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1章
2000作成?!
しおりを挟む一度も作ったことがない戦闘用の剣を、2000も作成?!
俺は絶句してしまったよ。
何にって?
そりゃファーストくんと、それを決めた上司にだよ。
普通の人間が剣を2000作るのに、いったいどれほどの時間がかかるのか。
2000作るのに必要な材料と人材、それからお金は?
そこまで考えて俺に頼んでいるのかな。
いやいや、そもそも、鍛冶屋でもない俺に、自衛軍が扱う大事な剣を全部作らせるってどうなんだろうね。
ファーストくんと姉妹さんだけが、こだわりの剣が欲しいと言うのなら分かるけどね。
「もう大丈夫だから。二人とも安心して」
そう笑いファーストくんが、アリシアちゃんとアハートさんに言ったよ。
「……いやあ、あのお……」
何が大丈夫なんだよ。
こ、断らないと……、大変なことになりそう。
「そうだね。ヒジカタさんが引き受けてくれたんだもん♪ やったね、お兄ちゃん」
とアリシアちゃんがブイサインをしたよ。
ツインテールが揺れて、可愛いな。
でもごめんね、今から俺断っちゃうから。
「本当にありがとうございます。なにとぞ、弟をよろしくお願いします」
アハートさんまでが俺の手をギュッと両手で包んみ、頭を下げたよ。
長い黒髪がなびいて、いい香り。
「ありがとねー! 任務が終わったら、あたしオリジナルの短剣を作ってよね。超キュートなのかがいいな」
アリシアちゃんが俺の腕に絡んだよ。
「今度、差し入れにきます、ヒジカタさま。それでは」
姉のアハートさんがお辞儀をするたびに、胸がぶるんぶるん揺れちゃう。
「……」
はっきり断れないまま、アリシアちゃんとアハートさんが部屋を出てしまった。
3階の窓から二人が帰って行くのを見届けたファーストくんは、改めて俺の前に座った。
顔つきがさっきと違う。
「二人の前で言えなかったことを話します」
1オクターブ下がった声のファーストくん。
「突然ですが……ヒジカタさん」
一呼吸おいて、
「……あなた、……人間ではない。そうでしょ」
そう自信に満ちた顔で、俺を睨んだ。
「……なっ」
詰まってしまう。慌てて。
「や、やだな~。冗談は止めてよ、ファーストくん」
「冗談ではありません。
キキンの街でも評判の良くないここの魚屋が、前触れもなく突然美味しい魚を揃え始め、魚を生で食べるなどと考えもしない商品を提供する。
不思議に思い、その刺し身なる物を買って食べました。
絶品でした。
こんな物がこの世にあるのか。
感動して、ここの刺し身のファンになりました」
うれしいなあ。
ありがとね。
「ファンになれば、作る人が気になり、そしてヒジカタさんを観察するようになりました。
調理場での軽い身のこなし、部下への適切な指示、分かりやすい指導。素人の私から見てもヒジカタさんは超一流の調理人でした。
気がつけば、毎日ヒジカタさんを追いかけていたのです」
ストーカーだよファーストくん。
「そして、ある日」
あ、……なんか、悪い予感。
「店舗の窓の隙間から見てしまったのです。
誰もいない調理場で刺し身を高速作成するヒジカタさんが、両手以外に5本、いや10本かな、触手を出しているのを」
「……、……」
最悪だよ。
「身体に刺してた包丁を取り出すと、名刀になっているのも」
終わったかもしれない、ここでの生活。
「これを……」
すっ、とファーストくんが脇に置いていた長剣を俺に差し出した。
「……?」
「その剣で、私を殺しても構いません。秘密を知った私を生かしておけない、そう思ったのなら、どうぞ」
「いや、あの……そのお……」
とても18歳くらいの男とは思えない堂々とした言動に、一瞬面食らったけど、よく考えると変だよファーストくん、キミ。
俺を揺さぶろうとしていると見たよ。
「俺が殺すわけない、そう思っているでしょ。それに刺し身の高速作成を見たファーストくんならもう分かるよね。俺が殺す気になれば、剣なんか必要ないってね」
「はい。もちろんです」
ファーストくんが満面の笑みを浮かべたよ。
こいつ、とんでもない若僧かもしれないね。
「見せてくれませんか? その剣で」
「……やれやれ。もう隠せないなあ」
俺は長剣を持ち、その切っ先を自分の右肩に添え、ゆっくりと真下に刺してゆく。
短剣なら何処に刺しても問題ないけど、長い物は肩から刺さないと全部収まらないんだよね。
もっとも、スライムに戻れば剣をどう入れようが、剣の長さに応じて体型を変えるんだけど、ファーストくんに人間の姿からぶよぶよ体型のスライムに変化するさまは、ちょっと刺激が強いかな、と思ったんだよね。
剣がすっぽり刺さった俺の前で、ファーストくんは目を丸くしているよ。
これでもグロかったかな。
約1分後。
「どうぞ」
イメージしていた日本刀そっくりの剣を渡すと、ファーストくんが切れ味を確かめ、うっとりして長い溜息を吐いた。
「素晴らしい……。ぜひ、ぜひ、その力を、その能力を……」
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