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1章
久々のスライム
しおりを挟むツェーンの迷宮はキキンの街から西北へ4キロの海沿いの山にあるという。
現地の人に詳しい場所を訊ねたら、震えながら「冷やかしで行くのはやめなさい!」と注意されたよ。
まれに迷宮の結界から外に出るモンスターがいるそうで、現地の人でさえ、洞窟の入口付近は絶対に近寄らないそうだ。
探し歩くと、山口県秋芳洞に似た大きな洞窟の入口を発見した。
結界が張られているせいだろう、内部は暗黒色で1メートル先すら見えないね。
試しに、慎重に腕を闇の中へ伸ばしてみた。
抵抗がある……、膜?
ビニールのような感触。
ツェーン迷宮の出口には、モンスターが出てこないよう結界が張られている。
これがファーストくんの言っていた結界なんだろうね。
そのままグッと押すと、ぷちっと腕が中に入ったよ。
外からは肘までしか見えず、中に入った腕は暗黒色に消されて見えない。
このまま進めば全部入れそうだな。
ちょっと怖いけど、思い切って洞窟の中に飛び込んだよ。
「……、……」
ひんやり、じめじめした空気。
真っ暗だと思っていた内部は薄暗く、岩石の柱から、ポタポタと水滴が落ちている。
なんだかスライム兄妹たちの攻撃を躱しつづけた洞窟を思い出すな。
振り返ると、洞窟の外が紺色のフィルターがかかったみたいに、濃い青色の世界だった。
やがて、洞窟の奥からヒタヒタと湿った地を歩く音。
岩の影からヌッと出てきた黒い塊が、俺の10メートル手前で止まる。
見ためは狼だけど身体が大きい、軽自動車ほど。
ヨダレを垂らす口から、長い牙が2本伸びているよ。
「ガルルルル……、ガルガルルル……」
体勢を低くして、明らかに俺を狙っているね。
ヤバそうだな。
俺が人間モードから本来のスライムに姿を戻すと、狼みたいなのが「くう?」と変な声を出したよ。
びっくりしたんだと思うね。
「ガルルルル……」
あれ? もう戻った、早いね。
俺がザコモンスターのスライムだと気づいたからだね。
毛を逆立たせ、低い体勢のままジリジリ近づいてくるけど、コイツどれくらいの強さなんだろうね。
俺がすんなり洞窟に入れたのは、結界に反応しなくらい弱いモンスターだからになるね。
人間モード(能力値がレベル1に戻る)が幸いしたかな。
そういった意味では、このガルルルって唸るコイツは、洞窟から出てこれない、つまり、結界に反応するほど強いモンスターってことになるけど。
俺の視界に半透明なテロップが流れたよ。
ボーンキラー・ウルフ Lv 3
生命力 30/30
ステータス
攻撃力 12
素早さ 10
知能 2
運 4
すっかり忘れてた。
疑問に思ったら教えてくれる機能《SSSレア特典の解説付き》が備わっていたんだったね。
ふむふむ……。
ステータスを見たけど、レベルが俺より1つ高いだけで、個々の数値は俺と変わらないね。
むしろ、『素早さ』は俺が圧倒的に高い。
なんとか、なりそうだな。
20
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