パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し

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31.白と黒

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 夜の刻になり、みんなで楽しく夕食を囲んだあとのことだった。

 これから俺は一体誰の部屋で寝るべきなのか? というしょーもない議論になったんだが、結局俺がみんなの誘いを断る形で広間ということになった。その代わり、みんなでそこに寝るという条件付きで。

 俺を庇護するという意味合いが強いのだろうが、それでもこの状況じゃ眠れるはずもなく、真っ暗な部屋で目を瞑っていても俺の意識ははっきりしていた。

 それと、単純に悔しかったってのもある。

 いつの間にか疑うということが頭からすっぽりと抜けてしまうほど、みんな俺を温かく迎えてくれた。なのに、そんな彼女たちが自分を人柱として利用しようとしてると思い込んでいたことが悔しくて仕方なかったんだ。カルバネの言葉が尾を引いて、まだ完全には信用できていないということも。こんなによくしてくれるのに、どうして彼女たちをもっと信じてやれないんだと……。

「――ねえねえ、バニル、起きてる?」

「うん」

「……」

 ルシアとバニルの声だ。二人とも起きてたのか。

「カルバネから届いた手紙のこと、あんたはどう思う?」

 手紙……? カルバネは一体、手紙で彼女たちに何を伝えたんだ。

「……セクトが狂戦士症を利用してグリーンを襲うって話でしょ。そんなの信じる余地なんてないよ」

 グリーン……おそらくワドルたちのパーティー『グリーンキャッスル』の略だろう。カルバネはなんでそんな大事なことをこっちに伝えたんだ?

 ってことは……そうか、罠だったのか……。まず手紙を届けて、バニルたちの様子が変わることを期待して俺にここに行かせたと考えると合点がいく。バニルたちがこういうことを直接訊ねるのは、まるで俺を疑ってるみたいでためらうだろうしな。

「それはあたしだって同感だけど……正直気味が悪いわ。カルバネたちが何か企んでるんじゃ? セクトがそういうことをやるように仕向けて、それをあたしたちに知らせることでレギュラーの座を狙ってるとか……」

 ルシアの言うことにはうなずけるものがあった。やつらならそういうことをしてもおかしくない。

「いくらなんでもそこまでしないと思う」

「バニル……もうあの頃のカルバネはいないのよ。あいつが今まで新人にどれだけ酷いことをして追い出してきたか、わかるでしょ」

「……わかるけど、今度はどんなことがあっても守るから。セクトはね、仲間に裏切られて命を失いそうになっても、それでも人を信じようとしてる。それって、誰にでもできることじゃないと思うの。この人なら何かを変えてくれるってそう思ったから、リーダーに入れてもらうように頼んだんだ。能力が凄いとか、可哀想とかじゃ絶対に入れるつもりなんてなかったし……」

「……」

 俺は感動してしまって今にも涙が込み上げてきそうだった。

「バニルってホント、お人よしね……。セクトと同じ。あたしがリーダーだったらとっくにカルバネたちを追い出してるわよ」

「……カルバネはね、昔はああじゃなかったから。あの人をこんな風にしてしまったのは、意思の疎通を上手にできなくて、お互いに気まずくなっちゃったから……」

「……そういや、カルバネってバニルの幼馴染なんだっけ」

「うん。一緒にダンジョンについて夢を語り合ったときもあったから……」

 そうか、バニルとカルバネは割と親しい関係だったんだな。関係が深いほど、こじれると険悪な仲になりやすいというのはわかる気がする。

「それで、どうするのよ。明日の夜、例の場所に行くの?」

「一応行くよ。でも、そこでセクトがそういう人じゃないって向こうもわかってくれると思う」

 ……多分、ルシアの言う例の場所っていうのは、俺が襲う予定だったギルド前の路地裏近辺なんだろう。

 バニルたちの俺に対する気持ちはよくわかったし、『グリーンキャッスル』を襲撃するつもりは一切なくなったが、カルバネたちはバニルの思惑通りには動かないだろうな。あいつらはこんな罠を張る時点で黒すぎる……。
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