A級パーティーを追放された黒魔導士、拾ってくれた低級パーティーを成功へと導く~この男、魔力は極小だが戦闘勘が異次元の鋭さだった~

名無し

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18話 呪い

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 あれから、俺はラダンたちと焚き木を囲んで夕食を取ったあと、そこから少し離れたテントで休むことになった。

 食べ終わったときに眠くなったのでもう寝ていいかと訊ねたら、あっさり承諾してくれたんだ。みんな顔を見合わせて呆れたように笑っていたが。

 モンスターたちは昼夜問わず発生して襲ってくるため、パーティーは交代で眠る必要があるのだが、俺に関しては役に立ってないせいか朝までぐっすり寝ても構わないと思われてそうだ。

 ただ、俺は眠るつもりなんて全然なくて、本当に寝るとしても意識を半分ほど沈ませる半睡状態を維持させるつもりだった。

 ここまで無能な振りをするのも、やつらを油断させることでその正体、目的を知るためだからな。もし俺を襲うつもりならこのタイミングを逃さないだろう。

「……」

 来た。足音だけでなく気配も消しているのがわかるが、俺には誰なのか判別できる。シーフのキールだ。

 ただ、こっちの様子を確認するだけで襲ってくる気配は微塵もなく、まもなくその場を立ち去った。おそらく、もう眠っていると判断したはず。

 シーフという職業は、相手が本当に眠ってるどうかくらいは調べればわかるそうだが、ほんの少し様子を窺ってくる程度であれば、半睡状態とまでいかなくても闇魔法で意識をちょっと沈ませるだけでごまかせるんだ。

 しかも俺はみんなが活躍する中、照明係しかやってなかったわけだし、深く調べなくても大丈夫だと判断したんだろう。

 それで襲ってこなかったってことは、俺を害する意図はなさそうだ。ん、ヒソヒソと会話が聞こえてくるし、ちょっと耳を澄まして聞いてみるか。

 そういうわけで、光魔法で自分の聴覚神経を一時的に尖らせてやる。

「――キール、おかえりー。ねね、モンドおにーちゃんはどうしてたぁ?」

「やつは怖いくらいスヤスヤだった。パーティーにほとんど貢献できてないのによく眠れるものだな……」

「きゃはっ、かわいー! それにしてもぉ、私たちって怖いくらい順調だねえ」

「このままいけば、僕たちは成功できる……と信じたい……うっぷ……」

「もー、ラダンったら、酒に弱いくせに飲みすぎだよぉー。自信もなさそうだし、まるで自棄酒みたい……」

「けどよ、メルル。ラダンの気持ちもわかるだろ。俺ら、大きな仕事のときは順調にいってるようで必ず失敗してきたからなあぁ……」

「バルダーの言う通りだ。最早といっても過言じゃない。これを打破する必要がある……」

「「「……」」」

 呪いだって? キールの発言でその場が静まり返った。一体どういうことなんだ……。

「それに、あのモンドという男は今までのやつと比べてもまったく使えそうにない。俺たちの力でなんとかするしかないだろう……」

「……」

 言うなあ、キール。まあなんにもしてこなかったし仕方ないか。

「ふわぁ……眠くなっちゃった。私も、そろそろ寝るねっ」

「おいメルル、王子様といいことするつもりじゃねえだろうな?」

「かもねぇ。だって、私お姫様だもん。王子様を守らなきゃ……」

「……逆じゃね?」

「きゃははっ。だって、モンドおにーちゃんって可愛いんだもん……」

「……」

 な、なんか嫌な予感が……。とはいえ、各自テントを持ってるわけだし、さすがにここまでは来ないと思いたいが。

「あーあ、いくら自分よりも頼りなさそうなのが来たからってよお……ひっく……」

「ま、まあメルルも一応女性ですし、母性本能をくすぐられたのではないかと……うぇっぷ……」

「ふん、くだらん会話だ。それと、俺の嫌いなシモネタだけはやめてくれ。緩んでいたらまた呪いに呑み込まれるぞ……」

 メルルは既にそこから去ったらしく、バルダー、ラダン、キールの三人の声のみが聞こえてきた。

「へいへい。それにしても、相変わらずキールは酒につええなあ」

「僕もそれ、思った……おえっぷ……本当に感心するし、羨ましいよ。キールは酒が入るとよく喋るようになるだけだし……」

「……」

 キールも飲んでたのか。酔うと饒舌になるタイプなんだな。

 今から思うと、彼が普段から妙に強い表情をしていたのは、それだけ例の呪いってやつを警戒してたからなんだろう。

「仕事は今のところ順調だが、呪いは確実に発動する。今度こそ……呪いを叩き潰してやる……」

 キールの威嚇するような低い声が胸に響いた。

 一体、呪いってなんなんだろう。俺も凄く気になってきた。

 ちなみに、呪術師っていう職業はかつてあったらしいが今は存在しない。ということは、実力があるのに大きな依頼のたびに必ず失敗してきたから、不吉すぎて呪いのようだと言ったんだと推測できる。

 ん、こっちに人の気配が近付いてくるのがわかる。誰だ……?

「――ひっく……」

 こ、この声は……。

「えへへ……私の王子様ぁ……」

「っ!?」

 メルルだった。テントに入ってくるなり股間をまさぐってきたので、俺は慌てて寝返りを打って回避した。

 酒臭いし彼女も酔っ払ってるっぽいな。小さな溜め息とともに『もー』という不満そうな声が聞こえてきて、まもなく寝息に変わった。

「……」

 まったく……。今ので興奮して寝られなくなってしまった。

 って、あれ? 俺は上体を起こし、メルルの寝顔を見てはっとなる。頬が濡れていたんだ。なんかブツブツと寝言を呟いてるし悲しい夢でも見てるっぽいな。

 俺は自分の服を彼女の体に一枚被せてやった。さて、もう少しだけ寝るとするかな……。
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