異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し

文字の大きさ
30 / 38

第30話

しおりを挟む
 ※とある二人組の視点。



「……いやあ、ミサキさん。ここはなんとも退屈ですねえ」

「あはは。まあそうだけどさ。面白そうだし、いいじゃねーか、トウヤ」

 背丈の高い木々に囲まれる中、丁寧な口調で話しかける男に対し、対照的に粗い言葉遣いで返す女。

「とはいえ、折角呑気にしていたというのに、何故私たちがこんなことをしなければいけないのでしょう。あなたもそう思いませんか?」

「まぁね。でもからの頼みだし。この狩りに成功すりゃ、あたいらのふざけた待遇も良くなるかもしれねえだろ?」

「まあ、それもそうですか。待遇面の改善については、是非とも期待したいところです。何せ、私たちは右列の中でもアンタッチャブルな存在のようですからねえ」

「そりゃねえ。あたいらってこっちじゃ人を殺しまくり、物を盗みまくりだからねえ。異世界で夢が叶ってよかったよ。それにしても、左列カスの生き残りがいるなんて夢にも思わねえって。弱っちいから全員くたばってるって思ってたのに」

「まったくです。まさかこんな場所にまで来られるような者が左列にいたとは思いませんでした……。ただ、今日で左列はドードーのように絶滅種となるでしょう」

 この凸凹な二人組の男女は、いずれも非道なことで知られる右列の一員である。

 彼らは召喚士ガリュウからの指令を受け、その召喚術の一つ、派遣魔法によってエルフの国へと繋がる森の奥へと送られてきたのだ。

 その命令の内容というのが、こっちへいずれ来るであろう左列の三人組を抹殺してほしいというものだった。

「……つーかよ、なんかときたま種みたいなのが飛んでくんのがうざすぎんだよ。クソが」

「まあそれに関しては別にいいではないですか。雑魚の左列からしてみれば死活問題かもしれませんが、私たちにとっては問題ないでしょう」

「あたいにしちゃあ、虫けらの左列がうろちょろしてるみてえで気になんだよ……あ、来やがった! 例の三人組だ!」

「……ほう、ようやくお出ましになりましたか。さすがは私たちの親玉であるガリュウ氏。先見の明がおありだ」

「だねえ。カスども、まさかあたいらがこうして待ち構えてるなんざ、夢にも思わねえだろうなあ。まさに飛んで火に入る夏の虫ってやつさ……って、あ、あいつは……⁉」

 正面から飛行してくる三人組の一人を見て、驚愕の表情を浮かべるミサキ。

「ん、どうしました、ミサキさん?」

「あ、あれは……あいつだよ」

「はい? あいつじゃわかりませんが」

「ほら、例の――ごにょごにょ……」

 ミサキが耳打ちしてまもなく、いかにも眠そうだったトウヤの目が見開かれる。

「――お、おぉっ、そうですか。あれですか! これは、素晴らしい。あのとき、殺すかどうか迷いましたが、殺さなくて大正解でした。あえて泳がせてやった甲斐があるというものです。もうすぐ最高のショーを見られそうですねえ。ククッ……」

「トウヤったらさあ、ホントわかりやすいやつだね。それまで退屈そうな顔してたってのによ、急にいやらしい顔しやがって。ほんっと、反吐が出るようなゲス野郎だな!」

「ふふっ、ミサキさん。それはあなたに言われたくありません。私たちは同じ穴のムジナですよ」

「ねね、トウヤ。あいつ、あたいがバラしちゃってもいい?」

「いいえ、こればっかりは譲れませんよ。私がやります」

「ちぇっ……けど、トウヤ。あたいよりあんたがやったほうが、えげつない残酷ショーになって面白そうだねえ」

「ククッ……。あなたもそう思いますか。その辺にいる猫をご覧なさい。ネズミを弄び、最後には断末魔の悲鳴と血肉を味わっているでしょう。それと同じように、獲物の心の底からの怒りや悲しみと向き合い、徹底的に甚振り、最後には止めを刺して力の差を見せ付けることこそ、最高の快感であり、至高の娯楽なのですから……」

