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Part 3. 遠矢を探して
バルボアのレイ
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良平はその日も夜の街を駆けずり回り、聞き込みを続けていた。
「良平!」
背後から呼び止められる。
振り向くと、則子が肩をいからせて立っていた。
「則子、お前こんなとこでなにやってんだよ!」
「それはこっちのセリフよ! 何やってんのあんた講義もろくに出ないで!」
良平は則子の手を取った。
「危ないよ! こんなとこ女の子ひとりで出歩くなんて」
「あんたならいいって言うの?」
「俺は男だから」
「こんなとこ男のが危ないんじゃないの?」
則子は良平の手を振り解いた。
「例の人のこと、ずっと探してるんでしょ」
良平はためらいがちにうなずいた。
「まともじゃないよ……こんなとこいる人なんて」
「いいから帰ろう。送っていくから」
則子は不承不承頷いた。
則子の手を取って振り向いたとき、路地の向こうを数人の男女が歩いているのが目に入った。
良平の動きが止まる。
「……良平?」
「この広い通りの明るい部分を、薫さんの店まで走るんだ。いいな!」
良平は走り出した。
「良平!」
良平は彼らを追いかけて路地を飛び出した。当たりを見回す。
いた。
さっきの数人の若い男だ。チンピラ風で、いかにも素性が怪しい。
彼らに肩を抱かれて、パーカーを羽織った小柄で銀髪をところどころ緑に染めた女が談笑していた。
「遠矢!」
良平は叫んだ。
驚いて彼らが振り返る。
訝しげな彼らの中で、女だけが、表情を凍りつかせていた。
「良平……」
女の口の動きは、はっきりそのように見えた。
「なんだこいつ」
「レイ、客か?」
レイ、と呼ばれた女……遠矢は、すぐに表情を硬化させた。
「さあ、知らない。行こう」
遠矢は背を向けた。良平は叫んだ。
「遠矢! 帰ろう、お母さんも心配してる!」
男たちは面白そうに良平を見た。
「なんだこいつ、保護者か」
「ストーカーだろ。こいつ色恋営業だから結構ついてる」
彼らはゲラゲラと笑った。
こいつらの相手をしてもしょうがない。良平は遠矢の手を取った。
「行こう、こんなとこにいるもんじゃない」
「放せよ!」
遠矢が抗うと、男の一人が良平の手を握ってねじった。
「おいおいおいおいおい、先客は俺なんだよ。順番は守る、それが世の中のルールよ。わかる?」
「なんでもいいけどよ、店通さずに客取るのはダメだろ」
「……わかってる」
別の男の言葉に、遠矢は神妙にして答えた。
良平はもがきながら叫んだ。
「お前が怒るのは当然だ! 何も考えないで突き放したのは俺だ! でも間違ってた! 俺は話合いたいんだ!」
「うるさいな! なれなれしいんだよ! バージンあげただけで舞い上がりやがって!」
男達は、ヒューッ、と口笛を鳴らした。
「お互い様かな? あ、痛くてできなかったんだっけ? 残念、オレの童貞は別の人にあげちゃったよ!」
男達がギャハハ、と笑った。
「へー、面白そうじゃん」
「俺話聞きたいわ」
「お前らな、今日の客は俺だって言ってるだろ」
良平の手を捻っている男が良平を引き剥がした。
「こんな奴らと一緒にいるな! 行こう遠矢! とにかく帰ろう!」
良平は遠矢の肩を掴んだ。
「さわんな!」
「こらこら少年、いやがってるのに無理矢理ってのは、よくないな!」
別の男が、良平を殴りつける。
良平はもんどりうって倒れた。
遠矢はそれをみて「あ……」と口を開きかけたが、キッと唇を結ぶと、良平をにらみ付けた。
「もういいよ、行こう」
遠矢は背を向けて歩み去った。
「遠矢!」
起き上がっている間に、男達は角を曲がっていなくなってしまった。
「キズ見せて」
振り返ると、則子が立っていた。
「たいしたことはないかな? 帰って治療しよう」
「帰れって言ったろ……」
「帰れるわけないでしょ、あんなんで」
「ほっとけよ!」
良平は則子に背を向けてようとしたが、手を取って歩き出した。
則子はうつむきながらそれに続く。
「あの人、ただの友達じゃないよね……」
良平はしばらく黙っていたが、「ああ」と答えた。
「恋人、なの?」
良平は頷いた。
「寝た、の……?」
良平は再び頷く。
「どのくらい……?」
「たくさん……」
則子は顔を歪めた。
「薫さんとは……? したの?」
「いや、あれは……」
「したの!?」
良平はうつむくと、頷いた。
則子は膝に額をつけた。
「ねえ、私ってなんなの……? ホイホイ転がってきたから女ともヤろうってだけ? ホモのくせに。気持ち悪い……」
