらがイケメンじゃなかったら文句のひとつも言ってやるからな。



3
 柳原高志はごめんなさいと頭を下げないといけないほどのイケメンだった。
 俺は宴もたけなわな宴席から連れ出され、案内の女性に連れられて別棟の静かな一角へと連れてこられた。お香の、それは多分線香なんだろうけどやけに甘い良い香りがして、一番奥の部屋の前に連れてこられた俺はふうっと息を吐いて吸った。

「よく参られた花嫁殿。白無垢でも似合いましたでしょうに、ほほ」

 闇からいきなり声をかけられて俺はもう少しで「わあ!」と叫ぶ所だった。
襖がスラリと開いて、そこには小さな小さな老婆がこちらを見上げていた。案内の女性を下がらせて、中へ導かれる。小さな狭い部屋を抜けて、すぐ奥。
 そこには一人の男性が寝かされていた。

「顔を、見てやってください……花嫁殿」

 え、今? 心の準備が……。
 とか思っているうちに頭元に連れて行かれ、顔の白い布が取り外される。

「わ、てか……え?」

 きりりとした眉と高い鼻梁、固く結ばれた薄い唇が意志の強さを現しているようだった。綺麗に撫で付けられた黒髪、もし切れ長な瞳が開いたなら、その瞳に見つめられたなら、どんな気持ちがするだろうと思わざるをえなかった。
 死んでいてもなお美しい獣のような男だった。

「この人が、高志……さん」
「ええ、ええ。良き男でしょう? 嫁を貰っても良い年齢で働いて働いて……死んでしまった。不憫でねぇ。せめて死後の世界では楽をさせてあげたくて……」
 
 一瞬、嫁は家政婦かよと言いたかったがぐっと飲み込む。薄ら笑いで誤魔化していると、高志さんの横に延べられた布団に案内され、着替えを手伝ってくれた。紋付袴を起用にまとめた曾ばあさんは、白の単姿になった俺を見ると満足そうに頷いた。

「隣の間で番をしますけ、ゆっくりお休みください。……手でも握ってやってください」
「は、はい……」

 いくらイケメン相手でも死人の手を握りぬがら寝るのは無理そうだと、冷や汗をかきながら俺は最後の笑顔を振り絞る。

「では、おやすみなさいませ」
「はい、おやすみなさい……」

 語尾にはちょっとした怖気が混じっていたかもしれない。襖が閉められて二人っきり(?)にさせられると、いきなり室温が何度か下がった気がした。だって悪いが、死人を見たのは初めてだ。しかもこんな近くで隣に寝ろという。
 ……ちょっとイケメンだけど。かなり好みだけれど。死人は死人だ。
 俺は出来るだけ隣を見ないようにして、横の床に滑り込んだ。
 ひんやりとした夏布団の感触と、コォーというエアコンの静かな稼動音だけがしばらくしていた。

『手でも握ってあげてください』

 ふいに先程の声が蘇った。……たかが手だ。しかも、イケメン。死んでるけど、男の俺が嫁で悪いけど、手を握るくらいなら。

「……手、握って良いですか?」

 間抜けに見えるだろうが、俺はそっと高志の方へと振り向いて一応許可を取った。勿論返事はない。それでも俺は新妻なのだ、旦那様に触るには許可の一つも必要だろう。
 少し身を起こして高志側の布団も捲る。恐ろしいほどに冷えているその布団を探って、指に、触れた。

「っ!」

 死んだ者に触れているという畏怖や嫌悪、禁忌にふれてしまったという訳の分からない感情が湧き上がってくる。けれど、手を繋ぐと決めたのだ。高志の肌は固く、けれどまだ人としての手触りがあった。指をそろりと進めて、爪先から手の甲を触ってみる。おかしい。何かある。慌てて手のひらの方側も触ってみる。
 暗がりの中に細い糸。結び目。手術痕。手のひらを貫通するほどの怪我、だ。
 それに気付いた瞬間、パタリと涙が落ちた。

「いた、痛かったろうな……」

 今やっとその考えに至った。
 涙が布団を濡らし、高志さんの指先も濡らす。なぜ怖がったんだろう。一番怖かったのは死んでしまった高志さんだ。たかが、死んだ身体と向き合うのが何だ。一緒の部屋に寝るのが何だ。

「わり、ぃ……」
「謝るほどの事じゃないぜ」

 低いバリトン。
 片腕で身体を支え起き上がった高志がそこにいた。驚き声をあげる暇もなく頭をグイッと引き寄せられる。鷹の瞳の色だ。近づく瞳を確認する間に、

「んんっ!」

 抱え込まれるように、布団へ押し付けられるようにキスされていた。死んでいるはずなのに熱い唇、吐息に舌の濡れた具合。息継ぎが出来ない、めくるめくキス。
 身体はどんどん落ちていく。
 
(俺の、ファーストキスが……!!!)
 
 どこでもないどこかに落とされて行く。高志に押さえられたままどこかへ。そのどこかに辿り着く前に俺は意識を失った。




 手触りはさらりとしていて、背中に当たる感覚は柔らかい。
 床、だ。
 白くほんのりと淡く発光している。
 そこに仰向けに寝かされていた。
 目の前は白い、どこまでも高い……天井?
 片手を突きゆっくりと起き上がると、四方には遠く襖のような扉があった。
 不思議な空間だった。
 心地良くまた眠ってしまいそうな音楽が微かに聞こえている。
 香の清々しい、けれどほんのりと甘い花のような香りが鼻先をくすぐっていた。 

「お目覚めか」

 含み笑いの声が下から声がした。
 思わず立ったまま振り向くと、

「柳原高志!」
「確かに柳原高志で間違いないが」
 
 紋付き袴姿の、不遜な笑顔の男が床にあぐらをかいていた。
 死に顔と違って今は顔色にやや生気が戻っていた。ここまで男前で色気のある男を俺は見たことがない。昭和顔というのだろうか、濃い陰影を作る目鼻に皮肉が似合う薄い唇。やや長めの黒髪は今は綺麗に撫で付けられており、笑みを浮かべる頬には……頬には数針の縫い痕が残されていた。
 どうも俺はこの男を枕にして眠っていたらしい。

