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32話 恐れ知らず
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「――ちっ……」
エルゼバランの村を一望できる小高い丘にて、騎乗する二人の騎士然とした男女の姿があり、凛々しくもまだ幼さ残る少女が露骨に顔をしかめた。
「化け物の登場を知らせる声が耳に届いただけであのように隠れるとは、冒険者というものはどうしてこうも役立たずで恥知らずなのか……」
「彼らの実力は測りかねますが、心が劣っているのでしょう。すべての冒険者があのような無様な者たちではございませぬ」
「我もそう思いたいが、冒険者については嫌いになるばかりだ。このままでは犠牲者が増えるのみ……。こうなったら我が率先して囮になるっ!」
「それだけは絶対になりませぬ!」
それまで穏やかだった男が血相を変えて馬から下り、甲冑姿の少女の眼前でひざまずく。
「と、止めてくれるなっ!」
「なりませぬっ! もしそれをどうしても実行するというのであれば、ここで私の命を絶ってくださいっ、姫様ぁっ!」
「くっ……!」
男の懸命な訴えに対し、さも無念そうに首を横に振る少女。
「このような立場では……立ち向かう勇気や民に対する情ですらも無駄になってしまうというのか……」
「姫様のその年齢に似つかわしくない崇高なお考えに、どうして無駄などあると言えましょうか。しかしその囮のような危険な役目は、私のような国のためにいつ死んでもいい一介の兵士か、怖さ知らずの冒険者がやるものなのです……」
「しかし、あのざまではないか。冒険者に関してはB級以下は入れるなと言っておいたはずだが……」
「申し訳ありません。お言葉ではありますが、今はまさに藁にも縋りたいほど苦しい状況でありまして……」
「……」
男の返答からまもなく、少女の顔には諦めたような落胆の色がありありと滲んでいた。
「もういい。最早冒険者なんぞには期待できん。ギルド側とて、看板であるA級やS級の冒険者に死なれては困るだろうしな。ところで、今のところ被害の数はどれくらいだ……?」
「はっ。つい先ほど受けた伝令の報告によれば、村人38名、兵士51名、冒険者6名のようであります」
「ぬう……最早、万事休すなのか。そろそろ緊急事態宣言を出すべきなのかもしれぬ。これ以上被害を拡大せぬためにも、少数精鋭で化け物を食い止めるのが理想だったが――」
「――ひ、姫様ああぁっ……!」
そこに著しく慌てた様子で駆けつけてきた兵士がいた。
「ど、どうした、例の化け物がこの近くに現れたのか!?」
「い、いえっ、ひ、一人の少年が……あそこにっ……!」
「なっ、なんだと……!?」
彼女らが一様に驚愕の表情で見下ろしたのは、なんら尻込みすることなく、村の中心を堂々と歩く一人の少年だった。
「な、なんと大胆な……。あの行動は何も知らない子供ゆえなのか……?」
「ひ、姫様っ! あ、あれは冒険者です! 現場にて、銀色の双竜を胸につけていたのを確認しておりますゆえっ!」
「し、信じられん……あの若さでA級冒険者とは……。そのように将来有望な者であれば、尚更早死にさせるわけには――」
「――ひ、姫様、もう間に合いません……!」
「あ……」
この場にいる者たちが次に目にしたもの、それは少年から少し離れた場所に突如出現した黒い人影であった……。
◆◆◆
名前:ドッペルゲンガー
レベル:51
種族:悪魔族
属性:闇
サイズ:中型
能力値:
腕力F
敏捷D
体力S
器用C
運勢E
知性A
スキル:
【瞬殺】
効果:
半径20メートル以内にいる対象(単体)を一瞬で殺すことができる。
特殊防御:
影鎧
効果:
自身への物理、及び魔法系の攻撃を完全に無効化する。
特殊回避:
影移動
効果:
半径50メートル以内であればどこでも一瞬で移動(回避)可能。
「う、うはあ……」
僕は恐怖を削除しつつ、登場した化け物に向かって早速【鑑定士】スキルを使ってみたわけなんだけど、そのスキルや特殊防御の性能を見て思わず素っ頓狂な声が飛び出てしまった。そのどれもが目を疑いたくなるほどとんでもない効果だったから。
そもそもどうやってもダメージを与えられない上、相手には一瞬で移動、殺害ができる能力もあるということで、弱点も見当たらないし普通に無敵だと思えるんだよね。一体どうやって倒すっていうんだよ、この化け物……。
エルゼバランの村を一望できる小高い丘にて、騎乗する二人の騎士然とした男女の姿があり、凛々しくもまだ幼さ残る少女が露骨に顔をしかめた。
「化け物の登場を知らせる声が耳に届いただけであのように隠れるとは、冒険者というものはどうしてこうも役立たずで恥知らずなのか……」
「彼らの実力は測りかねますが、心が劣っているのでしょう。すべての冒険者があのような無様な者たちではございませぬ」
「我もそう思いたいが、冒険者については嫌いになるばかりだ。このままでは犠牲者が増えるのみ……。こうなったら我が率先して囮になるっ!」
「それだけは絶対になりませぬ!」
それまで穏やかだった男が血相を変えて馬から下り、甲冑姿の少女の眼前でひざまずく。
「と、止めてくれるなっ!」
「なりませぬっ! もしそれをどうしても実行するというのであれば、ここで私の命を絶ってくださいっ、姫様ぁっ!」
「くっ……!」
男の懸命な訴えに対し、さも無念そうに首を横に振る少女。
「このような立場では……立ち向かう勇気や民に対する情ですらも無駄になってしまうというのか……」
「姫様のその年齢に似つかわしくない崇高なお考えに、どうして無駄などあると言えましょうか。しかしその囮のような危険な役目は、私のような国のためにいつ死んでもいい一介の兵士か、怖さ知らずの冒険者がやるものなのです……」
「しかし、あのざまではないか。冒険者に関してはB級以下は入れるなと言っておいたはずだが……」
「申し訳ありません。お言葉ではありますが、今はまさに藁にも縋りたいほど苦しい状況でありまして……」
「……」
男の返答からまもなく、少女の顔には諦めたような落胆の色がありありと滲んでいた。
「もういい。最早冒険者なんぞには期待できん。ギルド側とて、看板であるA級やS級の冒険者に死なれては困るだろうしな。ところで、今のところ被害の数はどれくらいだ……?」
「はっ。つい先ほど受けた伝令の報告によれば、村人38名、兵士51名、冒険者6名のようであります」
「ぬう……最早、万事休すなのか。そろそろ緊急事態宣言を出すべきなのかもしれぬ。これ以上被害を拡大せぬためにも、少数精鋭で化け物を食い止めるのが理想だったが――」
「――ひ、姫様ああぁっ……!」
そこに著しく慌てた様子で駆けつけてきた兵士がいた。
「ど、どうした、例の化け物がこの近くに現れたのか!?」
「い、いえっ、ひ、一人の少年が……あそこにっ……!」
「なっ、なんだと……!?」
彼女らが一様に驚愕の表情で見下ろしたのは、なんら尻込みすることなく、村の中心を堂々と歩く一人の少年だった。
「な、なんと大胆な……。あの行動は何も知らない子供ゆえなのか……?」
「ひ、姫様っ! あ、あれは冒険者です! 現場にて、銀色の双竜を胸につけていたのを確認しておりますゆえっ!」
「し、信じられん……あの若さでA級冒険者とは……。そのように将来有望な者であれば、尚更早死にさせるわけには――」
「――ひ、姫様、もう間に合いません……!」
「あ……」
この場にいる者たちが次に目にしたもの、それは少年から少し離れた場所に突如出現した黒い人影であった……。
◆◆◆
名前:ドッペルゲンガー
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サイズ:中型
能力値:
腕力F
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体力S
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スキル:
【瞬殺】
効果:
半径20メートル以内にいる対象(単体)を一瞬で殺すことができる。
特殊防御:
影鎧
効果:
自身への物理、及び魔法系の攻撃を完全に無効化する。
特殊回避:
影移動
効果:
半径50メートル以内であればどこでも一瞬で移動(回避)可能。
「う、うはあ……」
僕は恐怖を削除しつつ、登場した化け物に向かって早速【鑑定士】スキルを使ってみたわけなんだけど、そのスキルや特殊防御の性能を見て思わず素っ頓狂な声が飛び出てしまった。そのどれもが目を疑いたくなるほどとんでもない効果だったから。
そもそもどうやってもダメージを与えられない上、相手には一瞬で移動、殺害ができる能力もあるということで、弱点も見当たらないし普通に無敵だと思えるんだよね。一体どうやって倒すっていうんだよ、この化け物……。
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