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23話 向こう側
しおりを挟む「おいお前たち、もうすぐ駐屯地に到着するぞ。いやー、褒章持ちから殺人犯まで落ちぶれたカインがどんな惨めな面を晒してくれるのか、今から楽しみすぎるな!」
「ホントね……。逆に慰めてあげたい気分。虫けらを見下ろすみたいに、超上から目線でっ」
「イエスッ、ファリム、その案は実にグレートだね。やつはこの上ない屈辱に打ち震えることだろう!」
「まさに泣きっ面に蜂ってやつですねっ」
「「「「アハハッ!」」」」
駐屯地を目前にして、ナセルたちの笑い声は弾む一方であった。
「――うっ……!?」
「おっと、わりいな」
パーティーの先頭にいたナセルの頭が、通路の横から飛び出してきた男の肩に当たる。
「お、おい、気をつけろよお前……って、あれ……?」
きょとんとした顔で周囲をキョロキョロと見回すナセル。
「ん、どうしたの、ナセル?」
「リーダー?」
「何かあったんですか? リーダーさん」
「い、いや、今さっき誰かとぶつかったような気がしてさあ……」
「「「え?」」」
ナセルの言葉に首を傾げるメンバーたち。
「え、お前たちも見てないのか? おっかしいなあ。確かにぶつかった気がしたんだけど、顔すら思い出せねえってことは俺の気のせいかな……。ま、いいや。気を取り直してとっとと行こうぜ!」
「「「おーっ!」」」
◆◆◆
「あ……」
鉄格子の向こう側に現れたのは、僕にとって凄く馴染み深い人たちだった。なんとも気まずい空気が流れるけど、ここは勇気を出して笑うことする。
「今日は残念なところを見られちゃったね」
僕が明るい調子で発した言葉に、エリスとリーネがびっくりしたような表情を見せた。なんせ殺人罪で牢獄に閉じ込められてるわけだし、笑顔を見せる余裕があるとは思いもしなかったのかもしれない。
「残念なところだなんてそんな……とんでもないです、カイン様」
「そうなのだ、残念なのはカインどのを閉じ込めた連中なのだあっ……」
「あははっ……心配させちゃったけど、明日にはここから出られそうだよ。そしたら一週間以内に無実を証明するつもりさ。二人とも、面会に来てくれてありがとう」
「カイン様、実は今回その件で折り入ってお話が……」
「話……?」
「はい。例の事件についてギルド近辺を調べていたところ、真犯人らしき者たちの会話を聞いた方が見つかりまして……」
「え、ええっ――」
「――へへっ……そろそろオレの出番かなっ?」
「……」
舌を出しながら照れ臭そうに僕の前に現れたのは、なんとも快活そうな少女だった。この子が真犯人の会話を聞いたのか。
「どーも、初めまして! オレ、セニアっていうんだ」
「ど、どうも、初めまして。僕は――」
「――カインだろ? 有名人だからよく知ってるぜ!」
「そ、そうなんだ……」
まあ僕のことはいい意味でも悪い意味でも話題になってるみたいだし、知ってる人がいても別におかしくないか。
「でも最初に知ったのはさ、オレがカインの所属してたパーティーに入ったことがきっかけだったんだけどな!」
「ええっ……」
これは意外だった。僕が追放されたあとにナセルたちのパーティーに入ったってことか……。
「んでオレもいきなりそこから追放されちゃったんだけど、その代わりに荷物を頂戴したら、あいつら怒り心頭だったらしくてギルドでいつまでも待ち伏せしててさあ……」
「あはは……」
ナセルたちは僕を奴隷にしようとしたくらい金に執着してたわけだし、そりゃ怒るだろうな。でもいい気味だ。
「仕方ないからオレ、路地裏でほとぼりが冷めるのを待ってたんだ。そしたら、オレが言うのもなんだけどいかにも怪しい二人組の男がいてさ」
「二人組の男……?」
「そうそうっ! そいつらがすげー大事そうな話をヒソヒソしたあとですぐに殺人事件が起こったから、絶対何か関係があると思ってこっそり覗いてたら、片方のツンツン頭の男が例の事件について堂々とネタバラシを始めたんだ!」
「ネタバラシ……」
やっぱり何かからくりがあったんだな、あの事件……。一週間以内に証明するなんてかなり難しいことだって思ってたけど、このセニアっていう子のおかげでもっと早く解決できそうだ。
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