「ん?」

 ふいに、高志が立ち上がった。
 ぐるりと見下ろされ、標準体型の……ちょっとひょろい俺からしたら何かしら鑑定をされているようだ。

「お前、男か!?」

 指差し笑いだす男の態度にカッと顔に血が上った俺はどなり返す。

「男以外のなんに見える!?」
「いや、あの婆さんのことだ、余興にと男装させられた女かと……」

 そこまで小さくか弱く見えたか俺は。フーフーと息を荒げる俺と違って、相手は、高志は暫く何かを考えるように沈黙した後、パンっと自身の両手を打ってこちらを超笑顔で振り返った。
 
「まぁいっか。結果男でよかった。お前名前は? さあ心の準備ができたら、セックスしよう」
「頭おかしいのか」
「おかしくないさ、俺の花嫁だろ? お前は」
「そっれは、そうだけども……って、ここはさ、なんなわけ? それで何で俺はあんたと、セ、セックスしなきゃなんないわけ?」

 俺は周囲を指差し最後に高志へと指先を据えた。うう、こんな時だけど鋭い眼差しが格好良い。

「まあ、そうだな……じゃあ、少し仲良くなってからにするか。時間は無限にある」
「むげん?」
「そう、まあ座ろう」

 高志はその場に座り片足を立てた。
 ぽんぽんと隣の床を叩く手のひらからほんの少し離れて、俺は不承不承座った。

「それで、お前、名前は? 本当に名前さえ知らないんじゃやりにくい」
「里見……ヒカルっす」
「……里見?」

 俺の名前を聞いた途端、高志は軽く首を捻った。
 それでもしや……と俺はざっと青ざめる。俺と高志は確か七、八才は離れている。生活している場所だって全然違う。まさか俺の噂なんて……。

「あー…もしかしてあのヒカルか。数年前、ゲイでカミングアウトしたっていう……」

 決定打が高志の口から漏れた。
 俺は真っ赤になって、グッと拳を握りしめてその場に座っていた。真っ白い床をただ見つめる。知られていた。この男に。自分がゲイだということを。もしかしたらあの一連のことを。
 この冥婚だって、ゲイだから花嫁に志願したんじゃないかと思われるかもしれない。
 俺は震える声で聞いた。

「な、なんで、……知って……?」
「あー…確か村の後輩が、送ってきたんだよお前の告白動画。校舎裏、だっけ? 好きな高校の先輩呼び出してこくは──」

 なぜか当たり前のように懐からスマホを取り出すと「もう流石にねぇかなぁ」と言いながら動画を探しだす高志に俺は手を伸ばして、そのスマホを取り上げていた。

「──見たくねぇの?」

  唇の端を上げてた高志が笑う。

「見たいわけあるかっっうの!!」

 予想以上の大声が出た。
 高志はこちらを無言で見つめている。

「あんたも見たなら俺のバカさ加減がわかるだろ!? 部活でさ、バドミントンやってて。気持ちもゲイも隠してたつもりがオレの気持ちなんて先輩にも周囲にもバレバレでさ。知らなかったのは俺一人で。卒業式に告白するか賭けにされて……見事にハマたってわけ。後は拡散の嵐。まさか……年代違う、東京行ってるあんたにまで広がってるとは思いもよらなかったけど」

 気づけばスマホは高志の手に戻っていた。
 俺は急激な怒りから目眩がして、「ああ、これだな。残ってた」とか言いつつ遠慮もなく動画を再生する高志をぼんやりと眺めていた。




 俺の好きになった先輩はやっぱり男前で、副部長で部をぐいぐい引っ張っていくようなそんな人だった。俺は入部説明会でひとめぼれをして、先輩に誉められたくて、勝ちたくて、部活に一生懸命打ち込んだ。動機が動機だからか成績はいまいち奮わなかったけれど、先輩も遅くまで練習する俺を可愛がってくれて……少しは脈ありなんじゃないかなんて思ってたりしてた。
 バカだった。
 優しく頭を叩いてくれる仕草も、背中を強く激励で叩いてくれたのも、全て演技だったと笑われたのは卒業式後の部活解散式だ。
 先輩だけを呼び出して、校舎裏。俺は緊張で全身汗びっしょりだった。
 深呼吸を何度もして出た声は、裏返ってみっともなかったと思う。

「ずっと、ずっと好きでした。付き合って、くださいなんて言いません。気持さえ伝えられたら、俺……」
「……マジかよ」
「え?」
「マジ告白しやがったこいつ」

 わっと校舎の角からスマホを持った先輩たちが走り出てきた。

「そっちどうだ撮れたか?」
「ばっちり」
「音声は……流石に無理だったわ」
「それはこっちがばっちりぃ」

 先輩が袖に隠していたスマホを取り出して見せた。
 再生すると、そこにははっきりと俺の告白の声が録音されていた。
 俺は頭が真っ白になって、ただ周囲を取り囲んでくる先輩たちのスマホに次々手を伸ばすしかなかった。

「か、返せよ」
「スマホお前のじゃねーだろ」

──違う! 俺の生まれて初めての告白を、返せ!

「そうそ。マジになんなよー。ま、少年期の過ちっつうことで」
「あるあるじゃん?」
「やーいや、俺はイイもん見せてもらったわー」

 背も高く運動神経の良い先輩たちからは誰もスマホを取り返すことなんてできずに。
 何より、大好きだった先輩が俺をもう微塵を見ないのを察して……。
 俺が校舎裏に座り込んで夕方が来て、のろのろと家に帰る頃には俺が先輩に告白したことは妹を通じて家族に知れわたっていた。ご丁寧に俺の告白は音声と画の合成動画が作成されて拡散されていたのだ。その意図は明白だ。

『あなたたちの息子さん(里見ヒカル)はオトコが好きなゲイですよ』

 親父には殴られた。母親は泣いた。妹は哀れみの目を向けた。じじいだけが、黙っていた。
 動画は最初は若者を中心に広がっていった。若者から幼年者へ、幼年者から青年、中年、老年……なんでわかるかって? その順に家に人が押しかけて確認してったからだ。お節介な善人ども含め。

「こんなの気にしなくて良いのよ」「おにいちゃんホモ?」「こんなもの流されて恥ずかしくないのか」「噂なんて数十日さ。俺は……気にしてないし」

 メールに電話にSMS、学校なんて春先に「LGBTへの理解」なんて講演会を入れてくれちゃって。主犯は卒業、その周囲の取り巻きも卒業した後となっては学校はそれっくらいしかしてくれなかった。まぁ、それ以上騒がれてたら、あの頃の俺の精神が持たなかったとは思うけど。

 そして、俺は翌年見事に志望校に落ち、ゲイな上に落ちこぼれのレッテルを張られながらこの村で二年半を過ごした。今年こそはこの村を出なければならない。



「ふうん。改めて見たけど……」
「見んなよ」

 気づけば目頭が熱くなっていた。怒りと屈辱と、恥。
 それを隠そうと高志からそっぽを向いてあぐらをかくと、ぐいっと頭を引き寄せられた。

「かっけぇ告白だな」
「──え?」
「それこそ大都会東京じゃゲイなんてごろごろいるけども、それでも隠して生きてる人が大勢いる。それをこんな田舎町で、よく頑張ったなぁお前」

 思ってもみない言葉だった。そして誰からもかけてもらったことがない言葉だった。
 じじいはあれからゲイだのLGBTだの勉強してくれて、今ではなんでも話せる仲にはなったけれど。

「よく頑張ったな」

 低い優しい声が大きな手のひらと共に降ってくる。整えられたパサパサの金髪を「似合ってねぇぞ」と崩して、頭を撫でられる。もう一度じわりと視界が滲んで、もう少しで泣き出しそうになるところだった。
 そう、俺は頑張った。告白しない道も何度も考えて、やっぱり告白しようと決めて何度もシミュレーションして。俺がやったことは……無駄じゃなかった。

「こんな可愛いこちゃんからの告白だったら、俺なら即オーケイしたのに」

 続けられた軽い言葉に俺は小さく笑った。
 
「あんた、軽すぎるよ」
「軽い男は嫌いか? このフットワークで仕事も上手くいってた。まあ、軽いせいか車にふっ飛ばされちまってこうなんだが。あははー」
「はは……」

 笑えない冗談もぽんぽん出てくる。けれど俺はこの男が好きになりかけていた。
 
「んでさ、じゃあ俺はここでどうすれば良いの」
「おお、同意してくれんのか」
「だから何を?」
「ナニを」
「……セックス?」
「大当たり! すぐやろう即やろう天国見せてやれるぜ?」

 いや、却下だ。
 がばっと襲いかかってきた高志の腕から俺はするりと逃げる。

「なんだよ、なんなんだよ!? セックスすりゃあんたが成仏できるとでもいうのか!??」「はたまた大正解~」

 俺から逃げられた高志はそう気に病むでもなく白い床にごろりと横になる。俺の方を向いて片肘ついて、目を細めて楽しげに俺を観察している。俺は真っ赤になる。

「何て破廉恥な成仏のしかただよ!」
「だよなぁ」

 くくっと喉で笑って、高志はうつ伏せになる。……良い尻の形。

「結局は冥婚ってそういうことさ。女性経験に未練を残さないようにって……脱童貞させてあげよーってこと。魂だけでも」
「勝手だな!? 本来ならここにはオンナノコがいるはずで……しょ、処女捧げろってことでしょ? 初めてあった男に!? 魂の!?」
「そういうことだねぇ……」

 ひでぇシステムだ。つうかそれってもしやこれって……。

「ここってつまり、セックスしないと出られない(成仏できない)部屋……?」
「またもやピンポンピンポーン!」

 俺はがっかりと肩を落とす。

「まぁ、ここを部屋っていうならだけどな」

 その間に高志はゆっくりと立ち上がると何もない白い空間にスッと手を伸ばす。

「ここに一人でいると暇でさ……自分の立ち位置も時間の経過も何も分からない。ずっとまっすぐ歩いてみたりもしたんだけど、どこにいっても部屋の中央にいるような気分なんだ。しょうがないから寝て待ってたんだけど、可愛い泣き声が聞こえてくるじゃない。あ、迎えにいかなきゃって思って腕を伸ばしたら、もう腕のなかに君がいたよね」
「……スしたくせに」
「ん?」
「抱き締めただけじゃなく。キスした、俺に」
「はは、バレてたか」
「バレないと思ったか!」

 どこまでも軽い高志に俺は何度めかの息を巻いた。
 白い空間で死人と二人っきり。だけど緊張することはなくて、どっちかというとじじぃといるときのような……って正しいのかこれ、リラックスした空気を感じる。

「嬉しかったんだよ」

 そこで初めて低めのポツリとした声が落ちた。

「声だけは聞こえた。皆も勿論泣いてくれたさ。けど、どこの誰とも知らない君が、泣いてくれたのが嬉しかった。愛おしく感じたんだ。俺の花嫁さんをさ」

 強い鷹の目を持つ男が微笑んでいた。
 だから俺は何となくふらふらと近寄っていってしまったんだ。高志の目の前で、腕を差し出す。首をかしげながら面白げに高志も腕を広げた。その手のひらには……。

「傷が、ない」

 思いの外白くスマートな手には傷ひとつなかった。長い指にも、分厚い手のひらにも。

「そう、修復されるらしいね。この空間だと。……行政解剖も受けてるし、俺の身体本来なら傷だらけよ? それは流石にグロ……可哀想だと思ったんじゃないかな」
「誰が」
「神様が?」
「神様がいるならこの状況をどうにかしてくれよ」
「ってことで、ちょっとは近くにおいでよ。何もしないからさ。話し相手になってくれ。そして良かったらセックスさせてくれ」
「ふ……最後のは却下だからな」 
 
