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第7話
しおりを挟む※ユイ視点
「……ひっく……ど、どうしよう……これからどうなっちゃうんだろ……」
異世界の村まで必死に逃げてきた私は、入り口近くで一人うずくまって泣いていた。どうしてこんなことになったんだろう……?
私は混乱する頭を無理やり整理する。
……そうそう、学校から帰って、巫女装束に着替えて。それから箒で神社の境内の掃除をしていたら、急に異世界に飛ばされちゃったんだ。
ライトノベルっていうんだっけ? そういうジャンルでよく見かける、異世界転移ってやつみたい。
しかも、召喚した人は私たちを召喚した理由さえも教えてくれなかった。それどころか、外れスキルだからって左の列に並ばせられて、置き去りにされちゃった。
そこにゴブリンがやってきて……うぅ、もう思い出したくもないよ……。
「よう、そこの巫女服姿のお嬢ちゃん」
「……ふぁ?」
誰かが声をかけてきたので、見上げたら髭を生やした強面のおじさんだった。別の意味で胸がキュンとしちゃった。あれ、そういえばこの人の顔……見覚えある。多分右列の人だ。
「お嬢ちゃんは左列にいた子だろう?」
「あ、は、はい。そうですけど……」
「やっぱりか。独りぼっちで心細いんだろう? 左列のよわっちい連中なんて全滅しててもおかしくねえし、俺たち右列の仲間に入れてやろうか?」
「え……本当にいいんですか⁉」
「もちろんさ。いいってことよ。その代わり、沢山働いて稼いでもらうがなあ。げへへっ……」
「……あ、ありがとうございます! 頑張ります……」
な、なんだかニヤッといやらしく笑ってきて怖いけど、人は見かけによらないっていうし……。そう思っておじさんの人柄を【観察眼】スキルで調べてみたらFだった。あはは……なるべく一人で頑張ろうっと!
右列に入れてくれたおじさんは、オルトン村で私に皮の服や靴、棍棒を買ってくれた。おまけにご飯も。人柄がF級なのに優しい! と見直したのも束の間。近いうちに絶対に全額返せよだって。
そんなの言われなくたってわかってるもん。食事代も含めて、全部で銅貨10枚分だからすぐ返せるのか不安だけど。
びっくりしたのが、このお金はあの召喚士の人から貰ったんだってこと。一人銅貨30枚ずつ配られたんだって。
そう考えると右列の人ってほんっと優遇されてるって感じて、なんだか左列の人たちに申し訳なくなってきちゃった。
私はそれから、この異世界で生きていくために冒険者ギルドに登録した。色んな依頼を受けることができて、達成すると報酬を貰える場所みたい。まずはしっかり依頼をこなしておじさんにお金を返さないと。
おじさんの名前は富嶋ヒロシさん(名前のほうの漢字は忘れた)っていって、現実世界では裏社会で生きてた人なんだって! 石を目の前で拾って片手で粉々にしながら、俺に逆らうとこうなるぞって脅してきた。こわあ。
そういう事情もあって、私はFランクのスライム討伐の依頼を受けて、近くの草原までやって来た。
緊張するけど、戦う術はちゃんと持ってるんだ。私のもう一つのスキルは【糸】っていって、相手の動きをしばらく止める効果があるから。それを使ってスライムを止めて、棍棒でひたすらポコポコ殴る……!
効果が解除されてスライムが動き出したら全力で逃げて、またスキルを使って殴るの繰り返し。あ、やっと倒せた! ふう。まさかスライムがこんなに強いだなんて……。
そういうのを何度も何度も繰り返して、私は三日間かけてスライム10匹討伐の依頼を完了させた。その間に魔石が2つ出たから、それを売った分の銅貨10枚をおじさんに返すことができた。
皮の服と靴、それに棍棒と食事代で銅貨10枚だから、これで十分借りは返せたと思う。
それで油断していたわけじゃないんだけど、スライムの討伐完了させてギルドを出たあと、まさかの出来事が。
おじさんに呼び止められ、今すぐ報酬を全部渡せって要求されちゃった。え、なんでそうなるの⁉
これを全部奪われたら、私、食べていけなくなっちゃうよ……。こうなったら、【糸】スキルをおじさんに使って、その間に逃げるしか!
あ、転んじゃった。ほんっと、こんな大事なときに、私ってば……!
私は一か八か、悲鳴を上げた。こんな人気のないところ、誰も来るわけないけど、それでも一縷の望みに賭けて。
……って、本当に誰か来てくれた⁉ でもなんだか、頼りなさそうな男の人だけど、大丈夫かな……?
「……う、嘘ぉ……」
思わずそんな小さな声が私の口から漏れた。おじさんのパンチを左手で受け止めたと思ったら、右手でぶん投げちゃった。す、凄い、何この人……⁉
私はお礼をするために男の人に話しかけた。そしたら、お礼はいらないんだって。強い上に優しいって、ヒーローすぎ……。
しかも、私と同じ世界の人で左列の人だった! 能力を聞いたら納得。【互換】と【HP100】の組み合わせ強すぎ……。
この人についていけば安心だと思って、仲間にしてほしいって頼んでみる。ドキドキ……。
私、スキルは地味だし見た目もちょっと幼いから、ロリ気味の人じゃないと厳しいかも? え、ちょっと待ってだって。何か思うところがあったのかな? 断られたらどうしよ。
そう思うと段々不安に……。そうだ、彼のステータスを私のスキル【観察眼】で見てみよう!
変動ステータス
名前:来栖 海翔
性別:男
レベル:7
HP:1/1
SP:5/5
腕力:100
俊敏:1
器用:1
知力:1
魔力:1
【経験人数:0人】
固定ステータス
才能:B
人柄:A
容姿:C
運勢:B
因果:C
スキル:【互換】【HP100】
へえ~、本当にHPと腕力値が入れ替わってる! それに、この人【経験人数:0人】なんだ! へへっ、私と同じ! それに、人柄も一緒のAランク。なんだか気が合いそう。
って、それどころじゃなかった。私のことを仲間にしようかどうか迷ってるかもしれないし、アピールしておかないと。
彼は【経験人数:0人】ってことで色気に弱いかもだから、ウィンクして、肩を出して、と……。こんなもんでいいかな? とどめにパンツもちらりとやっちゃおうか?
あ、なんかアピールしてるの気付かれちゃったみたい。え……そんなことしなくても仲間にしてもいいんだって。やったあ! 人柄がAなだけある!
そのあと、【互換】っていうスキルを深掘りしてほしいって頼まれたので試してみたら、ただでさえ凄いのに、規格外のチートスキルなのが判明しちゃった。アイテムの説明を入れ替えて効能をすっかり変化させるって……何それ、一体どうなっちゃうの⁉
異世界に来て、嫌なことも色々あって挫けそうになったけど……私、とっても良い人に巡り合えたかも……?
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