5 / 47
第五話 新人の回復術師(相手side)
しおりを挟む「おいお前ら、あの話はもう聞いたか?」
「「「何々……?」」」
そこはパーティー【超越者たち】の宿舎、一階のリビングルームにて。
リーダーの剣士ディランが、ニタッと嫌らしい笑みを浮かべ、ソファに座る三人の仲間――魔術師リシャ、盗賊ネルム、戦士クラフトを見やる。
「俺の睨んだ通りだったぜ……。あの日、クビにしてやったピッケルの野郎が冒険者ギルドにひょっこり現れたそうだ。俺のダチがそう言ってた」
「「「マジで……⁉」」」
「あぁ。そんで仲間を探し回ったまではよかったが、一切お呼びがかからずに逃げ帰ったらしい。やつが無能の回復術師っていう噂はばっちり流してるし、声がかかるはずもないのに」
「キャハハッ! 受ける―。その光景、間近で見たかったあ。独りぼっちの可哀想なピッケル、来世で頑張れって応援したくなっちゃう」
「ほんと……笑えるの……。ピッケルなんかに仲間なんてできるわけないのに……バカみたいなの……」
「フッ……。まさに、断末魔の悲鳴ともいうべきですか。なんとも哀れな結末ですねえ」
「「「「ワハハッ!」」」」
パーティーの四人はひとしきり笑い合っていたが、それから時間が経過するたびに段々と苛立った面持ちになり、新しいメンバーについての相談を始めた。
「例の新人、おせーな……」
「「「確かに……」」」
実は本日の正午、ディランたちは新たな回復術師を迎え入れる予定であった。そのため、パーティーの宿舎内で待ち合わせをしていたのだが、約束の時間になっても新しい仲間は中々やってこなかったのだ。
「畜生……。新人の分際でいつまで待たせるつもりなんだよ――」
「どうも、遅れたっす。回復術師の者っす」
「「「「あっ……!」」」」
眠そうな男の声とともに玄関のドアがノックされ、ディランたちは新たな回復術師を迎え入れた。
「どうもっす。おいら、そちらのパーティーのお世話になることになった回復術師のカインっす」
「お、おう。待ってたぜ、カイン!」
ディランたちはカインを家に上げ、自己紹介を始めた。
「俺が剣士のディランだ。最高峰のダンジョン、エドガータワーの攻略に最も近いと目される、【超越者たち】パーティーのリーダーだ。よろしく」
「あたしは魔術師のリシャ。炎の魔法が得意よ。よろしくね、カイン!」
「私は……盗賊のネルム……。敵の探知、罠の解除はお手の物……。よろしくなの、カイン……」
「自分は戦士のクラフトです。耐えることには自信がありますよ。よろしく、カイン」
「うっす。よろしくっす。ディラン、リシャ、ネルム、クラフト。あっ……!」
「「「「っ……⁉」」」」
寝惚け眼のカインがうっかり手を滑らせ、コーヒーカップを落として割ってしまう。
「おっとっと、手が滑っちまった。わりーっすねえ。おいら、夜遊びしすぎてあんまり寝てなくってさあ。ふわぁ……」
「おいおい……カイン。回復術師なら眠気なんてすぐ回復できるだろ? あと、割れたコーヒーカップもさっさと元に戻してくれ。なんせ、あのヘボの回復術師ピッケルでもできることだからな」
「「「うんうん」」」
「へ……? 回復術じゃ普通の眠気なんて治せないし、割れたものを直すなんて、おいら回復術師の界隈じゃ聞いたこともねえっすけど……」
「「「「えっ……?」」」」
カインの返答に対し、ディランたちは呆然とした顔を見合わせる。
「そ、そいつは、200ギルスもした超高級品のコーヒーカップなのに……で、でも、別に回復能力が高いなら問題ねえし?」
「そ、そうよ! 回復術師なんて普通の回復術ができなきゃ本末転倒だし。ピッケルにはそういう、変な器用さがあっただけでしょ」
「わ……私も同感……。どう考えても……回復能力が高いほうが有能なの……」
「い、いやはや、まったくです。カップよりも命のほうが大事ではありませんか……!」
「……」
己に言い聞かせるように言うディランたちの様子を見て、新人の回復術師カインは目を白黒させる。
(……やべえ。こいつらが何を言ってるのか、さっぱりわかんねえ……。おいらって、もしかしてとんでもないパーティーに来ちまったすかねえ?)
1,220
あなたにおすすめの小説
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
過労死コンサル、貧乏貴族に転生す~現代農業知識と魔法で荒地を開拓していたら、いつの間にか世界を救う食糧大国になっていました~
黒崎隼人
ファンタジー
農業コンサルタントとして過労死した杉本健一は、異世界の貧乏貴族ローレンツ家の当主として目覚めた。
待っていたのは、荒れた土地、飢える領民、そして莫大な借金!
チートスキルも戦闘能力もない彼に残された武器は、前世で培った「農業知識」だけだった。
「貴族が土を耕すだと?」と笑われても構わない!
輪作、堆肥、品種改良! 現代知識と異世界の魔法を組み合わせた独自農法で、俺は自らクワを握る「耕作貴族」となる!
元Sランク冒険者のクールなメイドや、義理堅い元騎士を仲間に迎え、荒れ果てた領地を最強の農業大国へと変えていく、異色の領地経営ファンタジー!
転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜
みおな
ファンタジー
私の名前は、瀬尾あかり。
37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。
そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。
今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。
それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。
そして、目覚めた時ー
【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?
嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】
ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。
見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。
大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!
神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。
「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」
荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。
しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。
しかし――
彼が切り捨てた仲間こそが、
実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。
事実に気づいた時にはもう遅い。
道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。
“荷物持ちがいなくなった瞬間”から、
アレクスの日常は静かに崩壊していく。
短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。
そんな彼と再び肩を並べることになったのは――
美しいのに中二が暴走する魔法使い
ノー天気で鈍感な僧侶
そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー
かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。
自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。
これは、
“間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる”
再生の物語である。
《小説家になろうにも投稿しています》
【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。
大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。
そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。
しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。
戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。
「面白いじゃん?」
アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・
ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はファム
前世は日本人、とても幸せな最期を迎えてこの世界に転生した
記憶を持っていた私はいいように使われて5歳を迎えた
村の代表だった私を拾ったおじさんはダンジョンが枯渇していることに気が付く
ダンジョンには栄養、マナが必要。人もそのマナを持っていた
そう、おじさんは私を栄養としてダンジョンに捨てた
私は捨てられたので村をすてる
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる