ダンジョン菌にまみれた、様々なクエストが提示されるこの現実世界で、【クエスト簡略化】スキルを手にした俺は最強のスレイヤーを目指す

名無し

文字の大きさ
74 / 91

第74回 方向性

しおりを挟む

「…………」

 少しばかり宙に浮きながら前進するスーツ姿の男は、進路を北から東のほうへ変えてみせた。

「――はぁ、はぁ……は、羽田、な、なんで急に、こっちに変えたんだよ……?」

 ようやく追いついた茶髪の少女が、懸命に走りながらなんとも息苦しそうに訊ねる。

「……勘だ。昔からよく当たるのでなあ」

「か、勘なのかよ。まるでみたいだな」

「待て、黒坂。あいつだとぉ?」

 羽田がそれ以上進むのをやめた直後、抜き去った格好になった黒坂がはっとした顔で立ち止まり、いかにも気まずそうに振り返る。

「あ……いや、なんでもねえ――」

「――あいつというのは、ネクロフィリアの佐嶋康介のことだろう?」

「ど、どうしたんだよ、羽田。そんな怖い顔しちゃって……」

「私の質問に答えろ」

「た、確かに、あいつってのは佐嶋のことだけどよ……たったそんだけで機嫌が悪くなったっていうのかよ?」

「黒坂ぁ……あの男と私、どちらが魅力的に見えるのか、正直に言え。もし嘘だとわかったら即座に死体に変えてやる……」

 威嚇するかのように羽田の髪とネクタイが逆立ち、黒坂の顔が見る見る青ざめていく。

「え、えっ……? ちょ、ちょっと待ってくれよ。なんでいきなり、そんなしょうもないこと言ってんだよ――」

「――死にたくなければ早く言え」

「……い、言うからっ、言うからさ、ちょっとくらい待てって! しょ、正直言うとさあ、羽田もまあまあ魅力あるけど、あいつも結構いいかなって……怒るなよ?」

「……フンッ、なるほど。あながち嘘でもなさそうだな。それなら、お前の見ている前であいつを死体に変えてやろう。どんな芸術作品にするかは、そのときに考えるが」

「な、なんなんだよそれ。ほんっと、悪趣味だな……」

「今、悪趣味だと言ったか? もし本当にそう思ったなら、それは至高の趣味だということだぁ……」

 羽田はそれまでの様子とは一転して、この上なく嬉しそうに声を弾ませてみせるのであった。



 ◆◆◆



「――待て。お前たち、静かにしろ」

 唇に人差し指を置いた館野が唐突に立ち止まり、神妙な表情で班員たちのほうに振り返る。

「「「「「ボス……?」」」」」



「えっ……ま、まさか……それって絶対者では……?」

「に、逃げなきゃっ……!」

「ぐ、ぐずぐずしてたら食われちまうぜ……」

「い、嫌だっ、あんな死に方だけは――」

「――お前たち、落ち着け。向こうにいるのは絶対者ではない。俺は視力がずば抜けていいからわかるが、あれは……そうだ、確か、スレイヤーの藤賀真優とかいうやつだ」

「「「「「藤賀……?」」」」」

「確か、半年ほど前にスレイヤーになった人物のはずだ。俺も最近ここに入ったばかりとはいえ、協会に所属しているスレイヤーについてはデータを徹底的に収集してあるから間違いない。ただ、側にいるの正体がよくわからない……」

「「「「「もう一人の男?」」」」」

「データにはない人物だが、もしかしたら野良のスレイヤーかもしれないから油断は禁物だ」

「「「「「どうしますか、ボス?」」」」」

「…………」

 緊張した様子で回答を待つ班員たちに対し、館野はしばし考え込んだ表情を見せたあと、重い口を開いた。

「そうだな……やつらに背中を撃たれるリスクを考えれば、このまま放置するわけにもいかん。同じスレイヤーとはいえ、その考え方はピンキリだからだ。所詮は個人事業主だから、突入班として任されている少数派の我々とは立場が違う」

「「「「「なるほど……」」」」」

「最悪の場合は戦闘になるだろうが、我々の仲間になるかどうかの交渉をしてみるのはありだろう。この先、敵になるか、味方になるか。その判断だけでもしておきたいからな……。よって、これよりやつらとの合流を検討する」

「「「「「了解、ボスッ……!」」」」」

 班員たちが敬礼しつつ声を揃わせる中、館野は前方に視線を戻すと一層険しい顔つきになった。

(藤賀とかいうスレイヤーはともかく、あの工事帽を被った男……何か妙だな。強さはあまり感じないのに、底知れないオーラのようなものを漂わせていて不気味だ。これは俺の勘だが、今のうちに始末しておいたほうが無難かもしれん……)
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

処理中です...