パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し

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118.全てが連なるとき

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「――よし、これで終わり。みんな、本当にありがとう……」

 俺はついに、バニル、ルシア、ミルウから一度も触れられずにゾンビごっこを終わらせることができた。みんな、一様に疲れた様子で座り込み、荒い呼吸を繰り返している。本気で俺を捕まえにきてくれていたことがよくわかる光景だった。

「……セ、セクト、ゾンビごっこ強すぎだよ……」

「な、なんで……捕まえられないのよ……!」

「……あふっ。セクトお兄ちゃん、まだ余裕そうだしい……」

「……」

 そうなんだ。みんなが息を切らしてる中で、俺はまったく疲弊していなかった。

 これならいける……そう確信できるのは、体力を一切使わずに誰にも触れられない自信があるからだ。この最強の回避方法――ワープ戦法――さえあれば、俺は『ウェイカーズ』に勝てるどころか、やつらでさえオモチャ扱いできることになる。

 思えば、狼峠でラピッドウルフたちの攻撃を気配察知能力に頼って回避しまくったことも今につながっていたんだな。回避こそ俺の強みなんだ……。全てはあそこから始まっていたわけで、運命的なものさえ感じる。相手どうこうじゃなく、自分次第でいつでも回避できるというのがいい。

「……」

 スピカが戦ってるのが遠目に見える。

 驚くべきことに動きは全然変わってない。むしろ、ボスの速い動きに慣れてきてさらに良くなってるんじゃないかと思えるほどだ。それでも、万が一のことがあるから油断はできない。

「バニル、ルシア、ミルウ。怪我とか病気とか、ハンデがあってもみんなの動きは悪くなかったから、体力が回復したと思ったらスピカをサポートしてやってくれ。頑張りすぎない程度にな。直接戦わなくても、声を掛けるだけでも励みになると思うから」

「……うん。セクトも頑張りすぎないようにねっ」

「もちろん、俺も無理はしない。ちゃんと生きて帰ってくるつもりだ。バニル、ありがとう」

「「……」」

「ちょ、ちょっと! 二人とも何いい雰囲気になってんのよ! セクト、あんたを最後に捕まえるのは、このあたしなんだからねっ!」

「……き、期待しとくよ、ルシア」

「あふっ! セクトお兄ちゃんを捕まえるのはミルウだもん! お色気作戦で行っちゃうよお!」

「……お、お色気って……」

 ミルウが脱ぐのか、はたまた俺が脱がされるのか……どっちにしても手強そうだ……。

「いってらっしゃいませ、セクトさーん!」

「……」

 スピカ、聞いてたのか。相変わらず余裕あるなあ。

「――うっ……?」

 突如、胸を掴まれるようなこの圧力……間違いない。またしても『ウェイカーズ』の連中がやってきたんだ。夕陽が十字架の影を一層伸ばし、墓場の存在感をより際立たせている。墓地そのものが期待感を孕み、いざなおうとしているかのようだ。この地に眠る新たな住人を……。

 見てろ……恨みを晴らすときは近い。グレス、ルベック、ラキル、オランド、カチュア……。俺が本物の地獄への道先案内人になってやる。

 バニルたちに背中を向け、気配察知能力でこっそり表情を探ってみるも、彼女らに不安の色は見られなかった。疲れもあるんだろうが、それだけ俺の回避性能がずば抜けていたからだろう。そのことがより自信を強化させる。

 俺は歩いていた。今までの苦難な道のりを脳裏に浮かばせながら、一歩一歩踏みしめるように、思い出を噛みしめるように『ウェイカーズ』の元へと足を運んでいた。そこで決める。全部終わらせる。

 俺が近付いていることがわかったのか、やつらは一様に呆然とした表情を作っていた。そりゃそうか。おそらく、逃げようとする俺をどうやって捕まえるか、そういう作戦を考えていたんだろうから、俺の行動は相当に意外だったはずだ。もう、やつらの顔が気配察知能力だけでなく、目でもはっきりと見えるくらいの距離まできた。

 さあ、始めるとしようか。待ちに待った復讐劇を。

 ……思えば、俺は今まで迷ってばかりで時間を無駄にしてきたのかもしれない。スキルを覚えるのも遅かったし、遠回りな上に荒れ果てた道を進んできたのかもしれない。でも自分自身という、客観的に見ることが難しい存在の密度を高めるためにも必要な時間だったような気がする。痛みや苦しみさえも……何もかもが、決して無駄じゃなかったんだとそう思えるんだ……。

 ――勢揃いしている『ウェイカーズ』の前で、俺は足を止めた。墓地で彼らと巡り合えたことに運命を感じる。俺にはわかるんだ。今立っているこの場所は、こいつらのためだけに用意された墓場なのだと……。
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