63 / 91
第63回 教育
しおりを挟む「「「「「おい、そこ――あ、どうぞお入りくださいっ!」」」」」
規制線が張られた病院ダンジョン前にて、警官らが厳めしい表情で整列していたが、とある集団を前にして敬礼するとともにその場を離れた。
それは、なんとも気怠そうな表情を浮かべた中年の男を筆頭とする、十名ほどの小規模な集団だった。
彼らが警官たちに見せていたのはスレイヤーの名刺で、先頭にいる中年の男がヘラヘラと笑いながら後ろの集団に向かって振り返った。
「えー、俺はな、蔵見ってやつが病欠ってことで、急遽お前たち突入班の指揮を任された班長なわけだが、最近入ったばかりの新人でもあるからここで自己紹介させてもらうぞ。俺の名前は館野良治っていうんだ。よろしく」
「「「「「……」」」」」
それに対し、スレイヤーの集団は無視するどころか、一部から失笑さえも上がる始末だったが、館野という男は特に気にする素振りもなく、苦笑いを浮かべるだけであった。
「おいおい……あのおっさん、新人のくせに班長だってよ。知ってたか?」
「……知らない。てか、なんであんな頼りなさそうなやつがいきなり班長なんだ?」
「さあ、よくわからないけど、実力があるんじゃない?」
「いやいや、どうせコネでしょ」
「しょーもな。館野ってやつは大ハズレだな」
「あーあ。いつも通り、蔵見さんが班長ならよかったのになぁ」
それはもう総スカンといってもいいもので、誰もが不信感を隠すこともなく、堂々と聞こえるように悪口を言い合っていた。
「おーい、聞こえてるぞー? それじゃ、お前たち、そろそろダンジョンへ入るとしようか?」
「「「「「……」」」」」
いかにも小ばかにした様子で、館野のすぐ脇を通って素早く病院へと入っていく班員たち。
「……はあ」
一人置き去りにされる格好となった館野は溜め息を吐いたのち、頭を掻きながら班員たちのあとを追った。
「おーい、待ってくれぇー、お前たちいぃっ――おっとっとぉ!」
「「「「「アハハッ!」」」」」
待ち伏せしていた班員の一人に足をかけられ、派手に横転する館野。これでもかと失笑を浴びるものの、それでも気にする様子もなく、やはりヘラヘラと笑いながら立ち上がる。
「イタタッ……ひっでえことしやがるなぁ。ここはダンジョン内だから、こっちも遠慮なくいかせてもらうぞ。これからは俺のことをボスと呼べ、お前たち――」
「――あぁ? おい、ふざけんじゃねえよ。何がボスだ。てめえなんかが俺らに指図するなってんだ。ぶっ殺すぞ、おっさん」
班員の一人である強面のスレイヤーが、館野に顔を近づけて威圧したときだった。
「ゔ ぉっ……!?」
その顔が至極間抜けなものに変わったのも当然で、館野が強面の男の口元を片手で掴んだからだ。さらにそのまま反対側の壁に変顔を叩きつけると、それまでヘラヘラしていた中年の男は一転して鬼の形相となった。
「いいか……俺の良治っていう名前はな、良く治めるって書くんだ。それがかなわないやつは必ずこの手で息の根を止めてやるから、よく覚えておけ……」
「……あっ、あがっ……」
それに対して何度もうなずく強面の男。その顔が見る見る青ざめるとともに、下半身はじゅっくりと濡れていた。
館野はヘラヘラとした顔に戻ると、呆然とする班員たちのほうを見やった。
「えー、見苦しいところを見せてしまって申し訳ない。クエストだけではわからないこの病院ダンジョンの注意事項をこれからお前たちに話そうと思う。それはな、杜崎教授についてだ……って、聞いているか?」
「「「「「は、はいっ……」」」」」
すっかりしおらしくなった班員たちを前に、苦笑いを浮かべつつ頭を掻く館野。
「あれでも怒ったつもりなんてまったくなかったが、ちょっと怖がらせちゃったな。えー、話の続きだが、杜崎教授はスレイヤー協会のスカウトをやっておられる方だが、教育係も兼ねている。これは自身が敵として立ち塞がることで、スレイヤーたちの心身を限界まで鍛えるためだという」
「「「「「……」」」」」
「なので、もし彼に遭遇した場合、絶対者クエストというものが表示されると思う。これは、レベル1以上の者が、レベル差が大きく離れている相手に100%の殺意を持たれた場合のみ、一度だけ発生する特殊なクエストだ。万が一これが発生した場合、ひたすら逃げることでしか身を守る術はないと思え。もし捕まったら生きたまま食われるから自害しろ。俺からの話は以上だ」
「「「「「了解っ、ボスッ……!」」」」」
12
あなたにおすすめの小説
シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~
尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。
だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。
全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。
勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。
そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。
エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。
これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。
…その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。
妹とは血の繋がりであろうか?
妹とは魂の繋がりである。
兄とは何か?
妹を護る存在である。
かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!
無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~
さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。
全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。
ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。
これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる