転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ

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旅立ち

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「あの…」

これから俺達はどこに連れていかれるんだろうか。イケメンに聞こうにも名前を名乗られていなかったことを思い出しなんて呼ぶのか迷う。さすがにイケメンはいけないよな。

「あぁ。まだ名乗っていなかったですね。私はロイ=モンタギューです」

苗字持ち!?ってことはロイさんって貴族なんだよな。しかもこんな立派な馬車を持てるくらい財力のある。ライドとネルをみると先程まで初めて乗る馬車に少し浮かれていたのに、今は借りてきた猫のように大人しくしている。今まで苗字持ちの人と関わることなんてなかったから緊張してるんだろう。俺もだけど。

「えっと…俺はじゃなくて、私はソラです。そっちのライドとネルの3人で旅をしています。それで私達は今からどこに…」
「そんなに畏まらなくてもいいですよ。貴族と言っても名ばかりの貴族なので。そうやって畏まられる方が嫌なんです」
「でも……わかりました」
「ついでに敬語も取ってもらえると嬉しいですね」
「でもロイさんは…」
「私のこれは職業病みたいなものですから気にしないでください。ライド君もネルさんも普通に接して下さいね」
「…分かった。気にしねぇ」

ライドが返事をしネルも頷く。なんでそんなに適応するのが早いの?でもここで1人ごねるのもダメだよな。俺もネルの後に頷くしか無かった。

「それよりも、俺達はどこに連れていかれてるん…だ?」
「着いてからのお楽しみですよ」


初めて来た街で2日前に会ったばかりの人にどこかに連れていかれるなんてどんな体験だ?
馬車の窓から外を見ると街の外から見えていたあの大きな建物に近くなっている気がする。もしかして……

こういう時の勘ってなんで当たるんだろうか。思っていた通り、馬車は建物の門をくぐり中へと入っていった。

「ロイさん…ここって偉い人の家なんじゃ……」
「そうですね。貴族の中でも結構上の地位にいる方ですね」
「お、俺たち帰ります!!」
「ダメですよ」

この1年身長が伸びたとはいえ、180cmはありそうな少しガタイの良い大人に抱えられたら逃げることも出来ない。そのまま俺を担いで馬車を降りるロイさん。そんな俺を哀れな目で見ながらライドとネルもロイさんについて行く。

そのまま貴賓室に案内される。貴賓室はとても広く豪華な装飾品もある。それに部屋には俺たちだけではなくメイドや執事も数名残っている。そんな人達に囲まれて平常心でいられるはずがない。ちなみにロイさんは雇い主を呼びに行ったらしい。

すごく逃げたい気持ちがあるが、今更逃げることも出来ないのでふかふかすぎるソファに座って相手が来るのを待っている。

それにしても用意された紅茶とお茶菓子がとても美味い。さすが上位貴族様だ。こちらの世界では初めての砂糖を使ったお菓子だろう。地球のお菓子と変わりないほどだ。

ライドはそこまで甘いものが好きという訳ではないらしく食べていないが、ネルは頬に詰めるだけ詰めて食べている。行儀悪いとは思うがリスみたいで可愛い。一応後で注意しておかないと。

扉がノックされると扉の前に立っていた執事が扉を開ける。すると外からはロイさんと同じような金髪碧眼のイケメンが中に入ってきた。身長はロイさんと同じぐらいだが、髪が少し長く後ろで1つに括っている。この人がロイさんの雇い主なんだろう。

俺たち3人は慌てて立ち上がり、目の前の人物に頭を下げる。

「頭を下げなくていい。私はここの領主をしているアレク=モンタギューだ」
「モンタギューって…」
「ロイは俺の弟だ」

やっぱり。そう言われるとどことなく顔が似ているような気もする。アレク様は俺たちの目の前のソファに腰掛ける。座るよう言われたので俺達も腰掛ける。

「先日は助かった。礼を言う」
「い、いえ。そんな…」
「君たちの助けがなかったら俺だけじゃなく、一緒に馬車に乗っていた家族も危なかっただろう」
「御家族と一緒に乗られてたんですかね」
「あぁ。紹介する。入っておいで」

アレク様が声をかけると、扉の前にいた執事が扉を開け外から女性と女の子が入ってきた。

「妻のエリスと娘のアリスだ。2人とも君たちにお礼が言いたいらしくね」

エリス様は茶色の髪を1つに纏めている綺麗な緑の目をした人だ。アリス様は金髪の髪に緑の目で身長は俺よりも少し小さいみたいだ。

「あなた達が助けてくれたのね。本当にありがとう」
「ありがとうですわ」
「いえ、怪我もなくてよかったです」

頭を下げられると慌てて立ち上がり俺達も頭を下げる。自分たちよりも上の立場の人に頭を下げられるのはどうも慣れない。2人は頭を上げるとアレク様の隣に座る。それを見てから俺たちもソファに座った。

こう見ると3人とも容姿が整っているな。ネルも綺麗だとは思うけどエリス様はまた違った綺麗さがある。それにアリス様も小さくて可愛いと思う。

「君たちを呼んだのは礼をしたかったのと、この間のことを聞きたくてね」
「キメラのことですよね?」
「そうだね。君たちはあの魔物のことをどう思った?」
「本物を見たのは初めてですが、俺たちの知ってるキメラとは全く違っていました。大きさが2倍ほどありますし、あの場所に現れることはまずありません。
それに俺たちは1週間ほど前にクアールの街を出発したのですが、キメラに会うまで魔物に出会うことはありませんでした。これは憶測ですがキメラの力が強すぎて魔物が逃げていたと考えられます。
そんな力の強いキメラがこの辺りで自然発生したとは到底考えられないです。誰かが故意にあの場所でキメラを作ったか放ったと考えるべきでしょう」
「その理由はなんだと思う?」
「それは…アレク様達だと思います。たまたまあの場所でキメラを作ったら、たまたまアレク様達が通ったというには出来すぎていますからね」

アレク様が身分の高い人ならば他者から狙われることもあるだろう。あれはキメラを使った襲撃と考えていいはずだ。

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