 言い方が可愛かったので、俺は許して高志の手を取った。



 何もない空間で二人。並んで座って片手をそっと握り会う。
 俺は勿論、子供の頃以来初めて成人の男性と手を繋いでいて、相当意識していた。
 だって、もしかしたらこの人とセッ……しなくちゃいけないんだぜ?
 ガチガチに緊張している俺と違って、高志は胡座なんてかいてリラックス。俺は横でちんまり膝を抱えて体育座りをしていた。

「死ぬなんて思わなかったなぁ……」

 ポツリと高志が静寂を破った。

「……東京で成功してたんだって?」
「成功なんてもんじゃない。これからって感じだったかな」
「ふうん」
「大学時代にちょっとしたアプリを作ってさ。それが大きい会社に売れて。それで資金ができたんだ。だからそれを元手に卒業と同時に企業。寝る間も惜しんでやって来て、やっと一息着いたと思ってたら……飲み会帰りに轢かれちゃって終わりだ」
「なんか、あんた……惜しげもなく言うよな」
「ん?」
「未練、とかは……?」
「はは、未練か。──ないかな。その時できることを精一杯やって来たからさ」

 隣で笑う高志が眩しい。俺も毎日を精一杯生きているだろうか。
 剃りゃ、勉強は頑張ってる。けど、例の一件があってからこっち、人の目を気にして、家族の機嫌を伺って、どこかビクビクした毎日を送ってる気がする。
 高志のように胸を張って、生きていけたら……。

「ああ、でも」

 ふいに遠くを眺めていた高志がこちらを振り返った。

「君みたいな子と、大恋愛をしてみたかったかも」
「な!?」

 綺麗な、裏表のない純粋な笑顔に俺は瞬時に真っ赤になる。

「からかうのはよせよ! さっきから……その、可愛いだの、俺になんて……」
「恋愛をしたことがないんだよ」

 意外な告白を高志はした。俺は聞き間違えたかと思ってきょとんと隣を見上げた。

「へ?」
「だから、恋愛をしたことがないんだ」

 少し目の端に照れを滲ませて高志がまた前を、遠くを見つめた。

「ぶっちゃけて言うと、モテたからね。遊びまくってたよ? けどそれは特定の誰かをつ作るって意味じゃなくて……一晩限りのって、分かる?」

 うんうん、と俺は耳まで赤くなりながら頷く。

「……お、男とも?」
「そうだな、どっちでも楽しくやれたよ俺は。男女の区別なんてちょっとしたカラダの形の違いでしかない。一緒にベッドには入るのに戸惑いなんてなかったかな」

 繋いでいた手に俺はじわりと汗をかいていた。それに反して、高志さんの手はどんどん冷たくなっていく気がする。

「どっかおかしいんじゃないかと、ずっと思ってきた。俺には人は愛せない。一晩の遊びはでいても、その相手を愛しいと感じたことがない。誰に告白されても、誰が俺を愛してくれても。俺はそれを同じものを相手に返せないんだ」

 高志の目はまっすぐ前を見ている。そう、誰も見ていない目だ。

「誰も愛せない男が死んでも、すぐに忘れられちまうよ。俺の死なんてすぐに風化する。だから、夢見ご心地にここで寝てたときに、婆さんの「冥婚」をする!って声が聞こえた時には笑っちまった。誰も愛せない俺に嫁だって? ってさ」

 くるりと高志が俺に向き合う。

「けど同時に少し興味も出た。俺に嫁いでくれる相手なんて……いないと思っていたから。そうしたら、君が来た」
「俺? それこそ貧乏くじ、負けくじだろ。三浪やってるなんの特技もない男だぜ? 俺」
「いや、見も知らない俺のために涙を流してくれた君だ」

 ぎゅっと片手を冷たい両手で掴まれる。そのまま手を軽く引かれて、高志は大事なものを扱うようにそっと俺の手の甲に口づけた。

「!?」
「胸が初めてときめいた。ないはずの鼓動が打って、飛び上がりそうに嬉しかった。だから君は、俺の花嫁になる運命だったんだよ」

 ぎゅっと握った俺の拳の指の間を高志の冷たい舌先が這った。

「一目惚れだ。俺の花嫁になってくれ」

 ねぇ、だってこの状況で断れる!? 俺??
 相手はイケメンで既に死んでて……これが成仏の最後のチャンスで。俺だってセックス……には興味があって、ちょっと好きだなとか? 思い始めている相手に求婚されてんだぞ!?
 いやちょっと待って。
 好きかな? レベルじゃない。
 見た目の鷹みたいな猛獣みたいな、見た目に反してスマートで礼儀正しくて。
 誰とだって寝ちゃえるような、誰とだって自由に恋愛できるような……なのに誰も愛せない男。寂しい男。
 ……正直きゅんきゅんしたって、もっとこの男を知りたいと思ったって仕方ないだろ?

「──初めて、だからな」
「ん?」

 そっと高志が俺の手から顔を上げる。首筋から耳から真っ赤になりながら、高志に震える声で告げる。

「ここにいるってことは、分かってるだろうけど、初体験だからな!? なにも知らなくても、反応薄くても、笑うなよ!?」

 きょとんとした顔の高志が、次第に優しい笑みに表情を崩すのを俺は見ていた。
 なんて……幸せそうな顔だ。

「勿論だ。君を抱けるだけで幸せだ」

 俺が思っていた通りの言葉を高志は言った。だから俺は、自分から高志の胸に飛び込んで、ぶつかるようなキスをした。



 高志の大きな身体が俺に覆い被さるようにして丁寧に床に寝かされる。
 周囲は淡く白く発光し明るいままだ。
 俺は手の置き所が分からずに、結果横になって丸まってしまう。
 お互いに白い和服の夜着一枚。
 高志が笑う気配で、俺の肩口にちょんと口づけする。それだけで俺の緊張はマックスまで高まってしまって、思わず大きな声で叫んだ。

「ていうかさ!? ムードがないよムードが!! 電気の電源スイッチないの!?」

 突如ぽんっと軽い音をたてて辺りが夕暮れに近く薄暗くなった。

「くくっ……はは! 花嫁の言うことはなんでも言うことは聞いてくれるみたいだな、この空間は」

 我慢できないと忍び笑いから声を上げて笑いながら高志がいったん顔を上げる。

「ううっ……」
「さて、俺の頼みはどうかな」
「何……頼むの」
「水性ローション」
「ばっか、止め……っそんなもの」

 ぽんっと音がしてやはり白い空間に透明な……ジェルの容器が目の前に現れた。

「わぁ!?」
「あはははは!」

 高志さんは大爆笑だ。もう、本当にムードもへったくれもない。

「さて道具は揃った。君の、名前……ヒカルって呼んで良いか?」
「う、うん。名前、知ってんの?」
「婆さんが何度も枕元で唱えてくれたからな」

 転がされふて寝した犬のような格好だった俺の肩を手のひらで抱かれて、そっと俺は仰向けに寝かされる。う……思ったより顔が近い。

「キスから、始めよう。キスの経験は?」
「……ないよ」
「ああ、じゃあ、さっきしたのが……」
「ファーストキスだったよ!」
「そりゃ……悪かった。今度は丁寧にする……」

 そう言って、頬を指で優しく撫でられるともう返す言葉がなかった。
 近づいてくる端正な男らしい顔を、俺はギリギリまで見ていた。それからぎゅっと目を瞑る。
 ちゅっ、ちゅ……と啄むようなキスだった。
 唇の先を使って軽く、俺の唇を色々な方向から啄む。
 唇が終わると頬や目尻や、額、鼻筋……そっと触れるだけのキスを繰り返していっこうに進もうとしない。顎先を持ち上げられてそこにキスされたときには俺もかなり安心していて、思わず目を開けて笑った。

「擽ってぇんだけど……」
「丁寧にするって宣言したからな」

 野生の瞳が茶目っ気を覗かせて俺の瞳を見つめている。この距離。たぶんこれからもっともっと近くなる。

「ほら、舌出せ。舐めてやるから」
「う゛うー……」

 それはすごく、エロチックな体験だった。
 最初はちょっとだけ、舌先を恐る恐る出すだけだった。その舌先を高志が同じく舌先でつついたかと思うと、舌腹で大きく舐め上げられた。他人の粘膜に触れたのはこれが初めてだ。柔らかくて、熱くて、濡れてる。
 つつっっと唾液が滴り落ちてきて、俺の唇を濡らす。
 嫌悪感はない。高志の匂いを濃くした、甘い味。これが高志の味だと思うと、胸と両足の付け根がなぜかきゅうっと締め付けられるように痛んだ。
 そんな俺の変化にお構いなしに、高志の舌が口のなかに潜り込んでくる。ぬるぬると舌同士を絡められて、吸い上げられる。高志は押しては引いて、ぴちゃぴちゃと音を立てながら俺のパサパサの髪を撫で、頬を軽く指で押したりと時おり遊んだ。

「ヒカル、腕を俺の首に回して」
「んっ……んぅ、ぁ……ん……分かった」

 正直もう俺の下半身は期待で芯から立ち上がっていた。下着を押し上げて布地に擦れる度に大きくなっている。それを自然と高志の太ももあたりに擦り付けてしまって、腰が浮く。貪欲な自分を恥ずかしく思いながら、ぎゅっと高志の身体を引き寄せた。

「脱がすぞ……可愛いな、小さな乳首が立ってる」

 夜着の袂を割って大きく前を脱がされる。帯も解かれてしまって、今や俺は下着だけの半裸に腕に夜着を絡ませた状態だ。
 ふっと高志が俺の、尖った乳首に息を吹き掛ける。

「感じてる?」
「……っん。見りゃ、わかんだろ……!」
「ヒカルの口から聞きたい」

 と、いきなりちゅぷっと乳首を唇で吸い上げられる。軽く前歯で噛んで、引っ張られる。

「いひゃい……?」
「ぁっ、んんっ……、あ、あ……」
「それとも、きもちひぃ?」

 くりくりともう片方の乳首も空いた手で弄られる。小さく快感を主張して立ち上がっている乳首を、爪先で押し潰されて俺はとうとう音を上げた。

「きっ、もち……んっいい、……ん。気持ちいぃ……」
「──うん、素直な良い子だ」

 もっと気持ち良くしてあげよう、と低い声で耳に囁かれる。
 身体中を滑る手がまだ両足の間だけは触ってくれない。俺はついねだってしまっていた。

「……はぁ、ココも?」

 両足を開いて腰を押し出し、下着の上から両手で股間を隠すような、上下に触るような仕草をしてしまう。自分でも卑猥だはしたないと思ったが、止められなかった。

「君ときたら……っ」

 眉を微かに寄せて、なにかを堪えるような顔を高志がした。ちょっと勝ったような気分がして、俺は紅潮する頬のまま僅かに微笑んだ。



 片手で下着を脱がされる。
 俺も腰を上げて自ら下着を下げられるのを手伝った。
 下着からぴんっと跳ねて飛び出した高ぶりをじっくりと眺めてから、高志は俺の上で自分も帯を解いた。
 筋肉質な身体が重なってくる。
 両手が、胸から脇腹、戻って胸板を撫でて、じっくりじっくり愛撫してくる。
 両足を片方ずつ爪先まで撫でられて、親指をべろりと舐め上げられると俺の切っ先からは透明な先走りがとろりと流れ落ちた。
 
「っ……!んぅ……は、はぁ……高志、さ」
「綺麗だな、どこもかしこも。スポーツをやってたからもっと傷だらけかと思ってた」

 ほんの少し息が上がった高志が俺の膝頭を撫でて、そこの皿に歯をたてる。痛くはない、今からお前を食べるんだぞと宣言されてるようで、とにかく触れられるどこもかしこも気持ち良かった。
 散々焦らして、ゆっくりと手がそこに降りてきた。
 けれどまだ中心に触れてはくれない。

「ヒカル、両膝を立てて開いて」

 言われたとおりの恥ずかしい格好をしたのに、足の付け根を押したり、尻を軽く割り開いたりと指先は遊ぶだけだ。

「恥ずかしいな、ヒカル。一生懸命揺れて、先っぽが濡れてる。……何をしてほしい?」
「っこの、サディスト! 分かってる、だろ……?」
「いや、言ってくれないと分からない」
「この……っ!」
 
 手を振り上げてみて分かった。俺はもうふにゃふにゃだった。
 振り上げた手をそのまま広い背中へと回して、最後の抵抗とばかりにちょっとだけ爪を立てて、俺は必死にしがみついて高志の耳におねだりを口にした。

「俺の、そこに、……ちんぽに……触って」
「良くできました」
「あっ、あ、そういう意味じゃ──っ!!」

 腕で内股を押さえるようにされたかと思うと、あっという間にそれは高志の口に咥えられた。熱い。ひたすら熱い口内に、そういえば事が始まってからずっと高志の身体は温かかったな等と思い至る。
 しかしそんなことを考えられたのも一瞬で、欲望の証を舌に引き当てられじゅっと音を立てて吸われてはそんな強烈な快感の経験のない俺は瞬時に上り詰めてしまった。

「や、ぁっ……んっ、出る、くっぅ……イく、イっちゃうよ」
「はは、イっちまえ。先に出すと後が多少なりとも楽になる」 

 後。この後のこと。尻の穴がきゅっと締まったのが自分でも分かった。
 想像だけで、俺は果てた。

「はぁ、はぁ……ぁ、高志さ、ん……」
「可愛かったぞ。全身真っ赤で」

 どこからか現れたティッシュで手を拭く高志が首をかしげて笑う。揶揄も今は気にならない。それどころではないものが目の前にあったからだ。 

「俺で、勃起……してんの? それ」

 ボクサーパンツの前を押し上げている、それ。

「ん? ああ、セックス自体は久々だし……初恋だ。触ってないのにもうこんなだ」
「……うん」

 高志が目の前で下着を脱いでくれた。現れたのは半勃ちの、太い雄。長さもあり、俺のより色味が黒かった。
 ゲイビで何回も目を薄くして眺めたそれ。修学旅行では友人達のは目には入らないように最新の注意を払っていた……それだ。

「俺も……高志さんを、気持ち良くして……いい?」
「なんだ。舐めてくれるのか」
「ん。駄目……?」
「大歓迎だ」

 上下を入れ替わる。俺は何度も辞退したけれど、高志が絶対だと譲らなかったので……俺は高志の顔を跨いで、身体の上に乗り、高志の股間に顔を伏せた。
 目の前の下生えを分けていけば、黒っぽい棒状の肉の塊がある。ひくひくと震えていて、その……美味そうだった。うっわ、恥ずかしい。
 そっと指先で持ち上げて、裏スジをまず舌で舐め上げる。息を詰める高志の様子が伝わってきて、嬉しくなって、今度は丸い亀頭部をかぽっと口のなかに入れた。濃い、雄の匂いが花に抜ける。まるで、俺にとっては待ちかねたキャンディーだった。ちゅぽちゅぽとゆっくり口から入れたり出したりする。高志の下腹が僅かに痙攣して、手の中でそれの体積がぐんと増した。
 嬉しい。嬉しい。

「ヒカル、あぁ……そうだ、そのまま奥まで飲み込んで」
「ん゛っんん……」

 言われたとおりにぐぐっと喉を開いて奥まで高志を迎え入れる。苦しい、きつい。えづいてしまいそうになりながらも、出きる限り飲み込んだ。そして、高志が腰を前後に揺するのに合わせて必死で口を開き続けた。

「んっ……君って子は……は、悪い子だ。初めてでこんなに、尽くしてくれる……っ」

 高志の限界も近そうだった。俺は高志の足の付け根にある袋を揉んだり、唇をすぼめたりしながら、とにかく出きる限りのことをした。

「はっ、は……出すぞ。……飲めるか?」
「ん、っ……う゛ん、ん……」

 窒息するかも、けどそれでも良い。俺は頷いて、高志の完全に勃起しはち切れんばかりの大きさになったそれを擦りながら、喉の準備をした。

「あ、ああ゛……っ出る!!」
「んっく、ぐ、……」

 熱い本流が、喉にへばりつきながら次から次へと俺の体内へと潜り込んできた。喉をならし、どうにか飲み込む。そうだ、ただの水じゃないんだ。そんなごくごく飲めるもんじゃ……途中で飲みきれなくなった俺は、少しだけ唇から白濁を溢した。 
 
「は、は……ふは、んっく、はぁ──……飲んだ、ぜ?」
「ああ、ヒカル……っ!」

 そのまま虚脱するかと思った高志の身体は、すぐに俺の身体を跨ぐと正面へとやってきて、自分の出したそれを構わずに俺にキスをした。というか、顔中を舐められる。髪を掻き上げられて、額に長くキスをされた。

「苦しかっただろ?」
「べ、別に。……余裕、だったし」

 本当だ、嘘じゃない。ちょっと苦い味も嫌いじゃなかった。

「はは、そうか。……なら、もう一回大きくしてくれないか? 君の中に……入りたい」

 囁かれて、俺は心臓が大きく脈打つのが自分でも分かった。



 お互いにまた姿勢を戻して口で互いのものを咥えて、刺激する。
 俺はもうすごく興奮していて、目の前の勃起している高志のものを一心不乱に舐めていた。

「子猫がミルクを飲んでるみたいだな……うまいか?」
「ん……おい、ひい……」

 そんなやり取りをしている間にも高志は俺の足の間で何やらやっていた。と、とろりと尻の合間にジェルが垂らされた。

「ひゃっ」
「冷たいか?」
「んっ……んーん、ビックリしただけ……温かい」
「へぇ。温感ジェルとはまた用意が良い」

 変なところに高志が感心して、

「最初は違和感あるだろうけど、すぐ良くしてやるからな」

 ジェルでたっぷりと濡らされたそこに、つぷりと、指が入ってきた。

「あっ……ん」
「痛いか?」
「……く、ない。変な、感じ……」

 長い指が狭い肉の隙間を入ってくる。そして指腹が中の媚肉を押し、広げて、俺は次第に腰を振っていた。

「悪くないようだな……指を増やすぞ」

 高志の嬉しそうな声がして、しばらくすると二本に増えた指がぐぐっと挿入された。俺はもう高志のものをただ握るだけになってしまっていて、内部からの圧迫感とくすぐったいような微かな快感に声を漏らしていた。

