15 / 91
第15回 忍耐力
しおりを挟む「――ブオオォォッ!」
「はっ……!?」
俺の左足に焼け付くような痛みが一瞬走ったかと思うと、膝から下の部分が完全に溶けてなくなってしまっていた……。
「ぐ……ぐあああああっ!」
左足がなくなったという衝撃的な事実に加え、猛烈な吐き気や苦痛が思い出したように襲い掛かってきて、俺は今まさに絶望の中で意識を手放そうとしていた。
「「「「佐嶋あぁっ――!」」」」
「――っ!?」
だが、仲間たちの俺を呼ぶ声がかろうじて聞こえてくるとともに、羽田の満面の笑みが脳裏をよぎったことで、それをきっかけにして我に返ることができた。
……そうだ、ダメだ、ここで自分が気を失ったら、それこそ終わりだからだ。間違いなくパーティーは全滅してしまう。それだけは絶対に避けなければならない。
踏ん張るんだ。片足がなくなったことは確かに痛いが、だからといって何もかも諦めてしまうわけにはいかない……。
「う……うおおおおおおぉぉっ!」
俺は渾身の力を込めて叫ぶことで強引に意識を呼び戻すと、バットで地面を強打して踏みとどまった。
「うぐぐっ……」
耐えがたい激痛や吐き気に加え、目眩までしてきた俺はバランスを崩して倒れかけたものの、なんとかギリギリのところで持ちこたえることができた。
「はぁ、はぁあ……」
俺はみんなのほうに強い表情で語り掛けることで、無事であることをアピールしようとしたが、声を出そうとしても出すことができずにいた。
まずいな。このままじゃ周りのモチベーションを大いに下げてしまう。なんとしても声を出すんだ……。
「……ま、まだ……まだだ……。こ、この程度、大丈夫だから、まだ慌てる必要はない……」
よし……なんとか喋ることができた。これでもう大丈夫だ。これしきのことで、俺は倒れはしない。
「も……もういいっ、佐嶋っ! あんたはもう充分に頑張ったじゃないか! あたしが交代するからそのバットを貸してくれっ!」
「そ、そうだ、あとのことはわしらに任せて、お前さんはもう休めっ!」
「佐嶋さん、どうか、休んでください……」
「お前、そんなんで戦えるかよ、バカッ……!」
悲痛な声を上げる黒坂らに対し、俺は笑みを投げかけてみせた。
「……し、心配、するな……。か、片足を失っただけだ。まだ、戦える……」
仲間たちの気持ちはありがたいが、【クエスト簡略化】スキルがなければ一般人がボスに勝つことは極めて難しいだろう。
「……な、なんでなんだよ、なんでそこまで頑張れるんだ……? 佐嶋、あんたはスレイヤーでもなんでもないっていうのに……」
「……お、俺は……スレイヤーに憧れてたから……。こういう大怪我を負うくらい、激しい戦いをやることを、想定していた……。だから、これくらい、なんともない……」
「佐嶋……あんたは一般人なんかじゃねえよ。もうあんたがダンジョンスレイヤーでいいよ……」
「う、うむ、佐嶋よ、お前こそ真のスレイヤーだ、わしも認めてやるっ!」
「うぐっ……さ、佐嶋さん……本当に申し訳ないです、自分のせいで……」
「チッ……! 今はボスと戦ってる最中だぞ。こんなときに、ダラダラお喋りしてる場合じゃないだろ……!」
「「「……」」」
黒坂たちの棘のある目が野球帽に向けられるが、確かにやつの言ってることは正しい。
「や……野球帽の言う通りだ、みんな……。ボスは既に地面に隠れた。やつの次の攻撃に備えるぞ……」
◆◆◆
「ぐ……ぐあああああっ!」
「「「「佐嶋あぁっ!」」」」
「……フン」
羽田京志郎の右の口角が微かに吊り上がる。
彼の目の前では、佐嶋が仲間の山室を助ける際、デッドリーゼリーの攻撃によって左足を失うという悲惨な光景が繰り広げられていた。
(佐嶋康介、か……中々面白い男だったが、こうなった以上さすがにもう終わりだなぁ。残りはカス揃いだし、これで賭けは私の勝ち――)
「――う……うおおおおおおぉぉっ!」
「な……なんだと……?」
だが、その直後に佐嶋が起き上がったため、羽田は驚愕した様子で目を見開いてみせた。
(あの男……ボスの攻撃をことごとく予測できるだけではない。卓越した忍耐力をも兼ね備えている……)
「はぁ、はぁあ……ま、まだ……まだだ……。こ、この程度、大丈夫だから、まだ慌てる必要はない……」
「…………」
佐嶋を見つめる羽田の眼光がますます鋭さを増していく。
(神種はエリート種の中からのみ、誕生するはずだが……妙な胸騒ぎがする。あの男、やはり生かしておけば今後厄介な存在になりうるかもしれん……。ただ、私はやつと賭けをしている状況だからなぁ、困ったものだ……)
24
あなたにおすすめの小説
シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~
尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。
だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。
全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。
勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。
そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。
エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。
これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。
…その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。
妹とは血の繋がりであろうか?
妹とは魂の繋がりである。
兄とは何か?
妹を護る存在である。
かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!
無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~
さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。
全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。
ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。
これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる