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37話 証拠品
しおりを挟む「ふう……持ってきたぜ。これが例の品だ」
「はぁい、これがデビルワームを50匹倒したという証拠品ですねえ」
冒険者ギルドにて、おっとりした言動の受付嬢が【風の紋章】パーティーから荷物を受け取る。
「ではでは、早速確認いたしますのでぇ、そこでしばらくお待ちくださぁい。んっ……と、とっても重いですぅ……」
「……」
フラフラとした足取りでカウンターの奥へと引っ込んでいく受付嬢を見届けたあと、ゴートが右の口角を吊り上げた。
「へっ。どんだけ調べても無駄だってんだよ。早く俺たちに報酬を渡しやがれっての、あんのクソ受付嬢めが」
「「……」」
すこぶる機嫌が良さそうに悪態をついてみせるゴートだったが、傍らにいるロナとカリンはいずれも不安そうな面持ちであった。
「ゴ、ゴート様、本当に大丈夫かしら……?」
「リーダー様、私も不安です……」
「大丈夫だって、ロナ、カリン……! 調べるっていってもどうせ荷物の上のほうをざっと見るくらいだし、絶対にバレやしねえ。それにな、あのクソ受付嬢についても俺は事前に調べてるんだ」
「そ、そうなんだ。どんな人?」
「どういう人なんです……?」
「やつはな、目が悪い上に数字を数えることが苦手らしくてよ、大雑把な調べ方をすることでも知られている。つまり、別の種類のものを入れるとか、よっぽどのことがなきゃ問題ねえってこった!」
「そ、そうなんだぁ。よかったぁ……」
「それを聞いてホッとしましたぁ……」
「ただ、その分不正した冒険者パーティーには、鬼みてえに厳しい処分をすることで有名だがな……」
「え、えぇぇっ? とてもそんな風には見えないけど……」
「あ、あんなに大人しそうに見えるのに、なんだか怖いですねぇ……」
「大丈夫大丈夫。それはあくまでも不正が発覚したときだけなんだから、心配なんかいらねえんだって。しかも、新鮮かどうかの違いってだけで同じ種類のモンスターの心臓だけ入れてるわけだし、あのクソ受付嬢に本物の証拠品かどうかなんて見抜けるわけがねえ……お、戻ってきたぜ!」
「――はぁ、はぁ……お、お待たせしましたぁ。【風の紋章】パーティーの方々っ」
「チッ……! こっちはお前と違って急いでんだからよ、とっとと報酬を渡しやがれっての!」
「ご、ごめんなさぁい。荷物が重かった上に、確認作業に少々手間がかかりましてぇ……えへへ……」
「あなたね……ゴート様の言ってることが聞こえないの? それともふざけてる? あたしたちはA級パーティーなのよ? わかるよね? 立場が違うの。受付嬢の分際で、勿体ぶらずに早く報酬を渡しなさい!」
「まったく……本当にトロい人ですね。さっさと報酬をくださいな。こっちがどれだけ苦労したか、その努力を踏みにじるおつもりなんですかね……?」
苛立った様子を見せるゴートらに向かって、受付嬢が困ったような笑顔を作る。
「そ、それがぁ、残念ながらあなた方に報酬をお渡しすることはできないのですぅ……」
「「「え……?」」」
「あなた方は、デビルワームとは別の種類のモンスターの心臓を混入なさいましたねぇ? 私は視力も頭も悪いのですけど、それくらいは見分けがつくのですよぉ……」
「ど、どういうことだ、ロナ、カリン、ま、まさか、変なの入れたんじゃねえだろうな……!?」
「あ、あたしは、できるだけ新鮮なミミズの心臓をくださいってお願いしただけで……!」
「ロ、ロナさん、その言い方だと、フォレストワームの心臓も候補に挙がっちゃいますよ……」
「あらあら……証拠品をお店で購入なさったんですかぁ。それはいけませんねぇ……」
「「「っ!?」」」
しまったという顔をするゴートたちに向かって、受付嬢が凄みのある笑みを浮かべてみせる。
「それではぁ、不正が発覚したためぇ、【風の紋章】パーティーの方々を、A級からC級に降格いたしますっ」
「そ、そんなっ! C級だと……!? いくらなんでもやりすぎだ! 訴えるぞ!」
「そ、そうよ……! あなたをクビにしてもらうよう、知り合いと協力して抗議運動を起こすわよ!?」
「そ、そうですよ……。私たちを怒らせたら、どうなっても知りませんよ……?」
「あうあう……それではぁ、脅迫したということでぇ、もう一つ……いえ、二つ降格して、E級にしておきますねぇ」
「「「……」」」
ゴート、ロナ、カリンの三人は見る見る青ざめていき、がっくりとその場に座り込む。
「……ま、まだだ、まだ、俺たちは終わってねえ……って、カリン……」
「カ、カリン、顔……」
「え……? い……いやああぁぁっ!」
さらにカリンの顔半分が溶けた状態に戻り始める有様で、いつの間にか周りに集まった野次馬たちから好奇の視線と失笑をたっぷりと浴びる羽目になるのであった……。
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