「違う!」
良平は叫んだが、則子は手を振り解くと、則子は目尻を拭って良平に背を向ける。
則子はそのまま歩み去った。
良平は呼び止めようとしたが、言葉が出てこなかった。
「良平!」
背後から呼び止められる。
振り向くと、則子が肩をいからせて立っていた。
「則子、お前こんなとこでなにやってんだよ!」
「それはこっちのセリフよ! 何やってんのあんた講義もろくに出ないで!」
良平は則子の手を取った。
「危ないよ! こんなとこ女の子ひとりで出歩くなんて」
「あんたならいいって言うの?」
「俺は男だから」
「こんなとこ男のが危ないんじゃないの?」
則子は良平の手を振り解いた。
「例の人のこと、ずっと探してるんでしょ」
良平はためらいがちにうなずいた。
「まともじゃないよ……こんなとこいる人なんて」
「いいから帰ろう。送っていくから」
則子は不承不承頷いた。
則子の手を取って振り向いたとき、路地の向こうを数人の男女が歩いているのが目に入った。
良平の動きが止まる。
「……良平?」
「この広い通りの明るい部分を、薫さんの店まで走るんだ。いいな!」
良平は走り出した。
「良平!」
良平は彼らを追いかけて路地を飛び出した。当たりを見回す。
いた。
さっきの数人の若い男だ。チンピラ風で、いかにも素性が怪しい。
彼らに肩を抱かれて、パーカーを羽織った小柄で銀髪をところどころ緑に染めた女が談笑していた。
「遠矢!」
良平は叫んだ。
驚いて彼らが振り返る。
訝しげな彼らの中で、女だけが、表情を凍りつかせていた。
「良平……」
女の口の動きは、はっきりそのように見えた。
「なんだこいつ」
「レイ、客か?」
レイ、と呼ばれた女……遠矢は、すぐに表情を硬化させた。
「さあ、知らない。行こう」
遠矢は背を向けた。良平は叫んだ。
「遠矢! 帰ろう、お母さんも心配してる!」
男たちは面白そうに良平を見た。
「なんだこいつ、保護者か」
「ストーカーだろ。こいつ色恋営業だから結構ついてる」
彼らはゲラゲラと笑った。
こいつらの相手をしてもしょうがない。良平は遠矢の手を取った。
「行こう、こんなとこにいるもんじゃない」
「放せよ!」
遠矢が抗うと、男の一人が良平の手を握ってねじった。
「おいおいおいおいおい、先客は俺なんだよ。順番は守る、それが世の中のルールよ。わかる?」
「なんでもいいけどよ、店通さずに客取るのはダメだろ」
「……わかってる」
別の男の言葉に、遠矢は神妙にして答えた。
良平はもがきながら叫んだ。
「お前が怒るのは当然だ! 何も考えないで突き放したのは俺だ! でも間違ってた! 俺は話合いたいんだ!」
「うるさいな! なれなれしいんだよ! バージンあげただけで舞い上がりやがって!」
男達は、ヒューッ、と口笛を鳴らした。
「お互い様かな? あ、痛くてできなかったんだっけ? 残念、オレの童貞は別の人にあげちゃったよ!」
男達がギャハハ、と笑った。
「へー、面白そうじゃん」
「俺話聞きたいわ」
「お前らな、今日の客は俺だって言ってるだろ」
良平の手を捻っている男が良平を引き剥がした。
「こんな奴らと一緒にいるな! 行こう遠矢! とにかく帰ろう!」
良平は遠矢の肩を掴んだ。
「さわんな!」
「こらこら少年、いやがってるのに無理矢理ってのは、よくないな!」
別の男が、良平を殴りつける。
良平はもんどりうって倒れた。
遠矢はそれをみて「あ……」と口を開きかけたが、キッと唇を結ぶと、良平をにらみ付けた。
「もういいよ、行こう」
遠矢は背を向けて歩み去った。
「遠矢!」
起き上がっている間に、男達は角を曲がっていなくなってしまった。
「キズ見せて」
振り返ると、則子が立っていた。
「たいしたことはないかな? 帰って治療しよう」
「帰れって言ったろ……」
「帰れるわけないでしょ、あんなんで」
「ほっとけよ!」
良平は則子に背を向けてようとしたが、手を取って歩き出した。
則子はうつむきながらそれに続く。
「あの人、ただの友達じゃないよね……」
良平はしばらく黙っていたが、「ああ」と答えた。
「恋人、なの?」
良平は頷いた。
「寝た、の……?」
良平は再び頷く。
「どのくらい……?」
「たくさん……」
則子は顔を歪めた。
「薫さんとは……? したの?」
「いや、あれは……」
「したの!?」
良平はうつむくと、頷いた。
則子は膝に額をつけた。
「ねえ、私ってなんなの……? ホイホイ転がってきたから女ともヤろうってだけ? ホモのくせに。気持ち悪い……」
「違う!」
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