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旅立ち
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しおりを挟むBランクの冒険者になった晩、やはり酒盛りをした2人は次の日案の定二日酔いになっていた。解毒の魔法で二日酔いも解除出来るらしいが、自業自得なのでそのままにしておく。
俺はというと、家の掃除だ。1年間住んで愛着の湧いたこの家を綺麗にして返そうと思う。この1年で壊れていた箇所は直していったが、他にも壊れていないか確認している。
この家で色々あったよな。鍛冶ギルドの奴らが乗り込んできてなぜか火をつけられたり、街に来たエルフ族の男がネルに一目惚れをしたと求婚しに来たり。全部いい思い出だ。
「こんなもんかな」
1日かけて家の中を綺麗にする。新築とまではいわないが、そこそこ綺麗になったと思う。ネルとライドの部屋は入れないからそのままだけど。
自分の部屋も持ち物は全てアイテムボックスに収納して今はベットしか置いてない。明日2人に片付けてもらって旅に出るのは明後日かな。
工房もあるけど少しずつライドが片付けていたし、残りも3人でやればすぐだろう。
そう思っていたんだけど…
「お前明日出ること嬢ちゃんに言ってないのか!?」
「え、うん。この間旅に出ること伝えたし良いかなって」
「ダメだダメだ。今すぐ嬢ちゃんに言いに行ってこい。今すぐだ」
3人で工房の片付けをしている途中お腹が空き、食事の話から海風亭の話になった。その時にサリアの事を聞かれ正直に答えたんだけど。
今はライドとネルに家の外に出されてしまった。窓の方をチラッと見ると手でバツをしている姿が見える。
「しょうがない。いくか」
ネルはアイテムボックス持ちだし、2人でも今日中に終わるだろう。俺はため息をつくと、海風亭へと向かった。
今は15の鐘がなる時間だ。宿屋としても食事処としても暇な時間だろう。俺は扉を開けて中に入るとサリアを探す。
「いらっしゃいってソラか。こんな時間にどうしたの?」
厨房からサリアが出てくる。客じゃなく俺だったからかかしこまっていた姿がすぐに素に戻った。一応俺も客側なんだけどな
「明日旅に出ることが決まったから挨拶に来たんだ」
「え、明日?」
「うん」
「なんでもっと早く言わないの!!」
出発を聞いたサリアは勢いよく机を叩き俺を見る。ちょっと迫力あって恐いぞ。
「まぁ色々あって」
「はぁ、いいわ。ちゃんと言いに来てくれたんだし。ソラなら「この間言ったからいいや」って言いそうだもんね」
実際に言ってたけどここは黙っておこう。知らぬが仏だ。
「行くのはやっぱり3人で?」
「うん。2人ともついてきてくれるって」
「ねぇソラ。もしも、もしもよ?私が旅について行きたいって言ったらどうする?」
「断る」
「え?」
俺の返答にサリア驚く。そんなに驚かれるようなことを言っただろうか。でも断るに決まってる。サリアは宿屋の娘で冒険者じゃないし、冒険者になったとしてもBランクに上がるのに最低でも1年かかる。そんなに待てない。それに…
「俺はここで働いてるサリアを見るのが好きなんだ。いつも一所懸命で、大きな声を出しながらお店の中を走り回って。凄くキラキラしてる。だから…ってサリア大丈夫?顔が赤いよ?」
「だ、だだ大丈夫よ。あ、明日は何時頃出発するの?」
「今のところ9の鐘がなる頃に出ようかなって考えてる」
「分かった。見送りに行くから待っててね」
「別に良いよ」
「だーめ!!私がしたいの!!いい?絶対行くから待っててね」
「う、うん」
「じゃあ手伝いがあるからまた明日ね」
厨房に戻っていくサリアを見たあと俺も店を出る。早く帰って家の片付けをしないと。あの二人のことだから大丈夫だとは思うけど。
その後急いで帰ったが予想通り全て片付いていた。それぞれの部屋にあるのは必要最低限のものばかり。これも明日使った後にアイテムボックスに収納すれば済むことだ。
今は夕食もすんだので、各々に自由に過ごしている。俺はというと、この街は今日が最後なので神様に挨拶でもしようかと考えている。
ベットに横になり神様の事を強く考える。すると目の前の景色がかわり、いつものようにティリル神が目の前にいた。
「お久しぶりです」
『久しぶりだね。まさか1年でBランクに上がるとは思わなかったよ』
「神様のくれた魔法や加護のおかげです。ありがとうございます」
『僕は何もやってないよ。それを生かすも殺すもソラ君次第だったんだし。ソラ君が頑張ったからだよ』
そう言われると照れる。そういえば今日はティリル神1人なんだろうか。最近は必ず1人や2人他の神様がいるんだけどな。
『他の神達はみんな用事があってここには居ないんだ』
「そうなんてすね」
グーフ神なんか常にここにいるイメージだから暇なのかと思ってた。まぁ神様だもんな。そりゃ忙しいよな。
「あ、神様。俺明日街を出発します」
『うん。どこに行くかきめてるの?』
「一応俺の村のあった方と逆に行こうかなと。歩いて1週間ほどの場所に街があるそうなのでそこに行く予定です」
『そっか。イダイの街だね。あそこは港があるから楽しむといいよ』
「はい!!」
港があるなら刺身とかもあるかもしれない。内陸のクアールの街では生魚を食べる機会がない。前世では半額の寿司や刺身を食べていた俺は少し生魚が恋しくなっている。
「またイダイの街についたら神様たちに料理やお酒を届けますね。待っていてください」
『うん。楽しみにしてるよ』
「はい。では帰りますね」
『うん。じゃあね』
そう言うと目の前の景色が変わる。今日は報告だけだったから短かったな。他の神様たちもいなかったし…。また今度会いに行ってみようかな。
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