A級パーティーを追放された黒魔導士、拾ってくれた低級パーティーを成功へと導く~この男、魔力は極小だが戦闘勘が異次元の鋭さだった~

名無し

文字の大きさ
3 / 37

3話 初対面

しおりを挟む

 翌日、俺は安ホテルをあとにすると、懐中時計を握りしめて冒険者ギルドへと向かっていた。

 今日の正午に、ギルドのパーティー掲示板で【深紅の絆】パーティーと待ち合わせすることになってるんだ。

 どんなパーティーなのか楽しみだが、その反面問題行動が多い連中と聞くし、果たして上手くやっていけるかどうか不安もあった。

 目印になるのは、そのパーティー名が示すように赤い装具らしい。

 所持金もほぼなくなってしまったし、おそらくこれが最後のチャンスなんじゃないかな。臨時メンバーとして、一つの依頼に一度だけパーティーに同行するっていうスタンダードな契約内容だ。

 もしダメだったら大人しく故郷の村に帰って仕事を探すか、都にいる知り合いの道具屋でも手伝おうかと思っている。いくら戦闘勘があるといっても、俺の魔力は黒魔導士の中じゃ最弱といってもいいし、ソロでやれることには限界があるだろうから。

「――あ……」

 血気盛んな冒険者たちでごった返す中、赤い装具という目印を頼りに探していると、それらしいものを身に着けたパーティーがいるのがわかった。

 眼帯をつけた長髪の少女、バンダナを巻いた髭面の厳つい顔の男、スカーフをつけた細目の青年の三人組だ。

 いずれも赤い装具だし、三人って聞いてたからほぼ間違いない。問題行動が多いっていうから、挨拶代わりに遅刻してくるんじゃないかって思ってたが、約束の時間よりずっと早く来ていた。意外と真面目な連中なんだろうか? 早速話しかけてみよう。

「あの、【深紅の絆】の方々ですよね……?」

「ん、そうだが……って、まさか貴様が例のモンドとかいう黒魔導士か!?」

 やや距離を置いて話しかけると、飛び掛かるように眼帯の少女が迫ってきて面食らう。初対面の人間に向かって貴様呼ばわりって、なんとも変わってるな……。

「ど、どうも、臨時メンバーとして入ることになった黒魔導士のモンドっていいます。よろしく」

「やはりか! 私は【深紅の絆】のリーダー、剣士のグロリアと申す者! 歓迎するぞ! ほらほら、どうした、貴様らも早く自己紹介しないか!」

 眼帯の少女に促され、バンダナの男が気まずそうに笑いながら前に出てきた。

「どうも。俺は狩人のガムラン。ご覧の通り、アホのリーダーをどうかよろしく」

「はあ!? クソじじいのくせに貴様、アホとはなんだ、アホとは!」

「こいつ、まだ50代なのに俺をじじい扱いするなとあれほど言っただろうが! わからせてやろうか、メスガキ!」

「き、貴様っ、上等だ、ぶっ殺す!」

「……」

 おいおい、急に取っ組み合いの喧嘩を始めてしまった。周りの冒険者がドン引きした様子で離れていってるし、やはり悪い意味で有名パーティーっぽい……。

「まあまあ、二人とも、やめてくださいよ、本当に……」

 今度はスカーフを首に巻いた気弱な感じの青年が二人を宥めたかと思うと、こちらに会釈してきた。

「モンドさん、お騒がせして申し訳ありません。えっと、僕はですね、白魔導士のワドルといって――」

「「――このおぉっ!」」

「うわっ!?」

 ワドルと名乗った青年がグロリアとガムランの二人に押されて倒れてしまった。

 ん、すぐに起き上がったわけだが、何かそれまでと雰囲気が全然違う。身震いするほど恐ろしい形相だ……。

「いい加減に……してくださいよ……二人とも……」

「「イ、インテリオーガ……」」

 目を見開いたワドルに凄まれ、二人とも青い顔で争うのをピタリとやめてしまった。

 インテリオーガか、なるほど。彼は大人しそうに見えて怒らせたら一番怖いタイプか。

「これからよろしく頼む、モンドとやら!」

「頼むぜ、モンド!」

「頼みますね、モンドさん」

「あ、あぁ、こちらこそ頼みます。それで、これからどうしましょうか?」

「そうだな……モンド、その前に一つ、私から言わせてもらう」

「はい、なんでしょう?」

「貴様の噂は聞いているぞ。A級パーティーから追放されたばかりで、その理由は実力がまったくない寄生虫、詐欺師だったからだそうだ。それは本当なのか?」

「おいグロリア、やめろって」

「そうですよ、グロリアさん。過去のことをほじくり返すのはいかがなものかと……」

「いや、ガムラン、ワドル! 臨時メンバーとはいえ背中を預ける関係になるんだから、そこははっきりすべきだろう! もう一つも依頼を失敗できない状況なんだからな! で、本当なのか?」

「……」

 俺は迷ったが、正直に打ち明けることにした。噂を聞いた上で契約してくれたんだし、話がわかる人だと思ったからだ。

「追放されたのは本当ですが、嫌がらせでそういう噂を流されたってだけで、個人的には役立っていたっていう自負はあります」

「なるほど。よく話してくれた! 嫌な思いをしただろうが、これは行動をともにするゆえ、仕方ないことだ。許せ!」

「いえいえ、俺としても、そっちがG級パーティーってことで警戒してるんでお互い様ってことで」

「お、言ってくれるな、貴様ー。正直耳が痛いぞ! だが、それくらい正直に言ってくれたほうが私たちとしても気楽だ。だろう、貴様ら!?」

「ま、確かにそれは一理あるな」

「僕も同感です。それなら、お互いに失敗できない立場ですから、まずは自分たちの力量を披露し合って、それからどんな依頼を受けるか話し合って決めるべきかと」

 ワドルの冷静な言葉に対し、俺たちは深々とうなずき合った。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした

新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。 「ヨシュア……てめえはクビだ」 ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。 「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。 危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。 一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。 彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する

こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」 そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。 だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。 「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」 窮地に追い込まれたフォーレスト。 だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。 こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。 これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」  騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。  この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。  ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。  これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。  だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。  僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。 「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」 「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」  そうして追放された僕であったが――  自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。  その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。    一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。 「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」  これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。

神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します

すもも太郎
ファンタジー
 伝説級勇者パーティーを首になったニースは、ギルドからも放逐されて傷心の旅に出る。  その途中で大地の精霊と運命の邂逅を果たし、精霊に認められて加護を得る。  出会った友人たちと共に成り上がり、いつの日にか国家の運命を変えるほどの傑物となって行く。  そんなニースの大活躍を知った元のパーティーが追いかけてくるが、彼らはみじめに落ちぶれて行きあっという間に立場が逆転してしまう。  大精霊の力を得た鑑定師の神眼で、透視してモンスター軍団や敵国を翻弄したり、創り出した究極のアイテムで一般兵が超人化したりします。  今にも踏み潰されそうな弱小国が超大国に打ち勝っていくサクセスストーリーです。  ※ハッピーエンドです

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

1つだけ何でも望んで良いと言われたので、即答で答えました

竹桜
ファンタジー
 誰にでもある憧れを抱いていた男は最後にただ見捨てられないというだけで人助けをした。  その結果、男は神らしき存在に何でも1つだけ望んでから異世界に転生することになったのだ。  男は即答で答え、異世界で竜騎兵となる。   自らの憧れを叶える為に。

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

処理中です...