ダンジョン菌にまみれた、様々なクエストが提示されるこの現実世界で、【クエスト簡略化】スキルを手にした俺は最強のスレイヤーを目指す

名無し

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第73回 露骨

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 超レアスキルの【クエスト簡略化】に加え、負の効果を敵全体に及ぼせるという、新たなレアスキル【伝染】を手にした俺は、野球帽の藤賀とともに病院ダンジョンのボスを探し始めた。

 すると、途端にどでかい矢印が視界に表示されたので非常にやりやすい。この通りに進めばいいだけだからな。

 ってなわけで指示通りにしばらく進んでいくと、景色は変わらずともどんどん空気が重くなっていくのを肌で感じるから、それだけボスがいる場所へと着実に近付いている証拠でもあるんだろう。

 この大きな矢印はたまに方向を変えていて、そのたびにほんの少しだが足に電撃が走るような感覚があったので、おそらくそれが【クエスト簡略化】スキルがない場合攻略のヒントになるんじゃないか。

 となると、この広さから考えるとかなり偶然や勘に頼る格好になってしまうわけだが、病院ダンジョンの難易度自体はFでも、ダブルで変異してるからEよりも高いってことでそこはしょうがない。

「――野球帽、次はこっちだ」

「…………」

「野球帽……?」

 なんだ? 急に野球帽の反応がなくなったと思ったら、いつの間にかあいつは後方で立ち止まっていて、それで置き去りにする格好になっていた。

 俺たちの走るスピードは尋常じゃないから、ちょっと立ち止まっただけでも既にかなり遠くに感じるくらい距離が離れていて、豆粒並みの小ささになっている。

「おい、どうしたんだよ、藤賀。俺に名前で呼ばれないのがそんなに不満だったか?」

 一旦戻ってからの俺の第一声に対し、野球帽から露骨に嫌そうな顔をされた。なんだよ、折角名前で呼んでやったのに。

「バカ、そんなんじゃない。があっただけだ」

「気になったことって……?」

「うん。工事帽の進み方が、まるで最初からボスがどこにいるかわかってるみたいな感じだったから、そういうスキルでもあるんじゃないかって」

「…………」

「図星って顔だな、工事帽」

「い……いや、そうじゃない。俺が勘の鋭い男だってのは野球帽、あんたもよく知ってることだろ」

「……そっか。仲間って言えるほど親しいとは思ってないけど、顔見知りに対してもどうしても言えないことなんだな」

「……まあ、自分の秘密を教えたいやつなんて、そうはいないだろ……」

「工事帽、その秘密って、ただの高校生だった俺がスレイヤーになれたことと関係がある?」

「…………」

 関係ありまくりだから反応に困る。

「その秘密が関係してるかどうかは知らないけど、エリート種でもない一般人がなんで急にスレイヤーになれたんだって黒坂と羽田に拷問されたよ」

「黒坂と羽田だって? もしかして、音楽室でか……?」

「うん。俺はそんなの知るわけないから、いくらやられても何も言わなかったけど、多分パーティーの中の誰かがそういうスキルを持ってるからじゃないかとは薄々思ってた」

「そ、そうか……」

「結局腕まで折られて放置されて……治してくれたのが鬼木ってやつだったけど、回復量が多すぎたのか記憶を失くしてたってわけ」

「……なるほど、そんなことがあったのか……。悪かったな、野球帽」

「べっ、別に謝れって言ってるわけじゃない。そんな秘密、俺は興味なんてないし知らなくてもいい。ただ、ちょっぴり気になっただけだ」

「……変わったな」

「べ、別になんも変わってなんかない。なんていうか……俺は、自分に正直に生きているだけだ。……」

 その台詞を紡ぎ出したとき、野球帽はほんの少しだけ視線を下降させたように見えた。それに加えて、後付けした基本的にはという言葉が妙に引っかかるな。

「どうせ、記憶を失ったときの、素直な私のほうが好きなんだろ? ドスケベが」

「え?」

「あ、いや、なんでもない。それより、工事帽のレベルは幾つなんだ?」

「俺は7だ」

「7って……無茶すぎる……」

「しょ、しょうがないだろ。野球帽は?」

「20レベルだ」

「おいおい、20かよ。やたらと高いな。道理でスピード狂の俺より速いはずだ。それならすぐにでもプロ野球選手になれるんじゃないか?」

「…………」

「ん、どうした? そんないかにも不快そうな顔して……あ、そっか、プロ野球選手はスレイヤー禁止だったか」

「……そ、そうだな」

 野球帽のやつ、折角こっちから得意であろう野球の話を振っているっていうのに、どうしてなのか歯切れが悪い。ここがダンジョン内だからか? 遠くにはちらほら蛆の姿を見かけるが周りにはモンスターなんていないし、少し話をする余裕くらいはまだあるはずなんだけどな。

「なあ、野球帽。この際だし、少しでいいからついでに教えてくれよ。なんで野球をやるようになったのか」

「…………」

「おいおい、出し惜しみしてるのか――?」

「――だ、ダメなんだからっ!」

「……え?」

「……あ、い、今のは、聞かなかったことにして……くれ……」

「…………」

 女っぽい一面を覗かせてきた野球帽に対して、俺はかなり驚いていた。今、結構自然な感じで言ってたよな。かといって今まで無理をしてた感じでもないし、本当にわけがわからないやつだ……。
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