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41話
しおりを挟むあれから占いの館を出た僕は、どうするべきか考えたあと、早速例のダンジョン『炎の電話ボックス』へ行くことにして、まずは使用料を払って登録するべく支部へと向かった。
そうしないと、いくらハンターとはいえ目当てのダンジョンの入り口がある場所に行ったり触れたりしても転送されない仕組みだからね。
あそこは呪われてるってことで悪い意味で有名なダンジョンで、そこへ行ったハンターは近いうちにほとんど引退してるとかで、僕だって本当は行きたくなかったんだけど……もう呪われちゃってる以上、そこへ行くしかないんだ。
【神速】スキルによって、シャッター通りと商店街を一気に駆け抜けて第17地区のハンターギルド支部へ着いた僕は、いつもの有料の待合室にリサとミリル(人型)を置いた。ミリルは人が多いところへ行くと、意識するのか人に《変身》してみせることが多い。そしたら全裸になっちゃうので、一応そのためにサツキが編んだ服を着せてやってるんだ。
「それじゃー、ここで少しだけ待っててね、リサ、ミリル」
「うん、坊やっ。頑張って~」
「がんば、だ~」
二人の台詞のおかげでちょっとだけ楽になったものの、僕はどんよりとした気持ちを抱えたまま、該当するダンジョンの受付へと一人で足を運ぶ。
「――あのー……?」
受付はまさかの無人だった。あれ、いないのかな? そういや、やたらとダンジョンが過疎ってる影響なのか、ここには太ったおばさんやサングラスのおじさんら、代理の人も見かけないほどなんだ。
うーん、困った……。誰もいないんだったら、今日はもう諦めようかな? でも、呪いを解除しないと明日からの狩りに支障が出ちゃうしなあ。週末にはユメさんやアオイさんとのデートだってあるわけで、なるべく楽しい気分で迎えたいし早く呪いを解きたい。
そういう事情もあるので、もう少し待ってみようかと思ってひとまず待合室へ戻ろうとしたところ、【開眼】スキルの影響か僕は後ろのほうに気配を感じて振り返った。
「――うっ……!?」
纏わりつくような粘っこい視線っていうのは、こういうことをいうんだって僕はそのとき確信した。なんとも怪しげな雰囲気を纏った、ウサミミのヘアバンドをつけたロングヘアの美少女が、妖艶な笑みを浮かべて受付のカウンターに立っていたんだ。今ここへ来たばかりなのかな……?
「遅れちゃった。しょうがないにゃあ」
「えっ!?」
「にゃっ?」
しばらく気まずい空気が僕たちの間を流れる。一体何がしょうがないんだ、どうしてネコっぽいんだって真剣に考え込んじゃったんだけど、そっか、そういう不思議な人なんだっけか。
確かこの受付嬢は柊ひよりとかいって、以前はネットゲームにのめりこんでたんだとか。というか、ウサミミなのになんで語尾が猫っぽいのかとか、色々と突っ込みどころはあるけど、可愛いからいいのかな。
「えっと……僕、『炎の電話ボックス』ダンジョンに通いたいんだけど」
「このダンジョン、呪われてるって噂だよ? いいのかにゃ」
「う、うん……」
「凄いにゃ。男だにゃ~」
僕がおずおずと返すと、ひよりさんはとても嬉しそうに目を細めた。なんかいちいち怪しい感じだけど可愛いから、それが妙に癖になる感じなんだ。ダンジョンは嫌われてるのに、この受付嬢は一部のハンターに人気があるのもうなずけるね。
彼女は手続きもサクサク終わらせてくれたし、過疎ってるダンジョンを受け持ってるようには到底見えなかった。ネトゲをやってたくらいだし器用なのかもね。
「それじゃー、カケル君、頑張るにゃん」
「あ、うん……」
というか、なんでその語尾なんだろうと思って尋ねようとしたけど、呪われたダンジョンの、それも怪しい受付嬢ってことで怖くて聞くに聞けない。なんか、さらに呪われそうな感じすらしたから。
こうなったら、試しにここでセーブして聞いてみようかな? そういうわけで、早速実行してみる。
「あのー……」
「何かにゃ?」
「ひよりさんって、なんで語尾がネコみたいなのかな? ウサミミなのに」
「うっ……」
「ひ、ひよりさん!?」
ひよりさんが急に胸に手を当てたかと思うと、苦しそうに座り込んでしまった。や、やっぱり聞いちゃダメなことだったのかな。ユメさんがストーカーの被害に遭って記憶をなくしちゃったように、ひよりさんは過去のトラウマが原因でそういう語尾になってしまった、とか……。
「なーんちゃって。にゃ♪」
「えっ……」
「どうしても聞きたい?」
「で、できればっ……」
「私、ネットゲームをやってたときがあって……一人でポツンと座ってたら……いきなり、変なメッセージが流れてきて……」
「へ、変なメッセージ?」
「そう。周りに誰もいないのに……『そこのお姉さん、可愛いね。いやらしいこと考えちゃった』って」
「こわっ」
「そう。私、怖くて怖くて、泣きそうになって……相手につい、こう返したの。『溜まってるのかな? しょうがないにゃあ』って……」
「……な、なんか、それだと相手の欲望に火をつけちゃってる気が……」
「そ、そうなのかな?」
「た、多分」
「ウサミミは私のアバターが趣味でつけてて、柔らかく返そうとした語尾が気に入って、それからリアルでもこんな感じになったの。なんだか、変な話しちゃったにゃ♪」
「あはは」
というか、ひよりさんの話を聞いても、どうしてそうなったのか、わかったようなわからなかったような、なんとも微妙な感覚だ。そういうところがまた彼女っぽいんだけど。
「でも……こんな話をしちゃった以上……もう、カケル君を絶対に逃さない……」
「え……?」
なんか今、ひよりさんの目が光るとともに怖い台詞が聞こえてきた気がして、僕は思わずロードするのだった……。
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