4 / 38
第4話
しおりを挟むさあ、いよいよスライム狩りの開始だ。っていきたいところなんだけど、僕はこう見えて割りと慎重なタイプなんだ。
本当にステータス通りに命中するのかどうか、まずは石ころを拾って試すことにした。
オルトン村を出たところで、手ごろな石を幾つか拾ってから、それを遠くに見えるコケまみれの緑色の岩に当ててみることに。
お、命中してコケが剥がれた。何度か試してみたところ、全部目当ての岩に命中させることができた。
しかも、ことごとく狙い通りコケが剥がれた個所に石が当たってて、ほかのコケは無事だったのでその精度に驚く。よしよし、これならいけそうだ。
自信がついたので早速狩場へ出発することに。スライムが発生する場所は、ここから近場にある見晴らしのいい草原なんだとか。
村の入り口から数分くらい歩いて目的地へ辿り着いた。その向こうには巨大な湖もある。
モンスターはいきなり即湧きすることもあるそうなので、僕は草原には入らずに岩陰からスライムが発生するのを待つことに。これこそ弓使いの特権だからね。
お、何もないところにスライムが出現した。青くてプルプルした、想像通りの生き物だ。ここから20メートルくらい先にいる。僕は気付かれないように慎重に岩陰から弓を構えて狙いを定める。
「おい、雑魚。お前、そこをどけ!」
「あっ……」
剣を持った男が僕の前方に割り込んできた。あのスライムを倒そうとしてるみたいだ。
くそっ、横取りされてたまるかと思ってスライムを狙おうとしたけど、ダメだ。今スライムに矢を放ったらあの人に当たる可能性も出てくる。
というか、あの人むきになってブンブンと剣を振り回してるけど、スライムに軽々と躱されてる。……大丈夫なんだろうか?
「ぐああああぁぁっ!」
「……」
ジャンプしたスライムが男の顔にべちゃっと張り付く。やがて窒息死したのか、男は倒れて動かなくなった。見る見る溶かされてる。
うわあ……あれは僕が想像していた弱いほうのスライムじゃない。怖すぎ。仇討ちじゃないけど、今のうちにやっつけてやろうと矢を放つ。
「えっ……⁉」
すると、スライムがたった一発で砕け散った。あまりにもあっけなく倒せたのでしばらく呆然としたのち、驚きや喜びがあとから込み上げてきた。
おおおっ……! 本当に僕が倒したのかどうか、念のためにギルドカードを確認すると、討伐対象のスライム:1/10となっていた。
でも、腕力値が1しかないのにどうして……? って、そうか。器用値が100もあるから、急所を的確に叩けるんだ。それで一発で倒せたんだ。
そう考えると、この世界では100っていう数値は物凄いのかもしれない。
僕はその調子でスライムを10匹あっさりと倒し、スライムの魔石を三つ獲得することができた。スライムの形をした青い小石だ。
そういえば、レベルが上がったんじゃないかと思ってステータスを確認してみたら、レベルが1から3まで上がっていた。あれ? レベルが上がっても表示されないし、ステータスポイントも貰えないのか。
そう考えると、ステータスポイントを貰えるのはもっとレベルが上がってからで、100っていう数値は途方もない数字なのかもね。
この推測が正しい場合、【互換】と【HP100】の組み合わせは悪くないスキルどころか、とんでもないチートスキルだったってことになる。
というかもしかしたら、それ以上の可能性を持っていることだってありえる。【互換】スキルには何か得体の知れない底力のようなものを感じるんだ。
っと、HPが1の状態でずっといるのは危険なので、オルトン村へ戻る前に100に戻しておく。1のままで転んで死亡なんて笑えないからね。
出発したのが遅かったのもあって、僕が戻る頃にはもう村の中は黄昏色に染まっていた。美しい景色に目をやりつつ、軽い足取りで冒険者ギルドへ辿り着く。
「あ……クルス様、どうされましたか? 忘れ物でしょうか?」
「いや、忘れ物じゃなくて、依頼を完了したことを伝えようと思って……」
「え?」
「……」
あれれ? なんだ、受付嬢のスティアさんの様子が変だ。
「あの、もう一度よろしいですか?」
「えっと、依頼を完了したんだけど……」
「またまた、ご冗談をっ。依頼を受けてからまだ30分くらいですよ?」
「冗談じゃなくて本当だよ。ほらこれ、証拠のギルドカード。あと、魔石も」
「……」
僕のギルドカードとスライムの魔石を見たスティアさんが、唖然とした顔で黙り込んでる。
「……す、凄いです。本当にクリアしてますね。というか、早すぎです。ここまで早く依頼をこなした人、見たことありません……」
「で、でも相手はたかだかスライムだし……」
「私はそうは思いません。スライムって結構強いんですよ? 被害者も多く出てますからね」
「そ、そうなんだ……」
そういや、スライムに殺されたあと溶かされてる人もいたしなあ。ああ見えて結構厄介なタイプなのかもね。どうしてもスライムって最弱モンスターってイメージがあるけど。
「ちなみに、スライム10匹の討伐をこなすには、どれくらいかかるのが普通なんですか?」
「スライムは防御力が低いモンスターですが、攻撃力と回避力に優れています。ですので、慎重に倒さないといけません。また、遠くから狙おうにも常に動いているので急所に命中させるのは困難だといわれています。パーティーを組んだと仮定しても、討伐には数時間かかるでしょう」
「……」
へえぇ、パーティーですら数時間もかかるのか……。F級の冒険者基準だろうけど、自分で想像していたよりもずっと凄いことをやってのけたみたいだ。
ギルドにいた右列の連中も僕のほうに注目してきたけど、みんな信じられないって顔をしてたので滅茶苦茶気分がよかった。パーティーでも数時間かかるのにソロで30分足らずで倒してきたんだから驚愕するのも当然か。
「クルス様って、お一人で狩りをしていらっしゃるのに凄いですね!」
「た、たまたまですよー」
僕が照れ笑いを浮かべていると、右列のやつらの怒りが爆発したのか、口々に『まぐれだ』とか『左列のくせに』とか『調子に乗るな』とか小声で文句を言い始めるのがわかって愉快だった。
「あの、クルス様、こちらでスライムの魔石3つを一つ銅貨5枚で買い取らせてもらってもよろしいですか? これは大体一つ銅貨4枚から6枚くらいで取引されているもので、平均値は5枚なので悪くないかと思います」
「あ、じゃあそれでもいいですよ」
「ありがとうございます。それでは、成功報酬の銅貨10枚と合わせて、銅貨25枚です。ご苦労様でした。次もよろしくお願いしますね!」
「はい、こちらこそ!」
これで元々持ってるのと合わせると銅貨30枚になった。
大きな報酬に加えて、スティアさんからウィンクまで貰ってもうホクホクだ。異世界生活も悪くないっていうか、今のところ凄くいい感じかもしれない。
158
あなたにおすすめの小説
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる