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16話 謎
しおりを挟むまもなく俺たちはバラモ森林の入り口まで到着した。ここからは道らしい道もないので徒歩だ。
なんというか、普通の森林と比べると樹々の高さや厚みが尋常じゃなくて、この時点から既に太陽光がほとんど遮られてるんじゃないかと思えるほどだ。そのためか、正午に近いというのに周辺がやたらと暗い。
「さあ、行くよっ! 大いなる雨の恵みよ、我らを助けたまえっ……」
みんな緊張してるみたいだったが、リーダーのラダンが小型ハープを爪でしっとりと奏でながら歌い始めた途端、表情が和らぐのがわかった。
俺自身も彼の演奏を聴いてると、なんだか気持ちが安らいできて、心が強くなるような感じがした。これが吟遊詩人の力か……。
「これはリラックス効果や状態異常回復効果のある雨の歌で、僕はそれ以外にも魔力や身体能力を上げる高揚の歌、敵の心を不安定にして技術を下げる不穏の歌を演奏できるよ!」
「へえ……」
「あと、この小型ハープは弓にもなる。威力は狩人に劣るけどね」
「なるほど……」
「モンドおにーちゃん、ラダンって謙遜してるけど凄い腕前なんだよ!」
「そうそう、モンドよ、見たら腰抜かすぞ。ラダンは見た感じは頼りねえけど、腕はすげーんだからよ」
「そうなのか……」
「お、おいおい、メルル、バルダー、僕なんて別に大したことはないし、そんなに重圧をかけないでくれたまえよ……」
ラダン、台詞とは裏腹に表情は明るいし満更でもなさそうだ。早くその実力を見てみたいところ。
「……とっとと行くぞ」
「ちょ、キール! それはリーダーの僕が決めることだし、一人で行ったらダメだって!」
慌てるラダンを無視して、例の無口なシーフが一人で歩き始めた。個人的には彼の力が一番気になる。
――ん、モンスターの気配が複数するな。それを感じてか、しばらく経ってから先頭のキールが立ち止まった。
「来る。止まれ……」
「「「っ!」」」
キールの警告によって、俺を含めてみんな警戒した様子で立ち止まる。
自分の戦闘勘には及ばないが、シーフらしく索敵の力は充分にあることがわかった。
まずは彼ら【時の回廊】パーティーの力を見てみたいし、窮地にでもならない限り俺が手を出すのはやめておこう。
『『『『『ガオォッ……』』』』』
まもなく現れたのは、5匹のモンスターで、赤黒い毛と大きくはみ出した牙が特徴のブラッディベアだ。俺たちを囲むようにして、徐々にこっちへと迫ってくる。
大体の森林において奥地にしか生息しない、熊系モンスターの中でも大柄で特に強い種が早くも現れることからも、このバラモの森がいかに恐ろしい場所であるかがわかる。
「血湧き肉躍れ! 愚かな獣たちを蹂躙せよ!」
ラダンが忙し気なハープの音色とともに勇ましく歌い上げ、俺は体が滾るように熱くなってくるのがわかった。これが例の身体能力と魔力を上昇させる効果のある高揚の歌か。
「いっくよー!」
次に隣にいる白魔導士のメルルが杖を掲げたので、どんなバフをかけてくれるのかと期待したんだが何も起きなかった。
いや、これは味方にかけられたものじゃない。ほぼ間違いなく、モンスターに向けられた身体能力を下げるデバフだ。明らかに目の鋭さが失われ、力感が弱まったのが見て取れるからだ。デバフ系の白魔導士とは珍しいな。
「はあぁっ……!」
『『『『『ガッ!?』』』』』
立て続けにキールによってナイフが投げられ、いずれもブラッディベアの片目に命中するのがわかった。へえ、やるなあ。
「うおおおおぉぉっ! 今度は俺の出番だあぁっ!」
大剣を担いだ戦士バルダーがモンスターの懐に飛び込み、深い傷を負わせるとともに返り血を浴びる。
とにかく豪快で派手に見えるが、至って冷静に周りを見渡しながら動いているのがわかる。これぞまさしく熟練の戦士だ。
というか、高い防御力で知られるブラッディベアの体に易々と刃が入ってることから、身体能力に加えて防御力低下のデバフをかけられてるのがわかる。
「さあ、仕上げの時間ですよ……!」
こいつは驚いた。ラダンのハープが弓の代わりになるとは聞いてたが、幾つものを矢を同時に放ち、いずれもそれがモンスターの額や心臓付近に命中したのだ。威力はさほどじゃないが、それでも見事すぎる技術、命中力だ。
『『『『『グガアアアァァッ!』』』』』
やがて、ブラッディベアの群れはなすすべもなく力尽きた。いやー、強い……って、彼らは本当に大きな依頼を成功させたことがないD級パーティーなのか?
正直、ラダンたちの動きはいずれも洗練されていて、ほぼ文句のつけようがなかった。明らかにグロリアたちより上だ。なのに低級を維持してるなんて、あまりにも奇妙すぎる……。
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