「んーっ……ぁ、あ……高志さ、……そこ、もっと」
「ここか? 気持ち良い?」
「ンッ……なんか、ふわふわする……」
「君のイイところみたいだな。さて、ちょっと本気出すからな」
「え? あ、や、んんっ……! まって、ひ、んっそこ、だめ! 一緒に、駄目!!」

 高志は俺の欲望を咥えると、そのまま二本の指でふわふわしたそこをぐっと押した。とたんに俺の腰は跳ねて感じたことのない快感が俺を襲った。中がきゅうっと締まり高志の指の形を意識してしまう。なのに高志は止めてくれずに、そこを押したり二本の指で挟んだりしてジェルの水音を響かせている。

「んっ。……可愛いな、ジェルをお漏らししてるぞ。……もっとってココの入り口がヒクヒクしてる」
「あ……! たかし、さんのえっち……言わな、言わないで」

 指は最終的に三本まで増やされた。俺はもう内股ががくがくして、何度も「許して」と口にしたが俺のそこがトロトロ溶けて入り口が軽く指で伸ばせば開くようになるまで、高志は愛撫を続けた。

「さて、そろそろ良いかな。俺も、我慢の限界だ」
「挿れ、る……?」
「ああ、君の中に入れてくれ」

 体勢を向い合わせにして覆い被さってきた高志は自身の髪を両手で掻き上げて素顔を露にする。髪が汗でしっとりと濡れて、格好良かった。胸がきゅうぅんと鳴る。
 もうどうしようもなかった。俺は、この人が好きだ。
 既に死んでいるのに。
 ちょっと優しくされて、ちょっとからかわれて、それでセックスしてるだけなのに。
 俺もきっと一目惚れだった。

「少し苦しいだろうが、正面からいかせてくれ。顔が見たい」
「……ん。俺も、顔、見てたい」
「そうか。なら良かった」

 腰を抱えられて、身体を二つ折りにされる。両足もがばりと開かれて何もかもを高志に見せる姿勢だ。

「膝が持てるか? そう、膝裏抱えて」
「ん」
「……苦しかったら、言え」
「ん……」
「途中で止めてやれるかは、分からないが」
「……ばか」
「はは、」

 ぴたりと高志の熱が俺のとろけた穴に当てられる。低い喉声で、高志が俺の名前を読んで、気持ち良さそうに入ってきた。最初は少し苦労してから、くぷりと亀頭部が。それから俺にとってはすごく長い時間をかけて竿部分がぬっぬっとゆっくり上下に動きながら。

「はぁ……はぁ──」
「すでにっ……良さそうだな」
「ま……だ?」
「まだだ。……いや、全部、入った」

 トンっと高志の腰骨の一部が俺の尻に当たった。そのとたん、ビリビリと快感が背中を駆け上がってきて、俺はもう少しで、たったそれだけでイキかけた。

「あぁ、高志、さ……ん!」
「ヒカル……!」
「おれのなか、どう……?」
「イイよ。最高だ。……駄目だ、我慢できん。動くぞ」

 腰を抱えられて揺すられる。それから嵐のような注挿が始まった。


10
「んぁっ! あんっあ、あ、んぅっ……た、かし……さっ!」
「んっ? どこが、イイ? 言ってみろ」

 腰を震えがくるほどに打ち付けられる。高志はまだ余裕で、どこか微笑みを浮かべながら俺の上に君臨している。
 そうだ、俺はこうされたかった。組み敷かれて、混ぜられて、奥まで突き上げられる。ずっとされたかったこと。
 今それが叶っている。

「あっ、んー……好き、これ…ぇすきぃ……!」
「何がだ? これって、なんだよっ」
「高志さんっ……の、これぇ、あ、きて、もっと奥、おく」
「良いぜ、これが好きなんだな」

 高志の屹立が俺の中でぐんっと大きくなる。潜り込んで掻き乱して、俺を泣かす。本当に気持ち良すぎて涙が浮かんできた。いや、これが終わったらと思うと……涙が出たって仕方ないだろ?

「んは、すき……高志さ、好き──」
「は、俺も好きだ。ヒカル……ヒカルっ、だから、泣くな」
「勝手に、涙が、出る、っんだよ!」
「はは、そうか……ただ気持ち良く、なって喘いどけ」
「ん、うんっ……は、んぁ」
 
 ぐりぐりと先ほど指で攻められたところを再度責められる。浅い位置なのに、奥まで挿入した方が絶対気持ち良い筈なのに、高志はそこを何度も擦ってくれた。

「んっん゛ー……っ! は、あっん、も、やっ……イク! やだ、終わりたく、ない!」
「俺だって、イキったくねぇけどな。……おまえのここがきゅうきゅう俺を食い締めるからっ」 
「あ、っあ、だって終わったら、あんたは、もう」
「ああ、さよならだ」

 ずんっと太い屹立が肉を割って奥深くまで埋められる。

「!!」
「可愛い、っ俺の、ヒカル……!」

 抱き締められ、キスをされる。
 どくんと脈打って、熱い飛沫が俺の中の最奥部で弾けたのが分かった。次いで俺も、その衝撃で白濁を撒き散らす。
 
「高志さん!」

 ぎゅっとその肩を抱いた。広くて厚い肩。それが急速に薄れていってしまう。
 嫌だ。
 せっかく会えたのに。
 ……死んだ相手が運命の人だなんて。
 
「ヒカル!!」
 
 間近で顔を見つめられる。強い意志を持った瞳が薄らいでいってしまう。

「……愛してる」

 額同士を重ねられた。頬に当たるのはどちらの涙だろう。

「俺も、愛してる……」

 呟いた声は届いただろうか。
 たった一回寝ただけで愛してるなんておかしいだろうか。たった一晩語らっただけで愛してはいけないだろうか。
 魂が触れあったと、微かに、触れあったんだと思ってはいけないだろうか。

「高志さ……っ!」

 がばっと飛び起きると、そこは昨夜に寝かされた和室だった。
 俺は、高志の手を握ったまま眠りに落ちてしまったらしかった。
 
「おお、お目覚めか」

 隣の部屋から音もなく、昨夜の老婆が襖を開けて入ってくる。
 けれど俺はそんなの気にしていられない。だって、冷たいんだ。高志の手が。さっきまであんなに温かかったのに。

「ねぇ!? 高志さん!! ねぇってば、起きてよ!!」
「ど、どうされたんじゃ。花嫁どの」
「高志さん!!」

 いきなり高志の身体に布団の上から縋って泣き始めた俺に、流石の老婆も狼狽しているようだった。けれど俺は身体を、棒のように固く冷たくなっている高志を揺すって喚いて、泣いて泣いて離せなかった。
 家からじじいが迎えに呼ばれて、俺は半場引き剥がされるようにして家に連れて帰られた。 早朝で、空は青く澄み渡っていた。
 そこを俺はじじいに肩を抱かれて泣きながら帰った。
 

11
 俺は部屋に籠って泣き続けた。
 大失恋だ。
 いや、恋なんて始まってもいなかった。だって高志は最初から「死人」立ったんだから。あの白い部屋のことがまやかしでしかなかったのだ。
 
「生きて、いる内に……会いたかったよ……高志さん」

 自分の嗚咽で息が出来なくなるほど泣いて、それから、俺はまた眠りに落ちたらしかった。
 気づくと夕暮れ間近で、涙でベタベタの顔を洗いたくて、俺はこっそりと母屋の家族が暮らす棟の方へとそろりと忍んでいった。
 外ではまだセミ達が五月蝿いほどに鳴いていた。
 
「……んなことが起きるなんてねぇ」
「それにしたって、う~ん……」

 今では父と母がなにかを深刻そうな顔で話していた。それにそっと背を向けると、洗面所へ向かう。
 顔を洗っていると、じじいがタオルを持って来てくれた。それにかすれた声で「ありがとう」とだけ告げると、すり抜け様にじじいが俺の腕を握った。微笑んで、肩もぽんぽんと叩かれる。

「頑張ったな」

 それは高志の言葉ではなかったか。俺を励ましてくれた魔法の言葉。

「お前のお陰で、冥婚は大成功じゃ。今日昼間、葬式に行ったら柳原家の皆は泣いて喜んでおったぞ」
「葬、式……」

 そうだ、葬式。
 それではもうあの肉体は……燃やされてしまったのか。

「あ、ぁ……もう、二度と、会えない……」
「何を、言っておるんじゃ?」
「もう、会えない……」
「ヒカル!?」

 廊下でずるずると座り込んでしまった俺をじじいが支えようと腕を差し出す。その腕をはねのけて、俺はまた泣いた。いや、泣こうとした。そのとき。

「なんだ。意外に泣き虫だな。せっかく愛しの花嫁に会いに来たってのに」

 声がした。
 ここでするべきではない、声。
 俺は怖々顔を上げて、廊下のガラス戸を振り仰いだ。それは広い庭に通じる掃き出し窓だ。
 その向こうに、立っていた。
 夕暮れを背景に、影法師のように立つその姿。夕日がその横顔を照らした。

「高志、さ……?」

 夢を見ているようだった。
 グレーのスーツに、さらに濃い灰色のシャツ。ネクタイ。
 夕日に輝いてピカピカの靴先が僅かにに尖っていた。
 高志だった。紛れもなく、昨夜抱き合った、もう燃えてしまったはずの……高志だった。

「冥婚ではさ」

 その高志がゆっくりと近づいてくる。
 俺は、ガラス戸に縋りついてなんとか立ち上がっていた。

「冥婚では、ときどきあったらしい。結婚式を挙げた翌日、花婿が甦ることが。流石に、事故に遭ってぐちゃぐちゃで、解剖までされた男が甦った例はないらしいけど」

 高志が苦笑する気配がする。

「傷一つない、まっさら新品な身体だぜ? お前もきっと気に入る」
「え、待ってよ。頭が、追い付かない……」
「だから……」

 後数歩で高志に手が届く。もうそんな距離だ。
 高志が、あの鷹の目をして、けれど柔和に笑った。

「だから、甦ったんだ俺は。お前に会いに、戻ってきた」
「嘘だ、そんな……っ! 高志さん!!!」
 
 俺は縁側を飛び降りて裸足で土を蹴った。高志が腕を広げて待っていてくれる。その胸の中にと飛び込んだ。ぎゅっと抱き締める。熱を持った、少し汗ばんだその身体を。
 温かい。熱い程だ。

「はは、は……生きてる……生きてる……!」
「そうだ、俺は生きてる。たぶん全部、お前のお陰だ。お前があの白い空間から、俺を救いだしてくれた」

 高志の厚い胸板の奥で、鼓動が強く鳴り響いていた。
 俺はもう無我夢中で、高志を引き寄せその温かな唇にキスをした。
 返ってくる力強い腕の抱擁。絡み合う舌、吸い上げる唾液に何度も合わせあう粘膜。
 全てが高志が生きている証拠だった。

「そうだ、お前に。ご祝儀だ」

 キスを終えてまだぼうっとしている俺に高志が腕に提げていた紙袋を押し付けた。一抱え分はあろうという中には、ご祝儀袋が山と入っていた。

「冥婚といえど結婚式じゃからな。昨夜は村中の者が式に出たからのう……結構な額になっておる筈じゃ」

 背後から、ゴホンっとわざとらしい咳払いと共にじじいが割って入る。

「ほれ、それが約束の小遣いじゃ。それを持って東京でもなんでも、行ってしまえ」
「浪人生なんだろ? 俺のマンションから予備校に通えば良いさ」

 二人の声が重なる。
 こんなことってあって良いのだろうか。

「うん!」

 俺は大きく頷いた。その顎をとらえて、また高志がキスをした。
 
 「死人」と結婚したら、俺だけの旦那様が出来てしまった。
 これが、俺のハッピーエンドだ。
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