ダンジョン菌にまみれた、様々なクエストが提示されるこの現実世界で、【クエスト簡略化】スキルを手にした俺は最強のスレイヤーを目指す

名無し

文字の大きさ
22 / 91

第22回 証拠

しおりを挟む

 翌日の早朝、まだ真っ暗なうちから、俺は自主退院するべく荷物を纏めて病室を出た。

 夜中に誰かが近付いてくる気配とか、監視するような空気があってろくに眠れなかったが、レベルアップクエストをこなしたことで、眠気もすっかり覚ますことができた。

 腹筋、腕立て伏せをともに2回ずつ、それに2メートルランニングするだけでレベル2から3まで上がったから楽なもんだ。しかも一週間以内にやればいいんだからな。これでステータスポイントは20も溜まったことになる。

「――じ、自主退院されるのですか?」

「はい。もう体はなんともないんで……」

「は、はあ……」

 俺の言葉に対し、受付嬢は露骨に困惑したような顔を見せてきた。普通は医師の許可を貰ってから退院することになっているわけだが、金さえ払えば強制力はないから問題あるまい。

「おい、そこの君、ちょっと待ちたまえ!」

「…………」

 病院一階のエントランス付近で、俺は眼鏡を掛けた医者から直接呼び止められてしまった。おいおい、俺の体を調べる気満々だな……。

「なんでしょう?」

「なんでしょう、じゃないだろう! 退院する前に医師に相談するのが常識だろうに! まずはだね、その左足について聞きたい。確かに欠損していたはずだが……」

 医者が俺の左足に触れるほど顔を近付けてきた。かなり高圧的だな、この男。俺を退院させまいとして酷く興奮している感じだ。

「これは最新式の義足なんですよ」

「は、義足だと? バカを言うなっ! こんなに自然な義足が存在するものか!」

「いや、俺が義足だといったら義足なんで」

「だから、義足であることをどうやって証明するつもりなのかね……!? 君はほぼ間違いなく錯乱状態であり、頭の精密検査もする必要があるから、まだ退院させることはできない!」

「…………」

 しつこいな、この医者。段々腹が立ってきた。とっととその足を調べさせろとでも言わんばかりだ。

「んじゃ、俺の左足の脛を思いっ切り蹴ってみてくださいよ」

「……な、なんだと……?」

「義足じゃないと思うなら、蹴ってくださいよ。もし俺が少しでも痛がったら、あなたが言うように義足じゃないことが証明できるはずですよ」

「わ、わかった。君がそんなに言うなら……」

「…………」

 おいおい、普通に承諾しやがった。必死にもほどがあるぞ、この医者。

「かなり痛むと思うが、私を愚弄したことの罰だと思って我慢したまえ!」

「どうぞ」

 俺は医者に脛を蹴られたわけだが、まったく痛みがなかった。というのも、体力にステータスポイントを一つ振ったからだ。これは頑丈さも上がると言われているからだが、一つ増えるだけでこうも違うんだな。さすが、スレイヤー専用のステータスだ……。

「な、ななっ……? おかしいぞ、こ、こんなはずでは……! このっ、このおぉっ!」

 医者が躍起になった様子で、曇った眼鏡をずらしながら何度も蹴ってくるが、結果は同じだった。

「それじゃ、義足であることが証明できたみたいなんで、この辺で失礼します。あ、これはほんのお礼です」

「ぎっ!?」

 俺はお返しに医者の脛を軽く蹴ったあと、口笛を吹きながら意気揚々と病院を出た。

 その足で向かったのは、例の工事現場だ。

「「「「「あっ……!」」」」」

 現場へ到着すると、玄さんを筆頭におっちゃんたちが驚いた様子で俺に駆け寄ってきた。まさにハーレム状態だ。

「おいおい、あんちゃん、それ義足か!? 確かダンジョンに巻き込まれて、足を失ったって聞いてたけど、違ったのか!」

「義足ですよ。玄さん、それにみなさん、心配かけましたが、本日こうして無事に退院できました」

「そうだったのか……そりゃめでてえ! しっかし、俄かには信じらんねえな。意識がなくて、面会もできねえ状態って聞いてたのによ。ま、まさか幽霊じゃねえだろうな」

「この通り、ピンピンしてますよ。そもそも、足があるのが幽霊じゃないっていう証拠なんで」

「「「「「どっ……!」」」」」

 おっちゃんたちの野太い笑い声が響いて、俺はなんとも懐かしい空気を味わった。こういう過酷な現場にいるとどんなことでも笑いに変える力が必要で、みんなしょうもないギャグでもいちいち笑ってくれるんだ。

「さすがレベル1の男だ、あんちゃんは最高だな!」

「「「「「玄さんの言う通りだ!」」」」」

 実際はレベル3なんだが、それを言うと妙な空気になりそうな上、話も長くなるので言わないことに。

 というか、なるべく目立たないほうがいいからな。虐殺者の羽田京志郎からもマークされてたわけで、1年間も眠っていたとはいえ、退院したこともいずれはやつの耳に入る可能性がある。

 なので、しばらくは工事現場で地味に働きつつレベル上げに勤しんだほうがいいだろう。

「玄さん、みなさん、そういうわけなんで、また明日からよろしく!」

「おうおう、あんちゃんが来るんならもちろんいつでも大歓迎だぜ、なあ、みんな!?」

「「「「「応っ!」」」」」

 玄さんやおっちゃんたちの元気すぎるダミ声が周囲に響き渡った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

処理中です...