 薄笑いを浮かべるトウヤの目の奥が怪しく光った。



 ※サクラ視点



 クラインの町を出発した私たちは、エルフの国へ向かうため、とある森の中へと入った。

 ここは途轍もなく大きな森で、特に木々が太くて長いのが特徴なんだ。光もあんまり入ってこられないみたいで、夕方か早朝みたいに薄暗い。

 とっても神秘的な場所で、時々風の音みたいなのも聞こえてくる。

 あと、植物の種っぽいのが私たちのほうへ飛んでくるときもあるけど、クルスの持ってる盾のペンダントのおかげで平気みたい。

 私の【バルーントラップ】もあるから、自分のほうに飛んでくるものは二重で防ぐことができる。

 今更かもしれないけど、こういう景色を見ると改めて異世界へ来たんだって感じがする。ただ、下はなるべく見ないようにしてる。そうしないと白骨死体っぽいのが見えちゃうから。怖いよ。

 さて、もう少しで彼に追いつくことができそうだから、もうひと踏ん張り頑張らないと……。

「――え……サクラ、凄いね」

 私が隣にきたことで、クルスがびっくりした顔をしてる。しかも褒められた。やった、狙い通りだ。

 クルスの近くだと、彼が強い上に盾のペンダントがあるから安全っていうのがあるけど、もちろんそれだけじゃない。

 彼は私の兄さんに似ているので、傍にいると安心感があるんだ。

 クルスっていかにも頼りなさそうな見た目だし、性格だってそんな感じなのに、肝心な場面だととても勇敢なところとか、特にそっくり……。

 ただ、似てるばかりじゃない。

 時々私の胸のほうを見てたりとか、時々変な笑みを浮かべてブツブツ言ってたりとか、そういう変だけど違うところもちゃんとあるのがいい。

 私が年上の男性に弱いだけかもしれないけど。

「へへ。私、隠れて飛ぶ練習してたんだ」

「へえ、サクラって頑張り屋さんだね」

「う、うん……」

 頑張り屋さんだって言われた。嬉しい。

 こっそり猛特訓したおかげで、ウィングブーツでの飛行にも大分慣れてきて、こうしてクルスと並んで飛べるくらいまで上達したんだ。

「でも、なんでそこまで頑張ったのかな?」

「そ、それは……こうやって飛んでるときでも、クルスの横顔が見たいから……」

「なるほど……って、サクラ。そんなこと言われたら照れるって……!」

「だって、クルスってとっても格好いいから……」

「……ほ、本当に?」

「冗談っ!」

「サ、サクラ……」

「あははっ、でも半分本当だから! ……あ、クルス。真っ赤になってる。可愛い」

「大人をからかったらダメだよ、サクラ……」

「ふふっ」

 こうして、私はクルスとのお喋りを楽しんだ。今まで一緒に飛んでたユイには気の毒だけど……。

「――あ……」

 それから、どれくらい夢心地で飛んでいただろう。

 向こうのほうに人みたいなのがいるのがわかった。やっぱり人だ。

 誰だろうと思ったら……それが徐々に近付いてきて、私は体中に電気が走るような、そんな感覚を覚えていた。

 脳裏に浮かんでくるのは、いやらしい笑みを浮かべた二人組の姿……。

「う……」

 た、たった今、完全に思い出した。その瞬間、血が沸騰するような感覚に襲われる。

 間違いない……あそこにいる二人組は、私の兄さんを殺したやつらだ……。
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始! 2024/2/21小説本編完結! 旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です ※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。 ※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。 生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。  伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。 勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。  代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。 リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。  ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。  タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。  タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。  そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。  なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。 レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。 いつか彼は血をも超えていくーー。  さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。  一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。 彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。 コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ! ・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持 ・12/28 ハイファンランキング 3位

元商社マンの俺、異世界と日本を行き来できるチートをゲットしたので、のんびり貿易商でも始めます~現代の便利グッズは異世界では最強でした~

黒崎隼人
ファンタジー
「もう限界だ……」 過労で商社を辞めた俺、白石悠斗(28)が次に目覚めた場所は、魔物が闊歩する異世界だった!? 絶体絶命のピンチに発現したのは、現代日本と異世界を自由に行き来できる【往還の門】と、なんでも収納できる【次元倉庫】というとんでもないチートスキル! 「これ、最強すぎないか?」 試しにコンビニのレトルトカレーを村人に振る舞えば「神の食べ物!」と崇められ、百均のカッターナイフが高級品として売れる始末。 元商社マンの知識と現代日本の物資を武器に、俺は異世界で商売を始めることを決意する。 食文化、技術、物流――全てが未発達なこの世界で、現代知識は無双の力を発揮する! 辺境の村から成り上がり、やがては世界経済を、そして二つの世界の運命をも動かしていく。 元サラリーマンの、異世界成り上がり交易ファンタジー、ここに開店!

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

処理中です...