固有スキルが【空欄】の不遇ソーサラー、死後に発覚した最強スキル【転生】で生まれ変わった分だけ強くなる

名無し

文字の大きさ
8 / 31

第八階 不遇ソーサラー、生まれ変わる

しおりを挟む

「もう僕に構わないでください。パーティーには別の人を誘ってください」

 冒険者登録所にて、深刻さを漂わせながら向かい合う少年と少女がいた。

「ど……どうしてそういうこと言うの!?」
「……」

 6か月ほど前に15歳になり、冒険者になったばかりの少年、カイルにはさっぱりわからなかった。この女の子がどうして自分に構うのか。貧乏人で、能力だって大したことがない今の自分に、一体どれほどの価値があるのかと思っていたのだ。

(なんで僕なんかに構うんだ、この人は……)

 唯一、彼の中で誇れるものといえば【先行入力】という固有スキルだった。何もない空間に限って攻撃できるというものだ。罠のようなもので、例えば空間を切りつけたあとにそこに3秒以内に誰かが飛び込むと切り傷を受けるというものである。一見凄そうだがタイミングが限られるし、追いかけてくる冒険者やモンスターから逃げるときくらいにしか使えそうにない、と彼は考えていた。

「もしかして、可哀想とかそういう気持ちで私があなたに接してるって思ってるの?」
「そうじゃない。あなたと僕では住む世界が違いすぎる」

 彼女については、ちょっと短気だが本当にいい人だとカイルは思っている。でも彼には眩しすぎた。自分は幼少の頃から親に捨てられ、盗むことで生計を立ててきた。ダンジョン内ですら、冒険者を殺して金を奪うという非道な行いをしてきたのだ。怒り狂った冒険者に捕まり殺されそうになったところを、彼女は助けてくれた上にパーティーにまで入れてくれた。だからこそ、これ以上一緒にいるべきではないと思ったのである。

「あなたには本当に感謝しています……エリナ」
「カイル!」

 少年カイルはダッシュしてダンジョンへと潜っていく。追いかけてくる少女エリナを振り切るように猛然と。込み上げていた涙は見せたくなかった。カイルは振り返らないように頑強な思いを並べる。

(一度血で染まったこの手を洗い流すことはできない。だから僕はこれからも一人で生きていく。たった一人でも成り上がってみせる……)



 ◆◆◆



 ――まだ死んでいない、だと……?

 確かに俺は生きている。死に損なってしまったのか。ここはどこだ? 階段のようだが、あいつらはいない。おそるおそる上がってみると扉があった。どうやら俺は登録所の前にいるみたいだ。あまりの眩さに顔をしかめる。

 ようやくこの明るさに目が慣れてきたが、なんかやたらと広く感じるな。中にいる冒険者たちも大きいやつばかりだ。まるで俺が小さくなったかのよう。まさかと思って両手を見た。違う、これは俺の手じゃない。こんなに小さいわけがない。

 トイレに駆けこんで鏡を見てみると、俺は少年になっていた。わけがわからず、十秒間くらい頬を撫でていた。これは一体、どういうことなんだ。黒いレザージャケットにくたびれたズボン……シーフのような格好をしている。持ち物を確認したが何も……ん?

 足元に違和感があって、靴の中を探ってみると何かあった。これは……こんなところにマジックフォンを忍ばせていたのか。結構丈夫とはいえ雑な扱いをするものだ。とりあえず簡易ステータス欄を確認してみよう。

名前:カイル
年齢:15
性別:男
ジョブ:ローグ
レベル:28

LEP466/466
MEP343/343

ATK18
DEF16
MATK58
MDEF52
キャパシティ5

固有スキル

【転生】【先行入力】

パッシブスキル

模倣3

アクティブスキル

ハイド3
スティール5
フレイムボルト3

 固有スキルを見てマジックフォンが震えた。【空欄】だったはずの固有スキルが【転生】になっている。

【転生】――命を落とした際、既にダンジョン内で亡くなっている者を復元させる形で転生することができる。その際は元の体のレベル、記憶、能力等を受け継ぐ。

 なるほど。死んだことで未知のものだった固有スキルがこうして発現したわけだ。【転生】なら、確かに死ぬしか発現する術はないな。

 しかも二つあるということは、これはつまり――ダンジョンで亡くなったカイルとかいう少年として転生したことで、その固有スキルを受け継いだ形なのか。姿形、年齢、ジョブ以外はほぼ変化していないのがわかる。何度か深呼吸してようやく震えも止まり、落ち着いてきた。もう一つの固有スキルの説明も見てみるか。

【先行入力】――何もない空間に限り攻撃可能。3秒以内にその空間に入った人間にダメージを与える。

 癖のあるスキルだが、使い方によってはかなり有効そうだ。攻撃ということは、物理でも魔法でもいけるんだろう。とりあえずローグについてはよくわからないので元のジョブに戻そう。できれば服装も変えたい。

名前:カイル
年齢:15
性別:男
ジョブ:ソーサラー
レベル:28

LEP366/366
MEP593/593

ATK16
DEF13
MATK77
MDEF71
キャパシティ5

固有スキル

【転生】【先行入力】

パッシブスキル

ムービングキャスト2

アクティブスキル

マジックエナジーチェンジ5
ベナムウェーブ5
インビジブルボックス3
マジックエナジーロッド4

 これでようやく本当の自分が戻ってきたような気がする。所持金欄を確認するとジェムが90ジェムしかなかったが、それで安物のローブと杖を用意することができた。ソーサラーの衣装もよく似合ってるじゃないか。鏡の中の自分がにんまりとしている。俺ってこんなにも残虐な笑顔を作れたのか。しかも極自然に。

 ソフィア、ルーサ、ジュナ、エルミス、ローザ……見ていろ。必ず1人残らず最後まで痛めつけて殺してやるからな……。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

異世界をスキルブックと共に生きていく

大森 万丈
ファンタジー
神様に頼まれてユニークスキル「スキルブック」と「神の幸運」を持ち異世界に転移したのだが転移した先は海辺だった。見渡しても海と森しかない。「最初からサバイバルなんて難易度高すぎだろ・・今着てる服以外何も持ってないし絶対幸運働いてないよこれ、これからどうしよう・・・」これは地球で平凡に暮らしていた佐藤 健吾が死後神様の依頼により異世界に転生し神より授かったユニークスキル「スキルブック」を駆使し、仲間を増やしながら気ままに異世界で暮らしていく話です。神様に貰った幸運は相変わらず仕事をしません。のんびり書いていきます。読んで頂けると幸いです。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

異世界での異生活

なにがし
ファンタジー
役職定年を迎えた男が事故に巻き込まれケガをする。病院に運ばれ治療をしていたはずなのに、なぜか異世界に。しかも、女性の衣服を身に着け、宿屋の一室に。最低な異世界転移を迎えた男が、異世界で生きるために頑張る物語です。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

処理中です...