回復力が低いからと追放された回復術師、規格外の回復能力を持っていた。

名無し

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第一話 これが誕生日の贈り物?

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「おい、ピッケル。お前は追放だ」

「え……」

 僕の20歳の誕生日、パーティーリーダーの剣士ディランに呼び出されたと思ったら、追放を言い渡されてしまった。

「な、なんで僕を追放? 折角ここまで来て、これからっていうときに……」

 誕生日プレゼントを渡されるのかとばかり思っていた僕は、ショックのあまり過呼吸になっていた。

 神の塔ともいわれる最高峰のダンジョン『エドガータワー』において、僕たちのパーティー【超越者たちトラベラーズ】は最前線を行っていたんだ。

 そして、人類最高到達地点の10階へ行こうってときに……。

「どうしてなのかって顔してるな。ピッケル、まだわからないのか?」

「よくわからないよ。なんの問題もなかったのに」

 本当に順調そのものだったんだ。僕は回復術師として、最低限であったとしても彼らをサポートできてるつもりでいたのに。

「不満そうだな。回復力が平凡な無能の癖してよ。お前は船から降りろ!」

「う……」

 確かに平凡かもしれない。回復術師としてサポートしてるつもりでも、パーティーの中では目立てずにいたから。

「あ、そうだ。リシャ、ネルム、クラフトも僕の追放に賛成なの?」

 僕が名前を出した三人――リシャ、ネルム、クラフトは、ディランと違って僕の古い友人だ。もしかしたら僕を庇ってくれるかもしれない。

「……だってよ。入れ」

「あ……」

 ディランが手を叩くと、魔術師リシャ、盗賊ネルム、戦士クラフトの三人が部屋に入ってくるなり、僕を睨みつけてきた。

「ピッケル、あんたね。最低最悪の無能回復術師の癖に、少しは自覚がないわけ? 呆れちゃった」

「まったくなの……。ピッケル……あなたの回復力のなさには、誰もが失望してるの……」

「まったくです。ピッケルさん、我々は君とは違って規格外に強いので、掠り傷程度しかつかないのですよ。それを回復した程度で、自分の力でサポートできてると思ってるのなら、それはあまりにも滑稽なことだとは思いませんかね?」

「うう……わ、わかったよ。そんなに言うなら、消えればいいんでしょ。消えれば……」

「いや、ピッケル。待て」

「え……」

 部屋を出ようとして扉に手をかけると、リーダーのディランが声をかけてきた。まさか、僕が可哀想だと感じて、追放を取りやめるつもりなんだろうか?

「お前の装備、全部渡せ」

「へ……?」

「へ、じゃねえ! お前はここで俺たちに寄生して生活できたようなもんだから、身に着けてるものは全部金に換えて俺らの足しにする必要があんだよ!」

「くっ……わ、わかったよ……」

 僕は怒りを押し殺して、杖やローブ、アクセサリーをディランに渡した。

 それを、ディランだけじゃなくてリシャ、ネルム、クラフトもニヤニヤしながら見てるもんだから腹が立つけど、しょうがない。

「それじゃ、失礼するよ」

「いや、まだだ」

「え……?」

「え、じゃねえよ! アホピッケル! お前が着てる服も全部脱げ! 今すぐだ!」

「そ、そんな……」

「お前が着てたばっちい服でも、洗って売ればはした金くらいにはなるだろ。それとも、無理矢理脱がされたいのか⁉」

「……わ、わかったよ……」

 僕は服を全部脱いで、パンツ一丁になった。みんなが腹を抱えて笑ってるのが、本当に涙が出るほど悔しかった。

 でも、いいんだ。

 元仲間たちの笑い声が上がる中、僕は部屋を出るとすぐに着ていた服をした。このままだと変質者扱いされて兵士に連行されちゃうかもしれないしね。

 といっても、新たに生み出せるわけじゃない。部分的に時間を回復することで、元の状態に戻すだけなんだ。

 もちろん、ただの服とはいえ戻すのにかなり気力を消耗するので、追放されたストレスもあってヘトヘトだ。

 なので、この回復魔法を使えるのは一日に数回程度。

 それでも、今までは限界突破っていうか、倒れそうになるまで使いまくってパーティーに貢献してきたつもりなんだけど、彼らに認められなかったのなら仕方ない。

 僕はそう割り切って、パーティー宿舎をあとにするのだった。
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