回復力が低いからと追放された回復術師、規格外の回復能力を持っていた。

名無し

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第二十七話 証拠を見せろって?

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 地下水路ダンジョンを跡にした僕らは、その足で冒険者ギルドへと向かっていた。

 ボスのキングアリゲーターからドロップした謎の靴を、遺失物として届けにいこうと思ったんだ。

 ボスにやられてしまった初心者パーティーの遺品の可能性が高いとはいえ、そういうのは遺失物として職員が大切に保管しているので、いずれは残された遺族の目に留まって届けられるかもしれない。

「……」

 冒険者ギルドへ到着したときだった。ギルド内が不穏な空気に包まれてるのがわかった。

 僕が追放されたときに感じたような、とても嫌な空気だ。また僕について悪い噂でも流してるんだろうか?

 案の定、色んなところからヒソヒソ話が聞こえてきてヒヤッとしたけど、こっちには視線が集まってこない。

 ってことは、僕たちが噂の対象じゃないみたいだ。

 それでも良い気はしないけど、情報収集の意味でもどんな話なのか耳を傾けていると、驚くべきことがわかった。

【超越者たち】パーティーについての話題で持ち切りだったんだ。

 その内容っていうのが、ディランたちが、地下水路ダンジョンのボス、キングアリゲーターを前に敗北したという驚くべきものだ。

 確かに、キングアリゲーターは駆け出しのパーティーで倒すのは難しい。

 それでも、中級パーティー以上でセオリー通り戦えば難なく勝てるとされているボスだ。

「なあ、聞いたか? あの【超越者たち】が無様に負けたんだって」

「ウッソー⁉」

「マジかよ、ありえねえ。初心者ならわかるが、エドガータワーの最前線を行ってるパーティーなんだろ?」

「うわっ、本当ならダサすぎ」

「てかあいつら、この前も回復術に関して無知を曝してたよね……」

「「「「「……」」」」」

 これにはベホムたちもびっくりしている様子。

 そりゃ、最近は色々あって評判が悪いみたいだけど、エドガータワーを攻略する上では今でも最高のパーティーだって思われてるわけだし。

【超越者たち】パーティーの実力がこの上なく疑われる状況において、その高まりが最高潮に達したように見えたときだった。

「おめーら、バカか! んなわけねえだろ!」

 一人の青年が大声を上げたんだ。

「こんなの、悪い噂だ! 誰かの陰謀だ! 大方、追放されたピッケルってのが逆恨みで妙な噂を流してるんだろ!」

「……」

 あの男は……知っている顔だ。そうだ。確かディランの友人、クレイスだ。そういえばギルドのスタッフの一人だったか。

 そうそう、ディランの悪友で、頼みごとをされる際に金を握らされているのを何度か見たことがある。

「あの輩、ピッケル様が逆恨みで悪い噂を流したですって……⁉ アシッドボトルを投げますわよ――」

「マ、マリベル、頼むから落ち着いて。そんなことしたら兵士に連れていかれちゃうよ」

「む、むぐぐ……」

 錬金術師のマリベルが暴走しかけたのをなんとか制止できてよかった。

 その場では、マリベルの代わりのように、クレイスの言葉に納得がいかない様子の人たちが不満の声を上げ始めていた。

「でもさ、目撃者だっているのよ?」

「うん、あたしも実際に見た!」

「私も見た。なんか怪我人がいたみたいで、逃げ帰ってたわよね!」

 次から次へと上がる迫真の声。今のところ、彼らが嘘をついてるようには見えない。

 それでもクレイスは顔を赤らめ、身振り手振りを交えながら躍起になって否定していた。

「どいつもこいつも、アホかおめーら、誰でもわかるような嘘をつくな! それとも、何か証拠でもあるっていうのか⁉」

「証拠っていうか、その怪我人はボスモンスターに足を食われてたみたいだぞ?」

「おい、そこのおめー。なら、証拠はあるのか? 逃げるなよ!」

「あ……」

 クレイスが盛んに口にする証拠という言葉を聞いて、僕はあの靴のことを思い出して竜のポーチから取り出した。

 これに関する記憶が薄れている場合、時間を戻す回復術を使うことで、当時の記憶を部分的にだけど鮮明に蘇らせることができるんだ。

 ただ、ダンジョン帰りなわけで、回復術を使うならもうちょっと休憩したいところ……って、そうだ。あの手があったか。

「マリベル、気力を回復する薬をお願いできるかな?」

「あ、はい、ピッケル様、もちろんご用意しますわ!」

 マリベルの特製ポーションを飲むと、見る見る気力が溢れてきた。よーし、これなら今すぐ使えるはず。

 早速、靴に回復術を使用してみると、これを履いている人物が脳裏にはっきりと浮かび上がってきた。

「――そうだ。これは間違いなく、リシャが履いていたものだ……」

「「「「「えぇっ……⁉」」」」」

 僕の言葉でベホムたちが驚愕の声を上げる。当然、それはクレイスの耳にも入り、僕たちを指差してきた。

「お、そこにいるのは、噂をすりゃ回復術師のピッケルじゃねーか。やっぱりおめーの仕業だったか。自分が無能すぎたから追放されたってだけなのに、その逆恨みで【超越者たち】の悪い噂を流してたんだな。最低すぎるぞ⁉」

「僕がその噂を流したっていう証拠もないよね? とりあえず、この靴を見てほしい」

「へ……? なんだよ、その靴は。まさかおめーが履いてんのか? 趣味わりーな」

「いや。これこそ、君が欲しがってた証拠品だよ」

「は……?」

「この靴は、僕がかつて所属していた【超越者たち】パーティーの一人、魔術師のリシャが履いていたものだ。これが、地下水路ダンジョンでボスを倒したときにドロップしたんだよ」

「な、なんだって……⁉」

 クレイスの顔が見る見る驚きの色に包まれる。さあ、これから彼はどう弁明するつもりなのかな?
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